犬との散歩は高齢者の転倒危険を増加させる?

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 犬との散歩は高齢者の転倒危険を増加させる? 

私も通勤時に犬と散歩している高齢者をよく見かけます.

犬を飼うというのは身体活動量を増やすためには非常に有効だなと感じていたのです.

ウォーキングというと女性は何人かで集団でといった形式が多いと思いますが,男性は一人でまたは犬と一緒にといったケースが多いと思います.

実はペットを飼うことによって身体活動量を増加させることができることが科学的にも明らかにされているわけです.

このようにペットを飼うというのは高齢者の精神的な健康のみならず,身体的な健康を考えた際にも非常に意味があるわけですが,実はペットを飼うことによる問題もあるようです.

今回は犬の散歩が高齢者の転倒危険を増加させるかどうかについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 JAMAに掲載された最新論文紹介 

リードを引いて犬の散歩をすることは,高齢者にとって運動する良い機会となる一方で,問題も指摘されております.

米ペンシルベニア大学フィラデルフィア校のKevin Pirruccio氏らが実施した研究によると,米国では近年,犬の散歩中に骨折する高齢者が増加していることが明らかにされております.

 

この研究では,米国消費者製品安全委員会による全米外傷調査プログラムのデータベースから得たデータに関してを後ろ向きに調査が行われております.

65歳以上の高齢者を対象に,ペット用品に関連した骨折のデータを調べた結果,犬の散歩に伴う骨折が原因で救急外来を受診した65歳以上の高齢者は年間で,2004年の1,671人から2017年には4,396人へと倍増していることが明らかにされているのです.

こうしたペット用品の関連した骨折の4分の3以上は女性に発生しており,骨折の部位は大腿骨近位部と上腕が最も多かったと報告されております.

また全ての骨折の約半数は上半身で起こっており,リードを持つ手首と上腕・指・肩で多く見られております.

最も頻度が高い骨折のタイプは大腿骨近位部骨折で,全体の17%を占めております.

 

確かに医療機関で勤務していても80~90歳代の高齢者の転倒は骨脆弱性に起因する平地での転倒に伴う骨折が多いわけですが,60~70歳代の前期高齢者においては階段からの転落やペットとの散歩中にといったような比較的に高エネルギーの外傷機転が多いわけです.

 

 

この研究の限界としては今回の研究は救急外来で治療を受けた骨折だけを対象に分析したにすぎないといった点が挙げられます.

また高齢者が犬の散歩中に怪我をした実際の件数は,病院を受診するほどではない怪我を含めるとさらに増える可能性があります.

こうなると骨折のリスクと身体活動量を増加させることによるベネフィットとを天秤にかけた時に犬と散歩することをどう考えるかが重要となります.

個人的には転倒のリスクよりもベネフィットの方が明らかに大きいと考えられますので,犬を散歩させることに関して否定的な考えを持つ必要はないと思います.

 

 

 

 

 

 なぜ犬との散歩中の骨折が増えているのか? 

ではなぜ犬の散歩に関連した骨折が増えているのでしょうか?

1つは犬を飼う人が増えていることや高齢者も運動をすべきだと進める風潮がこの傾向を後押ししているのではないかと推測されます.

飼い犬との散歩は,社会的にも精神的にもそして身体的にも健康へのベネフィットがあるとテレビ等でも繰り返し取り上げられてきました.

一方で散歩中に転倒して負う怪我のリスクというのがメディアで取り上げられることは少なく,散歩中に転倒するリスクを最小限に抑える対策についても取り上げる必要があるでしょう.

この研究の重要なメッセージは,ペットを飼う際には高齢者が自分でペットの世話をできるかどうかを十分に考慮した上でペットを選ぶ必要があるということです.

加齢に伴って低下する自身の身体機能・認知機能を十分に考慮した上で,ペットの世話ができるかどうかを見直すことも必要だと思います.

 

参考文献

Pirruccio K, et al:Fractures in Elderly Americans Associated With Walking Leashed Dogs. JAMA  Surg, 2019

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