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リクライニング車椅子座位時のリクライニング角度はどのくらいで褥瘡を予防できる?
寝たきりに近い重度の症例の場合には普通型車椅子ではなくリクライニング車椅子を用いて離床を行うことが多いと思います.
血圧低下にも対応できますし,移乗もトランスファーボードを用いれば比較的スムースに行えることが多いでしょう.
リクライニング車椅子で長時間の座位保持練習を行う場合に問題となるのが褥瘡です.
しかしながらリクライニング車椅子座位時のリクライニング角度はどのくらいで褥瘡を予防できるのでしょうか?
今回はリクライニング車椅子座位時のリクライニング角度はどのくらいで褥瘡を予防できるのかを考えるうえで参考になる論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Int J Environ Res Public Health. 2022 Apr 27;19(9):5299. doi: 10.3390/ijerph19095299.
Effect of Tilt-in-Space and Reclining Angles of Wheelchairs on Normal Force and Shear Force in the Gluteal Region
Hitoshi Koda 1, Yohei Okada 2, Takahiko Fukumoto 2, Shu Morioka 2
Affiliations Expand
PMID: 35564695 PMCID: PMC9101662 DOI: 10.3390/ijerph19095299
今回ご紹介する論文は2022年に掲載された論文です.
研究の目的
Healthcare workers need to educate patients regarding proper sitting positions to prevent pressure injuries in the elderly and disabled. The purpose of this study was to investigate the differences in normal and shear force in the gluteal region using the combination of tilt-in-space and reclining functions of wheelchairs.
医療従事者は高齢者や障害者の体圧障害を予防するために,適切な座位について患者を教育する必要があります.
この研究では車椅子のチルト・イン・スペース機能とリクライニング機能を組み合わせて使用し,臀部における座圧とせん断力の違いを調査することを目的としております.
研究の方法
Twelve healthy subjects were recruited. Protocols for 15 wheelchair tilt-in-space and reclining angles, including three reclining angles (0°, 10°, and 20°) and five tilt-in-space (0°, 5°, 10°, 15°, and 20°), were randomly assigned. To measure the amount of normal and shear force applied to the gluteal region while sitting on a wheelchair, a force plate was placed on the seat to measure the seat reaction force. For statistical analysis, a two-factor analysis of variance, with tilt-in-space and reclining, was performed for each normal and shear force.
健常者12例を対象としております.
3つのリクライニング角度(0°・10°・20°)と5つのチルトインスペース(0°・5°・10°・15°・20°)を含む15の車椅子のチルトインスペースとリクライニング角度のプロトコルを無作為に割り当てております.
車椅子に座っているときに臀部にかかる座圧とせん断力の量を測定するため,座面にフォースプレートを置き,座面反力を測定しております.
統計解析のため,座圧と剪断力のそれぞれについて,チルトインスペースとリクライニングを用いた2要因分散分析を行っております.
研究の結果
The normal force showed a significant decrease with increased reclining angle. For the shear force combined with sagittal and lateral components, the 10° tilt-in-space showed a significant decrease compared to other conditions.
臀部にかかる座圧はリクライニング角度の増加に伴い有意な減少を示しました.
矢状成分と側方成分を組み合わせた剪断力では,10°チルトインスペースが他の条件と比較して有意な減少を示しました.
研究の結論
The combination of 20° reclining and 10° tilt-in-space angles may decrease both normal and shear force in the gluteal region while sitting. These findings may help wheelchair-dependent individuals avoid pressure injuries.
リクライニング角度20°とチルトインスペース角度10°の組み合わせは,座位時の臀部における座圧とせん断力の両方を減少させる可能性があります.
これらの知見は車椅子使用者が圧迫損傷を避けるのに役立つかもしれません.
今回はリクライニング車椅子座位時のリクライニング角度はどのくらいで褥瘡を予防できるのかを考えるうえで参考になる論文をご紹介させていただきました.
今回の結果から考えるとリクライニング角度20°とチルトインスペース角度10°の組み合わせが褥瘡予防には役立ちそうですね.
いずれにしてもこまめに角度を変化させることも重要でしょうね.