大腿骨転子部骨折の分類~内側骨皮質の連続性に着目せよ~

大腿骨近位部骨折
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大腿骨頸部骨折の分類については以前もご紹介させていただきました.

大腿骨頸部骨折の分類
大腿骨近位部骨折は大腿骨頸部骨折と大腿骨転子部骨折に分類できます.看護を行ううえでも,リハビリを行ううえでも,まずは大腿骨頸部骨折の分類についておさえておく必要があります.大腿骨頸部骨折の分類としてはGarden分類が有名です.

今回は大腿骨転子部骨折の分類についてご紹介させていただきます.

大腿骨転子部骨折も大腿骨頸部骨折と同様に,骨折型によって病態が大きく異なりますので,看護やリハビリを行う上では骨折の分類を把握しておくことが重要となります.

 

大腿骨頚部骨折後のリハビリテーション [ 林泰史 ]

 

 大腿骨転子部骨折の分類 エバンス分類(Evans分類) 

大腿骨頸部骨折の分類=Garden分類,大腿骨転子部骨折の分類=Evans分類といった公式が成り立つほど,昔から大腿骨転子部骨折の分類としてはエバンス分類(Evans分類)が用いられることが多いです(後述いたしますが,最近は見直されてきております).

 

 

Evans分類では受傷時および整復後のX線における内側骨皮質の連続性に応じて,5種類の骨折型に分類をします.

Type1は骨折線が小転子から大転子の方向へ向かうもので,Type2は逆方向へ向かうものです.

通常,Type2は逆斜骨折と呼ばれます.通常,Type1のgroup1・2を安定型骨折と呼び,group3・4を不安定型骨折と呼びます.

安定型骨折にはCHS(Compression hip screw)による骨接合術またはガンマネイル(γ-nail)による骨接合術が施行されます.

不安定型骨折に対してはCHSによる骨接合術が施行されるのは稀でガンマネイル(γ-nail)による骨接合術が施行されることが多いです.

 

 なぜ内側骨皮質の連続性が重要なのか? 

Evans分類ではなぜ内側骨皮質の連続性に応じて骨折型を判定するのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

大腿骨には圧縮骨梁と呼ばれる骨梁と引っ張り骨梁と呼ばれる骨梁が存在しますが,大腿骨内側骨皮質(緻密骨が多い)は圧縮骨梁が密集した部位となっており,安定した骨支持性の大きな役割を果たします.

そのためX線を診る際には内側骨皮質の連続性に注目することが重要となります.

受傷時はもちろん整復後の内側骨皮質の連続性により骨折型を判断するというのもEvans分類の大きな特徴です.

実は大腿骨転子部骨折における骨接合術の大部分が整復がどこまでうまくいくかというところにかかっているのです.

内側骨皮質を整復できれば手術は成功したといってもいいと思います.

骨折の整復については参考文献を参照いただければと思いますが,近位骨片が遠位骨片の外側にかかるような外側外反型が理想であるとされております.

われわれ理学療法士はX線を読影する際にどうしても挿入されているインプラントばかりに着目しがちですが,X線をみる際には内側骨皮質の連続性に着目することが重要です.

 

 安定型骨折と不安定型骨折の相違 

 

当然ながら安定型骨折と不安定型骨折では術後に生じる機能障害にも大きな違いがあります

不安定型骨折の場合,骨折に伴う出血量が多いので,大腿部の浮腫に伴う様々な機能障害が生じやすい特徴があります.

大腿部の浮腫により膝関節の屈曲可動域制限や大腿四頭筋の滑走性低下に伴う筋力低下が生じやすいのも安定型骨折よりも不安定型骨折ということになります.

また不安定型骨折では骨接合術後も頸部短縮が起こりやすく,頸部短縮に伴いモーメントアームが短縮するため股関節外転筋力が起こりやすい点にも注意が必要です.

さらに荷重に伴う骨折部周囲のマイクロムーブメントも不安定型骨折で大きくなりますので,荷重痛が強いのも不安定型骨折例のことが多いです.

このような筋力低下や荷重痛は結果的に歩行獲得を阻害する因子となりますので,不安定型骨折例の方が歩行獲得に時間がかかることがほとんどです.

 

 Jenssen分類・中野3D-CT分類が現在の主流 

エバンス分類については上にご紹介させていただきましたが,近年はエバンス分類が使用される機会というのは明らかに減少しており,大腿骨転子部骨折の分類にはJenssen分類(ヤンセン分類)や中野3D-CT分類など用いられるようになってきております.

ここでは最近使用機械の増えているJensen分類についてまとめておきたいと思います.通常はTypeⅠ・Ⅱを安定型骨折,TypeⅢ・Ⅳ・Ⅴを不安定型骨折としてとらえます.

 

 TypeⅠ(2-fragment骨折:転位なし) 

 TypeⅡ(2-fragment骨折:転位あり) 

 TypeⅢ(3-fragment骨折:大転子骨折あり) 

 TypeⅣ(3-fragment骨折:小転子骨折あり) 

 TypeⅤ(4-fragment骨折:大転子・小転子骨折あり) 

 Reversed type(骨折線の内側が近位で外側が遠位) 

 

また股関節正面像では十分に内側骨皮質の連続性を判断することが困難であることも指摘されており,最近では3D-CTを使用して骨折型を判定するのが主流となってきております.

中野3D-CT分類はより正確に骨折型を判定できることが明らかにされております.

今回は大腿骨転子部骨折の分類を紹介させていただきました.

安定型骨折と不安定型骨折では臨床像も全く異なりますので,まずは対象者の骨折型を見極めることが重要ですね.

中でも今回,書かせていただいた内側骨皮質の連続性に着目することが重要です.次回は大腿骨転子部骨折例のX線を診るときにもう1つ重要なポイント,小転子骨片転位についてご紹介させていただきますね.

大腿骨転子部骨折における小転子骨片転位の重要性
骨折型を判定する際には内側骨皮質の連続性に着目する必要があることは前回の記事でも述べたとおりです. 大腿骨転子部骨折例のリハビリテーション(理学療法)を行う上では,小転子骨片転位の有無と腸腰筋の機能低下に関して理解しておくことが重要です.

 

極める大腿骨骨折の理学療法 医師と理学療法士の協働による術式別アプローチ (臨床思考を踏まえる理学療法プラクティス) [ 斉藤秀之 ]

 

参考文献
1)越智龍弥,中野哲雄,他:3DCTによる大腿骨転子部骨折の骨折型分類.骨折26:549-551,2004
2)鈴木聖裕,大腿骨転子部骨折の分類と整復法-回旋転移に注目して,関節外科,2006

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