6分間歩行テストの正しい測定方法知ってますか?

理学療法評価
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前回は歩行能力評価における時間的・距離的因子(歩容・歩行率・歩行比)についてご紹介させていただきました.

歩行能力の評価を行う場合には,歩行速度・歩行の安定性以外にも持久性の評価も重要となります.今回は歩行の持久性の評価として用いられることの多い6分間歩行試験をご紹介させていただきます.

 

目次

 歩行の持久性の評価 

歩行の持久性の評価の方法としては6分間歩行距離や漸増シャトルウォーキングテストが用いられますが,使用頻度としては6分間歩行テストが用いられることが多いです.

また歩行速度と心拍数から求めるPhysiological Cost Index(PCI)も,歩行時のエネルギー効率を簡便に評価する方法としても用いられます.PCIは3分間の連続歩行により測定されることが多いです.

PCI(拍/m)は,歩行後心拍数から安静時心拍数を減じた値(拍/分)を歩行速度(m/分)で除すことで求められます.

 

 持久力評価の目的 

高齢荷の持久力または運動耐用能を評価することは,運動機能,呼吸・循環器機能,代謝機能,神経機能を総合的に評価することができ,高齢者の機能評価の1つとして重要である持久力を構成する機能を包括的に評価することができますので,地域在住高齢者はもちろんのこと、運動器疾患・神経疾患・呼吸器ならびに循環器疾患など,様々な疾病を有する高齢者の機能評価として実施されます.

 

 持久力評価の方法 

先行研究によると70歳前後の高齢日本人における6分間歩行試験の平均的な歩行距離は約500mであるとされております.

持久力評価の標準的な方法の1つとして, VO2 maxやpeakVO2を呼気ガス分析により算出する方法が広く知られていますが,特殊な機器を要すること,測定環境が限定されること,さらには運動の実施自体にリスクがある高齢群に対しては実施することが難しい等の限界があります.6分間歩行距離テストは臨床上も実施し易く,類似の評価テストとして2分間歩行距離テストや12分間歩行距離テスト等も報告されており(12分間は高齢者には運動負荷が高すぎるので2分間や6分間のテストが用いられることが多いです),持久力テストとしての妥当性や信頼性が確認されております.

さらにテスト中にSpO2 (経皮的動脈血酸素飽和度)などの生理学的指標を合わせて評価することで,詳細な運動時の循環応答を評価することができます.

 

 6分間歩行距離(6-minutes walking distance 6MD)テストとは? 

測定にはストップウオッチを用います.合わせてBorg scale測定用の用紙,椅子,必要に応じてコーンや養生テープ,パルスオキシメーターなどが使用されます.歩き終わった地点にテープを貼り,後で距離を計測するといった方法が一般的です.歩行コースの設定については,環境に応じて安全かつできるだけ長い距離をとれる周回コースを設定することが重要です.

測定方法ですがまずは以下のような教示をします.6分間歩行距離テストにおいてはこの教示が非常に重要となります.

「この試験の目的は, 6分間にできるだけ距離を長く歩くことです.この片道を今から往復します. 6分間は長いですが,努力してください.途中で息切れがしたり,疲れたりするかもしれません.必要に応じてペースを落としたり,立ち止まったり休んでもかまいませんが,できるだけ速く歩き始めてください」

SpO2が87以下の状態が続くような場合や,胸痛・多量の発汗・ふらつき・顔面菅白あるいはチアノーゼの出現・下肢の痙攣などが出現する場合にはテストを中止します.

高齢者理学療法学 [ 島田裕之 ]

 6分間歩行距離テストの信頼性 

6分間歩行距離テスト(6MDテスト)の評価指標としての信頼性については多くの報告がなされており,高い検者内および検者間信頼性が確認されております.

また持久力評価としての妥当性についても標準的な持久力測定の方法である最大酸素摂取量との高い基準関連妥当性が認められています.

 

今回は歩行の持久性の評価として用いられることの多い6分間歩行試験をご紹介させていただきます.

持久力の測定方法としては広く知られている方法ですが,意外に測定方法が整理されていない検査の一つだと思います.測定方法としては教示の方法がとにかく重要です.

