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フェイスマスクの装着によって運動パフォーマンスは低下するのか?
コロナ禍に突入してからというもの理学療法士・作業療法士はもちろんクライアントもマスクを装着してリハビリテーションに励んでおられると思います.
理学療法士・作業療法士の皆様もマスクをして働くと呼吸は苦しいし,汗はかくしでなかなかマスクをして働くのも大変だということを実感されていると思います.
でもクライアントの運動パフォーマンスってマスクの装着によって低下するのでしょうか?
今回はフェイスマスクの装着によって運動パフォーマンスが低下するのかどうかを明らかにして研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Appl Physiol Nutr Metab. 2021 Apr 26. doi: 10.1139/apnm-2021-0143. Online ahead of print.
The Impact of Face Masks on Performance and Physiological Outcomes during Exercise: A Systematic Review and Meta-analysis
Keely Shaw 1, Gordon A Zello 2, Scotty Butcher 3, Jongbum Ko 4, Leandy Bertrand 5, Philip D Chilibeck 6
Affiliations expand
PMID: 33901405 DOI: 10.1139/apnm-2021-0143
今回ご紹介する論文は2021年に掲載された論文です.
研究の目的
Face masks are promoted for preventing spread of viruses; however, wearing a mask during exercise might increase CO2 rebreathing, decrease arterial oxygenation, and decrease exercise performance. A systematic review and meta-analysis was conducted on the impact of wearing a mask during exercise.
フェイスマスクは,ウイルスの拡散を防ぐために普及しておりますが,運動中にマスクを着用すると,CO2の再吸収が増え,動脈血酸素化が低下し,運動パフォーマンスが低下する可能性があります.
この研究では運動時のマスク着用の影響について,システマティックレビューとメタアナリシスを用いて明らかにすることを目的としております.
データソース
Data sources included SPORTDiscus, PubMed, and Medline. Eligibility criteria included all study designs comparing surgical, N95, or cloth masks to a no mask condition during any type of exercise where exercise performance and/or physiological parameters were evaluated. Healthy and clinical participants were included. Mean differences (MD) or standardized mean differences (SMD) with 95% confidence intervals were calculated and pooled effects assessed.
データソースは,SPORTDiscus,PubMed,Medlineとなっております.
取込基準は,運動パフォーマンスや生理学的パラメータを評価するあらゆる種類の運動において,サージカルマスク,N95マスク,布製マスクとマスクなしの条件を比較したすべての研究デザインとしております.
対象は健常者または臨床医とした研究となっております.
平均差(MD)または標準化平均差(SMD)と95%信頼区間を算出しプール効果を評価しております.
研究の結果
Twenty-two studies involving 1,573 participants (620 females, 953 males) were included. Surgical, or N95 masks did not impact exercise performance (SMD -0.05 [-0.16,0.07] and -0.16 [-0.54,0.22], respectively) but increased ratings of perceived exertion (RPE) (SMD 0.33 [0.09,0.58] and 0.61 [0.23,0.99]) and dyspnea (SMD 0.6 [0.3,0.9] for all masks). End-tidal CO2 (MD 3.3 [1.0, 5.6] and 3.7 [3.0,4.4] mmHg), and heart rate (MD 2 [0,4] beats/min with N95 masks) slightly increased.
最終的に1,573例(女性620例,男性953例)を対象とした22件の研究が対象となりました.
サージカルマスクおよびN95マスクは,運動パフォーマンスに影響を与えませんでしたが(それぞれ、SMD -0.05 [-0.16,0.07]および-0.16 [-0.54,0.22]),自覚的疲労感(RPE)(SMD 0.33 [0.09,0.58]および0.61 [0.23,0.99])および呼吸困難(すべてのマスクでSMD 0.6 [0.3,0.9])を増加させることが明らかとなり増した.
CO2濃度(MD 3.3 [1.0,5.6]および3.7 [3.0,4.4]mmHg),心拍数(N95マスクでMD 2 [0,4]拍/分)についてもわずかに増加しておりました.
研究の結論
Face masks can be worn during exercise with no influences on performance and minimal impacts on physiological variables. PROSPERO Registration: CRD42020224988 Novelty: Face masks can be worn during exercise with no impacts on performance and minimal impacts on physiological variables.
運動中にフェイスマスクを装着しても,パフォーマンスに影響はなく,生理学的変数への影響も最小限であることが示されました.
今回はフェイスマスクの装着によって運動パフォーマンスが低下するのかどうかを明らかにして研究論文をご紹介させていただきました.
自覚的な疲労感は強いものの,意外にも運動パフォーマンスは低下しないといった結果でしたね.
いずれにしてもしばらくマスクを装着して運動を強いる機会が多くなると思いますので,理学療法士・作業療法士もいつも以上にリスク管理を徹底する必要がありそうですね.