小脳性運動失調症例に対する重錘の使用は本当は効果的ではない?

脳卒中
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小脳性運動失調症例に対する重錘の使用は本当は効果的ではない?

小脳性運動失調症例に対しては昔から重錘負荷を用いた運動療法が行われてきました.

感覚入力を増やすことで運動学習効果が高まり,重錘負荷による運動療法は小脳性運動失調に対して効果的であると考えられてきましたがこれって本当なのでしょうか?

今回は小脳性運動失調症例に対する重錘の使用は本当は効果的なのかどうかを考えるうえで参考になる研究論文をご紹介させていただきます.

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今回ご紹介する論文

Cerebellum. 2019 Feb;18(1):128-136. doi: 10.1007/s12311-018-0962-1.

Patients with Cerebellar Ataxia Do Not Benefit from Limb Weights

Amanda M Zimmet 1 2, Noah J Cowan 3, Amy J Bastian 4 5

Affiliations expand

PMID: 30069836 PMCID: PMC6983975 DOI: 10.1007/s12311-018-0962-1

今回ご紹介する論文は2019年に掲載された論文です.

 

 

 

 

 

 

 

研究の目的

Patients with cerebellar ataxia are sometimes treated by the addition of mass to the limbs, though this practice has received limited study. Recent work suggests that adding mass to the limbs might have predictable effects on the pattern of cerebellar dysmetria (i.e., over or undershooting) that depends on a hypothesized mismatch between the actual limb inertia and the brain’s estimate of limb inertia. Based on this model, we predicted that addition of mass would only be effective in reducing dysmetria in hypometric patients.

小脳性運動失調症例には四肢に重錘を負荷する運動療法が行われることがあるが,この運動療法の効果に関する研究は限られております.

近年の研究では,四肢に重錘を負荷することで,実際の手足の慣性と脳が推定する手足の慣性のミスマッチに依存する小脳性運動障害のパターン(オーバーシュートやアンダーシュート)に予測可能な効果があることが示唆されております.

このモデルに基づき重錘負荷は低体重の患者においてのみ,測定障害の軽減に効果的であると仮説を立案しました.

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法

Cerebellar patients were challenged with making a single-joint, single degree of freedom reaching movement while various limb masses were tested.

小脳性運動失調症例を対象としてさまざまな重量の重錘を用いて単関節・1自由度のリーチング動作を行うという課題を実施しております.

 

 

 

 

 

 

研究の結果

In this task, some single-jointed reaches were improved by adding masses that were optimized in a patient-specific manner. However, this improvement did not translate to multi-joint movements. In multi-joint movements, the “best” patient-specific masses (as determined in a single-joint task) generally exacerbated subjects’ reaching errors.

この課題では症例ごとに最適化された重錘を負荷することで単関節リーチが改善されました.

しかしこの改善は多関節の動きには反映されませんでした.

多関節運動では単関節課題で決定された最適な症例固有の質量は,対象者のリーチエラーを悪化させました.

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

This finding raises questions as to the merits of adding limb weights as a therapy to mitigate the effects of dysmetria.

この結果は測定障害の影響を軽減するための治療法として,重錘を負荷する運動療法の効果について疑問を投げかけるものであります.

 

今回は小脳性運動失調症例に対する重錘の使用は本当は効果的なのかどうかを考えるうえで参考になる研究論文をご紹介させていただきました.

これは非常に興味深い結果ですね.

重錘を負荷することで単関節運動が改善されたように見えたとしてもそれが必ずしも多関節運動に反映されるとは限らないということですね.

われわれ理学療法士・作業療法士も小脳性運動失調症例に対して重錘負荷を用いる場合には重錘負荷前後での評価を詳細に行うことが求められますね.

この結果から考えると重錘負荷が運動学習の妨げになる可能性すらありますね.

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