認知機能によって転倒の原因が違う

介護予防
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目次

 認知機能レベル別にみた転倒リスク要因の検討 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年12月8-9日に神奈川県(パシフィコ横浜)で第5回日本地域理学療法学会学術大会が開催されました.

今回はこの第5回日本地域理学療法学会学術大会会の一般演題の中から認知機能レベル別の転倒リスク要因を検討した研究をご紹介いたします.

 

 

 

 認知機能低下と高齢者の転倒 

転倒は高齢者にとって身近で重要な事象であり,多くの先行研究から様々な転倒リスク要因が報告されております.

しかしながら,先行研究の多くは要介護認定を受けていない地域在住高齢者を対象としたものが多く,身体機能や認知機能のレベルが多様である通所介護利用者には汎用しづらいところがあります.

これは転倒に関する研究に限ったことではありませんが,認知症を有する症例というのは対象から除外されることが多かったりします

また認知機能のレベルによっても,転倒リスク要因が異なることは容易に推測できますが,過去に通所介護利用者を対象に認知機能レベル別の転倒リスク要因の違いについて検討した報告は少ないようです.

この研究では,通所介護利用者において認知機能レベル別に転倒リスク要因を検討することを目的としております.

 

 

 

 研究の方法 

研究参加者は通所介護施設を利用する要支援・要介護者 264 名となっております.

包含基準は補助具の有無にかかわらず他者の介助を要することなく自宅内を歩行可能な者とし,屋内移動に介助を必要とする者は除外されております.

測定項目はMini-Mental State Examination(MMSE),Short Physical Performance Battery (SPPB),serial-1 課題条件 4m 歩行時間を測定し,転倒関連情報及び一般情報は書面にて聴取しております.

単一課題と二重課題条件下での歩行時間からDual task cost(DTC)を算出しております.

全参加者のうち,測定不可及び欠損があった43 名を除外し221 名が最終的な解析対象となっております.

対象者をMMSE の点数により 28 点以上を正常群,24 点から 27 点を軽度低下群,23 点以下の低下群に分類し,MMSE 点数により分類した各群のそれぞれの集団に対して,過去 1 年間の転倒歴を従属変数,5chair stand test (5CS) score・balance score・DTC・転倒恐怖感の有無を説明変数とし,年齢及び性別を共変量とした多重ロジスティック回帰分析を行っております.

 

 

 

 研究の結果 

多重ロジスティック回帰分析の結果,正常群では balance score(オッズ比 [95% 信頼区間 ] = 0.43[0.23-0.74])が転倒歴と有意な関連を認めております.

軽度低下群では転倒恐怖感(4.88 [1.36-20.78])と5CS score(0.44 [0.23-0.78])が転倒歴と有意な関連を認めております.

低下群では転倒恐怖感(5.70 [1.52-26.80]),5CS score(0.51 [0.28-0.84]),DTC(1.03 [1.01-1.06])が転倒歴と有意な関連を認めております.

 

 

 

 この研究からわかること 

この研究結果から考えると認知機能の程度によって転倒の原因は異なるものと考えられます.

MMSEが28 点以上の集団は,バランス機能低下が転倒の原因になっており,24-27 点の集団では転倒恐怖感や下肢筋力低下が転倒の原因になっており,MMSEが23 点以下の集団では転倒恐怖感を有し下肢筋力が低いことに加えて,二重課題能力低下が転倒の原因になっているということになります.

つまり認知機能が良好な集団にはバランス機能向上を図るような介入が,軽度認知機能低下を有する集団には転倒恐怖感を取り除くとともに下肢筋力を向上させるような介入が,認知機能低下を有する集団には転倒恐怖感を取り除き下肢筋力を向上させるような介入とともに,二重課題能力を改善させるような介入が必要であると考えられます.

認知機能低下の程度によって転倒の原因は異なりますので,認知機能に応じて転倒予防に向けたアプローチを行っていくことが重要であると考えられます.

 

 

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