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足関節背屈可動域制限が着地時の下肢バイオメカニクスに与える影響
理学療法士・作業療法士が担当するクライアントの中には足関節背屈可動域制限を合併したクライアントは少なくないと思います.
足関節背屈可動域制限は矢状面上では起立や歩行時の下腿の前傾運動の妨げとなり,前額面上では足関節背屈可動域制限を代償する運動として足部が回内する症例が少なくないと思います.
前額面上における足部の回内は膝関節・股関節といった上位関節にも影響を及ぼします.
今回は足関節背屈可動域制限が着地時の下肢バイオメカニクスに与える影響を調査した研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Review J Sci Med Sport. 2017 May;20(5):451-458. doi: 10.1016/j.jsams.2015.06.006. Epub 2015 Jun 15.
The effect of reduced ankle dorsiflexion on lower extremity mechanics during landing: A systematic review
A R Mason-Mackay 1, C Whatman 2, D Reid 3
Affiliations expand
PMID: 26117159 DOI: 10.1016/j.jsams.2015.06.006
今回ご紹介する論文は2017年に掲載された論文です.
研究の目的
Objectives: To examine the evidence for effect of restricted ankle dorsiflexion range of motion on lower-extremity landing mechanics.
この研究では足関節背屈可動域制限が着地動作時の下肢のバイオメカニクスるに及ぼす影響を明らかにすることを目的としております.
研究デザイン
Design: Literature review.
研究デザインは文献レビューとなっております.
研究方法
Methods: Systematic search of the literature. Articles critiqued by two reviewers.
研究方法ですが,2名の査読者によるシステマティックレビューが行われております.
研究の結果
Results: Six studies were identified that investigated the effect of restricted DF ROM on landing mechanics. Overall, results suggest that landing mechanics are altered with restricted DF ROM, but studies disagree as to the particular mechanical variables affected.
足関節背屈可動域制限が着地動作時のバイオメカニクスに及ぼす影響を調査した研究は6件存在しました.
足関節背屈方向の可動域を制限することで着地動作時のバイオメカニクスが変化することが示唆されておりますが,影響を受ける特定の運動については研究結果が異なっておりました.
研究の結論
Conclusions: There is evidence that restricted dorsiflexion range of motion may alter lower-extremity landing mechanics in a manner, which predisposes athletes to injury. Interpretation of results was made difficult by the variation in landing tasks investigated and the lack studies investigating sport-specific landing tasks. The focus of studies on specific mechanical variables rather than mechanical patterns and the analysis of pooled data in the presence of different compensation strategies between participants also made interpretation difficult. These areas require further research.
足関節背屈可動域が制限されると,アスリートが怪我をしやすい形で着地動作時のバイオメカニクスが変化する可能性があることが示されました.
調査した着地課題にばらつきがあり,スポーツに特化した着地課題を調査した研究がないため結果の解釈が困難でありました.
また力学的パターンではなく,特定の力学的変数に焦点を当てた研究や,参加者間で補償戦略が異なる中でプールされたデータを分析したことが,今回の研究の結果の解釈を困難にした一因と考えられます.
これらの分野ではさらなる研究が必要であります.
今回は足関節背屈可動域制限が着地時の下肢バイオメカニクスに与える影響を調査した研究論文をご紹介させていただきました.
私の印象としては足関節背屈可動域制限→足部回内による代償→膝関節外反→股関節内転・内旋といった運動連鎖が多いと考えておりましたが,この研究結果から考えると着地動作のタスクによってもさまざまな代償パターンが考えられるということですね.
ただ足関節背屈可動域制限が膝関節や股関節のアライメントに影響を及ぼすのは間違いなさそうですね.