人工膝関節全置換術例の関節可動域評価

人工膝関節全置換術
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目次

 人工膝関節全置換術例の関節可動域(ROM)評価 

人工膝関節全置換術例の理学療法を行う上で,苦労することが多いのが関節可動域の獲得です.

基本的には術中可動域が目標となる可動域になりますが,クライアントによっては術中可動域獲得に難渋するケースも少なくありません.

今回は理学療法士の視点で,人工膝関節全置換術例の関節可動域について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 人工膝関節全置換術例における関節可動域(ROM)制限の原因 

人工膝関節全置換術後早期には手術侵襲による疼痛,腫脹,疼痛に伴う防御性筋収縮により関節可動域が制限されます.

術後数週~数カ月経過後は,創部の伸張性低下膝周囲筋の短縮防御性筋収縮の残存,膝蓋上嚢の癒着などの軟部組織による問題によって関節可動域が制限されやすいといった特徴があります.

軟部組織による問題以外にも,インプラント設置位置不良,靱帯バランス不良,patella tracking不良などの手術要因によっても可動域は制限されます.

関節可動域を評価する前に,必ず把握しておきたいのが術前の膝関節屈曲・伸展可動域手術中術閉創後の膝関節屈曲・伸展可動域です.

また合わせてX線画像所見の情報を把握しておくことが重要となります.

 

人工膝関節全置換術例の屈曲可動域(ROM)制限の原因

人工膝関節全置換術例の伸展可動域(ROM)制限の原因

 

 

 

 

人工膝関節全置換術例における関節可動域測定のコツ

関節可動域は角度計を使用して計測しますが,関節可動域測定においては異常な筋緊張を生じやすいため,できるだけ筋緊張を軽減させた上で測定を行うことが重要です.

クライアントには測定方法を説明し,関節を動かすことを一言伝えてから計測を開始します.

逃避動作に注意し,セラピストの身体を用いて下肢を固定しながら計測します.

測定の信頼性を高めるためには,膝だけでなく股関節,足関節,体幹の可動域も計測しておき,毎回同一肢位で測定を行うことが重要となります.

また膝関節屈曲・伸展可動域のみならず,屈伸に伴う脛骨の回旋(屈曲に伴う内旋,伸展に伴う外旋)や膝関節の転がり-滑り運動膝蓋骨の軌道を触診で確認しながら測定を行うことが重要です.

臨床実習生は角度を測定することばかりに集中しがちですが,関節可動域制限の原因を考える上ではend feelや最終域での疼痛部位を確認しながら測定を行うことが重要となります.

また股関節や足関節の肢位を変えながら膝関節の可動域制限をチェックすることで主な制限因子を特定することもできます.

例えば股関節内旋位・中間位よりも股関節外旋位で膝関節屈曲可動域が拡大するような場合には,大腿筋膜張筋が膝関節屈曲可動域制限の原因になっていると考えられます.

また足関節背屈位よりも足関節底屈位で膝関節伸展可動域が拡大する場合には,腓腹筋が膝関節伸展可動域制限の原因になっていると考えられます.

 

 

膝関節の屈曲ROM計測のポイント

他動運動で防御性筋収縮が出現しやすい場合,クライアントに自動または自動介助にて膝を屈曲してもらいます.

理学療法士は最終域での最終域感(end feel)と疼痛を確認します.

骨盤挙上・回旋・腰椎伸展などの逃避動作や,それが出現するタイミングを確認します.

 

膝屈曲運動に伴う膝関節の転がり-滑り運動を確認

膝屈曲に伴い脛骨が後方へ引き込まれたら異常と判断します

膝屈伸運動に伴う脛骨の回旋を確認

膝屈曲に伴い脛骨が外旋,膝伸展に伴い脛骨が内旋したら異常と判断します

膝屈伸運動に伴う膝蓋骨の動きを確認

特に膝屈曲に伴い膝蓋骨が外側に偏位しないかをチェックします

 

 

 

 

1)Matsumoto H,Okuno M,Nakamura T, etal: Fall inddence and risk factors in patients after total knee arthroplasty. Arch Orthop Trauma Surg.2012; 132: 555-63.

2)D’LimaDD, Patil S, StekIovN, et al: The 2011 ABJS Nicolas Andry Award:’Lab’-in-a-knee: in vivo knee forces kinematics and contact analysis. Clin Orthop Relat Res.2011; 469: 2953-70.

3)MassinP, Goumay A: Optimization of the posterior condylar offset, tibial slope, and condylar roll-back in total knee arthroplasty. J Arthroplasty. 2006; 21: 889-96.

 

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