 

 

 6分間歩行距離テストの妥当性 

6分間歩行距離テストについては妥当性についてもいくつかの研究によって確認がなされております.

COPDを対象とした歩行距離とトレッドミルなどで測定されたVO2maxと6分間歩行距離との間には,高い相関関係が報告されており,さらに歩行距離とトレッドミルで測定したVO2maxと6分間歩行距離との間にも有意な相関関係が報告されております.

すなわち最大酸素摂取量を推定するテストとしての妥当性が確認されているテストといえると思います.

 

 6分間歩行距離テストに必要な物品 

検査は室内の人の往来がほとんどない平坦な場所で行う必要があります.

必要な備品としては,ストップウォッチ,小さなコーン2個(方向転換用),椅子,記録用紙(Borgスケールの表を含む),簡易型除細動器が挙げられます.

検査の中止基準としては,胸痛・耐えられない呼吸困難・下肢の痙攣・ふらつき・多量の発汗・顔面蒼白あるいはチアノーゼの出現が挙げられます.

 

 6分間歩行距離テストの実施手順 

①対象者は少なくともテスト前’0分間, スタートライン付近で椅子に座り安静にしておきます.この間に検者は,禁忌となる項目がないかをチェックし脈拍,血圧を測定します.

②パルスオキシメトリーは必須ではありません. もしパルスオキシメータを使う場合は,測定値が安定しているか確認してベースラインの心拍数と酸素飽和度(SpO2)を測定・記録します.

③運動中のSpO2の継続的なモニタリングは必要ではありません.もしパルスオキシメータを装着する場合は,歩行の妨げにならない軽量なものを使用します.

④対象者を起立させ,ベースラインの呼吸困難と全体的な疲労感をBorgスケールで測定します.

⑤対象者をスタートラインに立たせる.検者はテストの間, スタートラインの近くに立って,対象者と一緒に歩かない.対象者が歩き始めたら, 同時にストップウオッチをスタートします.

⑥歩行中,検者は誰にも話しかけない.対象者への声かけは決まった言葉で,一定の声の調子で行います.注意を集中し対象者を観察し,往復回数を間違えないようにします.

1分後「うまく歩けていますよ.残り時間はあと5分です」
2分後「その調子を維持してください.残り時間はあと4分です」
3分後「うまく歩けていますよ.半分が終了しました」
4分後「その調子を維持してください.残り時間はもうあと2分です」
5分後「うまく歩けていますよ.残り時間はもうあと1分です」

⑦声掛けにはこの言葉以外は使用してはいけません.

⑧もしテスト中に対象者が歩行を中断, もしくは休息が必要となったら次のように伝えます.

「もし必要なら壁にもたれかかって休むこともできます.大丈夫と感じたらいつでも歩き続けて下さい.」

⑨その間もストップウオッチは止めません.もし対象者が6分経過しないうちに中断したり,テストの継続を拒否したら患者が座れるように椅子を移動し, テストを中断します.記録用紙に距離中断した時間, 中止理由を記録します.

⑩残り15秒を示したら対象者に次のように伝えます.

「もうすぐ止まって下さいと言います私がそういったらすぐに立ち止まってください.」

⑬ストップウォッチが6分を示したら次のように伝えます.

 「止まって下さい」

⑭歩行を終了し, もし疲れているようであれば椅子を準備します.床の中断したポイントに目印を付けます.

⑮テスト後:歩行後のBorgスケールの呼吸困難と疲労レベルを記録し,次のように尋ねます.

「もうこれ以上歩けない理由が何かありましたか」

⑯もしパルスオキシメータを使っていたら, SpO2と脈拍数を記録し, センサーを取り外します.総歩行距離を計算し’記録用紙に記録します.

 

 

使用頻度も高い検査なので確実に押さえておきたい検査の一つですね.

 

参考文献
1)安藤守秀: 呼吸機能検査の基準値とその使い方, 今後の課題. ⑥運動耐容能. 呼吸30: 1060-1066, 2011
2)Ko V, et al: The six-minute walk test is an excellent predictor of functional ambulation after total knee arthroplasty. BMC Musculoskelet Disord: 141-145, 2013.
3)Zainuldin R, et al : Optimal intensity and type of leg exercise training for people with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev: CDOO8008, 2011.

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