歩行速度よりも歩容が重要?

理学療法評価
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歩行速度よりも歩容が重要?

理学療法士であればクライアントの歩行に介入する機会は非常に多いと思います.

歩行能力を考えたときには,歩行速度のような定量的な評価と歩容のような定性的な評価の2つの側面から歩行を捉えることが重要となります.

ただ近年はどちらかというと歩行速度というのは軽視されがちで,歩容が重要視されることが多いと思います.

今回は理学療法士の視点で歩行速度について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実用的な歩行能力は歩行速度の影響を受ける

脳卒中患者の自宅や地域内における歩行能力を予測する指標を検討した報告によると,クライアントの生活範囲は歩行速度(快適歩行速度)によって影響を受け,歩行速度が0.8m/s以上は制限なく地域に外出が可能,0.4~0.8m/sでは長距離歩行が困難などの限られた範囲での外出が可能,0.4m/sより遅いと生活範囲が屋内にとどまるとして,歩行能力に最も影響する因子は歩行速度であったと報告されております.

つまり歩行速度が速い人ほど生活範囲が広いということになりますので,そう考えると改めて歩行速度って重要だなと思うわけです.

いくら歩容が正常に近くても歩行速度が遅ければ生活範囲が広がらないということになります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

快適歩行速度と最大歩行速度

快適歩行速度と最大歩行速度とは,非常に高い相関があることが明らかにされております.

つまり快適歩行速度を速くするためには,最大歩行速度を速くする練習が必要となります.

歩行の分類をもとに歩行速度の改善と外出状況QOLの変化との関係を検討し,歩行速度の改善に伴ってQOLが改善することが報告されております.

「横断歩道を時間内に渡り切れる」,「目的地まで所定の時間で到達できる」,「往来の人の流れに合わせて歩ける」などの生活場面や屋外環境ではある程度の歩行速度が要求される場面が多いわけです.

そのため,歩行の実用化にとって,速く歩ける能力が重要であるとする研究結果には一定の説得力があるわけです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしたら歩行速度を向上させられるか?

歩行速度を向上させるためにどうすればよいかと考えた際に理学療法士であれば筋力を向上させれば歩行速度が向上するのではないかと誰もが考えると思います.

しかしながら本当に筋力を向上させれば歩行速度は速くなるのでしょうか?

ある研究によると快適歩行速度と最大歩行速度の規定因子は股関節屈曲筋力と足関節底屈筋力,下肢感覚であり,これらの因子で最大歩行速度は85%程度の説明がつくと報告されております.

確かに,速く歩くためには,筋力や関節可動域の向上が必要となることは言うまでもありません.

特に股関節屈曲筋や足関節底屈筋の筋力は歩行速度の可変性を保障する重要な身体的因子となります.

一方で,これらの筋力を強化すれば,速く歩くことが可能になるかと言えば,そんなに単純ではないことは臨床でクライアントの治療に携わっていれば誰もが理解できるところだと思います.

 

 

 

 

歩行速度を向上させるには動的バランスを向上させる必要がある

歩行速度が変化するということは,身体に加わる加速度や床反力などの力学条件が変化します.

したがって力学条件の変化に対応して動的バランスを同時に制御しなくては転倒してしまうわけです.

上述した股関節屈曲筋や足関節底屈筋の筋力というのはあくまで最低条件です.

歩行速度を向上させるためには,これらの筋力を備えた上で動的バランスを制御する能力が必要になるわけです.

高齢者や脳卒中片麻溥患者が歩行速度を上げられない原因は筋力や関節可動域の低下だけではなく,動的バランスの制御がうまくいかないことも本質的な原因として考盧する必要があります.

 

今回は改めて歩行速度の重要性について考えてみました.

歩容の改善というのは理学療法アプローチを考える上で非常に重要な要因ではありますが,生活範囲を拡大する上で歩行速度の向上を無視することはできません.

また歩行速度を向上させるためには股関節屈曲筋力・足関節底屈筋力の向上に加えて,動的バランス能力を向上させることが重要であると考えられます.

皆様が改めて歩行速度に着目した理学療法介入を再考する一つのきっかけになれば嬉しいです.

 

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