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外側ウェッジインソールが内側半月板の負荷を軽減させ変形性膝関節症予防につながる?
変形性膝関節症に対する装具療法として外側ウェッジインソールが持ちられることが多いです.
しかしながら外側ウェッジインソールが内側半月板の力学的ストレス軽減に果たす役割ってどうなのでしょうか?
今回は外側ウェッジインソールが内側半月板の負荷を軽減させ変形性膝関節症予防につながるのかどうかを考えるうえで参考になる論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Prosthet Orthot Int. 2024 Mar 5. doi: 10.1097/PXR.0000000000000320. Online ahead of print.
Effect of lateral wedge insole on medial meniscus extrusion and its association with knee osteoarthritis progression
Yosuke Ishii 1, Masakazu Ishikawa 2, Noboru Shimada 3, Makoto Takahashi 1, Yoshitaka Iwamoto 1, Shota Date 4, Hiroshi Kurumadani 4, Goki Kamei 5, Toru Sunagawa 4, Nobuo Adachi 5
Affiliations expand
PMID: 38441477 DOI: 10.1097/PXR.0000000000000320
今回ご紹介する論文は2024年に掲載された論文です.
研究の背景
Background: Medial meniscus extrusion (MME) is associated with knee osteoarthritis (OA) progression because of increased loading stress in the medial compartment of the knee. Using a lateral wedge insole (LWI) decreases loading stress and immediately reduces MME.
内側半月板逸脱(MME)は変形性膝関節症(OA)の進行と関連しておりますが,これは膝の内側コンパートメントで荷重ストレスが増加するためであります.
外側ウェッジインソール(LWI)を使用することで,荷重ストレスが減少し内側半月板逸脱が即座に減少するといった仮説を立てております.
研究の目的
Objective: To investigate whether the wearing duration of LWI affects the midterm response to MME and is associated with knee OA progression.
外側ウェッジインソールの装着期間が内側半月板逸脱に対する中期的な反応に影響し,変形性膝関節症の進行と関連するかどうかを調査することを目的としております.
研究デザイン
Study design: Cohort study.
研究デザインはコホート研究としております.
研究の方法
Methods: Twenty-three patients with knee OA who were conservatively treated with LWI were classified according to the duration of the LWI wear per day: less than 5 h (short-duration group) or over 5 h (long-duration group). MME was evaluated in the single-leg standing position by ultrasound. Knee OA progression and limb alignment were evaluated radiographically. These evaluations were performed thrice: at the initial office visit as a baseline without LWI (time 0), with LWI (LWI-time 0), and 1 year after intervention with LWI (LWI-1 year).
外側ウェッジインソールによる保存的治療を受けた変形性膝関節症例23例を1日の外側ウェッジインソール装着時間によって5時間未満(短時間群)と5時間以上(長時間群)に分類しております.
内側半月板逸脱は超音波検査により片脚立位で評価しております.
変形性膝関節症の進行と四肢のアライメントをX線写真で評価しております.
これらの評価は初診時のベースラインとして,外側ウェッジインソールなし(LWI-time 0),外側ウェッジインソールあり(ラテラルウェッジインソール-time 0),外側ウェッジインソール介入1年後(LWI-1年)の3回行っております.
研究の結果
Results: In both groups, the MMEs at LWI time 0 were significantly decreased compared with those at time 0. In the long-duration group, this reduction in MME was maintained 1 year after the intervention compared with time 0 (time 0: 3.9 ± 0.9, LWI-1 year: 2.6 ± 1.1), but this improvement was not observed in the short-duration group (time 0: 3.8 ± 1.7, LWI-1 year: 3.6 ± 1.7). In addition, three of four patients demonstrated OA progression, and varus alignment had significantly progressed compared with that at time 0 in the short-duration group. However, the long-duration group showed OA progression only in one patient and maintained limb alignment.
両群とも外側ウェッジインソール時点0における内側半月板逸脱は,時点0と比較して有意に減少しておりました.
長期使用群ではこの内側半月板逸脱の減少は,介入1年後も時点0と比較して維持されておりましたが(時点0:3.9±0.9,外側ウェッジインソール-1年:2.6±1.1),短期使用群ではこの改善は認められませんでした(時点0:3.8±1.7,外側ウェッジインソール-1年:3.6±1.7).
さらに4例中3例で変形性膝関節症の進行が認められ,内反アライメントは,短期間群では0時時点と比較して有意に進行しておりました.
しかし長期使用群では変形性膝関節症の進行がみられたのは1例のみであり下肢アライメントは維持されておりました.
研究の結論
Conclusions: The duration of wearing LWI affects the midterm reduction of MME and knee OA progression while maintaining limb alignment.
外側ウェッジインソールの装着期間は,下肢アライメントを維持しながら,内側半月板逸脱の中期的な減少および変形性膝関節症の進行を予防できる可能性が示唆されました.
今回は外側ウェッジインソールが内側半月板の負荷を軽減させ変形性膝関節症予防につながるのかどうかを考えるうえで参考になる論文をご紹介させていただきました.
この研究のポイントは装着機関ですね.
長期的に外側ウェッジインソールを使用することで内側半月板の力学的ストレスを軽減させ変形性膝関節症を予防することが可能かもしれませんね.