大腿骨頸部骨折例に対する関節可動域運動

大腿骨近位部骨折
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今回は大腿骨頸部骨折例に対する関節可動域運動について考えてみたいと思います.

大腿骨頸部骨折例の可動域運動を考える上では,骨折型や術式別に侵襲や起こりやすい機能低下を考える必要があります.

大腿骨頸部骨折の分類
 看護・リハビリに生かす大腿骨頸部骨折の分類(種類)  大腿骨近位部骨折は大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折に分類できます. 看護を行ううえでも,リハビリを行ううえでも,まずは大腿骨頸部骨折の分類についておさえておく必要があります. ...

今回は骨折型・術式別に可動域運動のポイントをご紹介したいと思います.

目次

 大腿骨頸部骨折(非転位型骨折・骨接合術) 

大腿骨頸部骨折(非転位型骨折)に対してはHanson pinやCCS( Cannulated cancellous screw )による骨接合術(ピンニング)が行われることが多いです.

ピンニングによる骨接合術では共通して大腿筋膜張筋と外側広筋の近位部に部分的に侵襲が加えられることが多いので,膝関節屈曲可動域制限や股関節内転制限が生じやすいのです.

ですので大腿筋膜張筋と外側広筋の伸張性改善を目的として可動域運動を行うことが重要です.

大腿筋膜張筋については大腿筋膜張筋へのDirect stretchやOber positionでのストレッチが効果的です.

大腿筋膜張筋(腸脛靭帯)は外側膝蓋支帯と結合を持ちますので,大腿筋膜張筋がtightな状態ですと膝蓋骨が外側へ牽引され,膝蓋大腿関節の運動が阻害されます.

ですので大腿筋膜張筋の伸張運動と合わせて膝蓋骨を内側方向へ誘導しながら可動域運動を実施することが重要です.

 

 大腿骨頸部骨折(転位型骨折・人工骨頭置換術) 

人工骨頭置換術の場合には前方アプローチで手術が行われた場合と後方アプローチで手術が行われた場合とで関節可動域運動の際に注意すべきポイントも変わってきます.

今回は後方アプローチの人工骨頭置換術を行った場合の可動域運動について考えてみたいと思います.

人工骨頭置換術を行った場合には脱臼というリスクがつきまといますので,術中の易脱臼性を確認しておくことが重要です.

脱臼はオフセット長・骨頭径・臼蓋前方開角・外方開角によっても危険率が変わってきますので可能であればこのあたりの情報を手術記録から読み取っておくことも重要です.

 

 屈曲可動域運動のポイント 

基本的には易脱臼性の高い症例を除いては股関節屈曲・内転・内旋の複合運動が禁忌であるといった点に注意が必要です.

ですので屈曲可動域運動の場合には外転・外旋方向に股関節を誘導しながら屈曲運動を行うとよいです.

もともと股関節の構造上,股関節内転・内旋位では屈曲可動域は小さいのですが外転・外旋位では屈曲可動域が大きくなります.

 

 

特に脱臼肢位を回避しながら靴下の着脱動作や爪切り動作を獲得するためには屈曲-外転-外旋の複合可動域を獲得することが重要です.

逆に歩行時には伸展-内転運動が必要となりますので伸展-内転方向の複合運動を実施すると動作獲得に繋がります.

このように可動域運動を考える上では単一方向ではなく複合的な可動域を獲得することが非常に重要となります.

 

 

また人工骨頭置換術後に多く見られるのが屈曲運動時の鼠径部の疼痛です.

これは大腿骨頭のインピンジメントによる疼痛だと考えられますが,こういった疼痛は関節包内運動を意識して大腿骨を運動方向と対側に押し込みながら運動を行うと疼痛が消失することが多いです.

 

また学生にありがちですが股関節屈曲運動時に同時に膝関節を強制屈曲していくと股関節の運動が十分行われる前に,膝関節の疼痛や可動域制限で股関節の運動が止まってしまうことが良くあります.

股関節屈曲運動の際には膝関節を強制屈曲しないことも重要です.

 

 

 伸展可動域運動のポイント 

伸展可動域運動のポイントについてもご紹介しておきたいと思います.

通常,伸展可動域測定は腹臥位姿勢で行いますが,高齢者に多い大腿骨頸部骨折例の急性期には腹臥位を取ることが難しいことも少なくありません.

よく行われるのは側臥位での伸展可動域運動ですが,側臥位姿勢の場合には骨盤の前傾による代償運動が大きくなるので注意が必要です.

 

 

伸展時に骨盤を前傾しないように後傾位を保ったまま伸展運動を行うことが重要となりますが,骨盤を後傾位に誘導するためには対側股関節のしっかりと屈曲することが重要です.

こうすることで骨盤前傾による代償運動を減じた上で,股関節伸展可動域運動を行うことができます.

また背臥位にてThomas testを応用して伸展可動域運動(腸腰筋の伸張運動)を行う方法も有効です.

 

 

 伸展可動域運動を背臥位で行う方法 

股関節伸展可動域制限がある場合には,対側股関節を大きく屈曲させ骨盤を後傾位に誘導すると下肢が挙上します(Thomas sign).この際に挙上してきた下肢を下方へ押さえることで,股関節伸展可動域運動を行うことができます.

今回は大腿骨頸部骨折例における可動域運動のポイントを紹介いたしました.術後は疼痛による防御性収縮も強いので,可能な限りハンドリングにおける支持面を増やし,筋緊張を減じるといった視点も非常に重要です.次回は大腿骨転子部骨折例における可動域運動のポイントについてご紹介いたします.

 

 

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