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SLR testで神経根症状と筋短縮を見分けるには?
理学療法士・作業療法士であればSLR testを使用して椎間板障害や下肢の柔軟性を評価することは多いと思います.
SLRの角度というのは元来かなり個人差がありますので,角度だけで神経根障害や椎間板障害を判断するのは難しいのも実際です.
また神経根症状と筋短縮を見分けるうえではSLR時のどの屈曲角度で症状が出現するかが重要となりますが,このあたりの理解が不十分なままただただSLRを行っている理学療法士・作業療法士も少なくありません.
今回はSLR testで神経根症状と筋短縮を見分けるにはどうすればよいのかについて考えてみたいと思います.
SLRの意義
下肢を伸展させて挙上していくと,L5-S2レベルの坐骨神経の神経根が伸展されます.
仮にL5-S2レベルの坐骨神経の神経根に何らかの病変があれば,神経根にストレッチによる刺激が加わり,痛みが出現するというわけです.
ただしこの神経叢の伸張を考えるうえで重要となるのがSLRの角度です.
神経叢ってどの角度でも伸張されるわけではないんです.
したがってどの角度で神経叢が伸張されるのかを知っておくことがポイントとなります.
0°~35°
SLRの0°~35°では基本的に硬膜には動きが生じませんので,坐骨神経への刺激は極少ないといえるでしょう.
したがって仮に0°~35°で疼痛が出現した場合には硬膜外病変が疼痛の原因と考えるのが妥当でしょう.
硬膜外病変の代表的な者としては梨状筋症候群や仙腸関節障害が代表的です.
また神経根が伸張される前の0°~35°で大腿後面に鈍痛が出現したのであれば,ハムストリング筋の短縮や過緊張が原因の可能性も高いです.
つまり0°~35°で疼痛が出現する場合には神経根障害や椎間板障害ではない可能性が高いと考えた方が良いでしょう.
しかしながら神経根周囲に炎症がある場合には少し話は変わってきます.
炎症がある場合には下肢の挙上角度に関わらず自発痛が出現していることも多いですし,35°以下の挙上角度でもと痛がshつ原する場合があることには注意が必要です.
35°~70°
基本的には35°~70°の範囲内での疼痛が出現した場合には,椎間板病変を疑います.
これは35°~70°が最も椎間板レベルの神経根に緊張がかかる角度だからです.
また70°に近づくにつれて神経根に対する慎重の絵地度は小さくなります.
したがって35°~70°で神経伸張によると思われる疼痛が出現する場合には椎間板病変を疑うとよいでしょう.
70°以上
70°以上で疼痛が出現する場合はどうでしょうか?
基本的に挙上角度70°以上では神経根への伸張というのはほとんど起こりません.
70°以上の角度で疼痛が出現した場合には,椎間関節の動きに伴う椎間関節障害を疑うのが一般的です.
しかしながらそもそもハムストリングスがタイとであれば70°以上の挙上というのは難しい場合が多いので,あくまでハムストリングスに十分な柔軟性があって70°以上で疼痛を訴える場合には椎間関節障害を疑うということになるでしょう.
今回はSLR testで神経根症状と筋短縮を見分けるにはどうすればよいのかについて考えてみました.
今回は角度毎に疼痛が出現した場合に一般的な解釈をご紹介させていただきました.
しかしながら関節角度と疼痛との関連性はこれほど単純ではありません.
例外も存在することを考慮しておく必要があるでしょう.