高齢者の転倒リスクを評価する際には歩行速度や歩幅よりも歩容の変動性に着目すべき

介護予防
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高齢者の転倒リスクを評価する際には歩行速度や歩幅よりも歩容の変動性に着目すべき

理学療法士・作業療法士が高齢者の転倒リスクを評価する機会は少なくないと思います.

理学療法士・作業療法士であれば,高齢者の転倒リスクを評価するにあたって歩行速度や歩幅を評価することが多いと思います.

しかしながら高齢者の歩行に着目する場合には歩行速度や歩幅よりも歩容の変動性が重要であることが明らかにされております.

今回は高齢者の転倒リスクを評価する際には歩行速度や歩幅よりも歩容の変動性に着目すべきであるといったお話です.

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今回ご紹介する論文

J Biomech. 2014 Jul 18;47(10):2424-9. doi: 10.1016/j.jbiomech.2014.04.011. Epub 2014 Apr 16.

Key joint kinematic characteristics of the gait of fallers identified by principal component analysis

Yoshiyuki Kobayashi 1, Hiroaki Hobara 2, Shiho Matsushita 2, Masaaki Mochimaru 2

Affiliations expand

PMID: 24794861 DOI: 10.1016/j.jbiomech.2014.04.011

今回ご紹介する論文は2014年に掲載された論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の目的

It has been reported that fallers have a higher risk of subsequent falls than non-fallers. Therefore, if the differences between the movements of recent fallers and non-fallers can be identified, such could be regarded as the basis of the high risk of falling of the former. The objective of the present study was the identification of the key joint kinematic characteristics of human gait related to the risk of falling while walking on level ground.

転倒例は非転倒例に比較して,その後の転倒リスクが高いことが報告されております.

したがって最近転倒経験のある高齢者と転倒経験のない高齢者の歩行の違いが明らかになれば,転倒例における転倒リスクの高さの根拠となると考えられます.

この研究では,平地歩行時の転倒リスクに関連するヒトの歩行の主要な関節運動学的特徴を明らかにすることを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法

For this purpose, joint kinematics data obtained from 18 recent fallers and 19 non-fallers were analyzed using principal component analysis (PCA). The PCA was conducted using an input matrix constructed from the time-normalized average and standard deviation of the lower limb joint angles on three planes (101 data×2 parameters×3 angles×3 planes).

対象を転倒例18名および非転倒例19名にから分類したうえで,得られた関節運動学的データを主成分分析を用いて解析しております.

主成分分析にあたっては下肢の関節角度を3面(101データ×2パラメータ×3角度×3面)で時間正規化した平均値と標準偏差からなる入力行列を用いて行っております.

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結果

The PCA revealed that only the 5th principal component vector (PCV 5) among the 23 generated PCVs was related to the risk of falling (p<0.05, ES=0.71).

主成分分析の結果,生成された23個のPCVのうち,5番目の主成分ベクトル(PCV5)のみが転倒リスクと関連していることが明らかとなりました(p<0.05、ES=0.71).

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

These findings as well as those of previous studies suggest that the joint kinematics of PCV 5 is the key characteristic that affects the risk of falling while walking. We therefore recombined the joint kinematics corresponding to PCV 5 and concluded that the variability of the joint kinematics for fallers was larger than that for non-fallers regardless of the joint. These observations as well as the findings of previous studies suggest that the risk of falling can be reduced by reducing the variability of the joint kinematics using an intervention such as external cues or a special garment.

今回の結果から先行研究と同様に,主成分分析の主成分ベクトル5の関節運動学が歩行中の転倒リスクに影響を与える重要な特性であることを示唆されます.

そこで主成分ベクトル5に対応する関節運動学を再構成したところ,転倒例の関節運動学のばらつきは,関節に関係なく転倒例の方が非転倒例よりも大きいという結論に達しました.

この結果は先行研究の知見と同様に,外部からの合図や特殊な衣服などの介入を用いて関節運動学の変動を低減することで,転倒リスクを低減できることが示唆されます.

 

今回は高齢者の転倒リスクを評価する際には歩行速度や歩幅よりも歩容の変動性に着目すべきであるといったお話でした.

転倒リスクの高い高齢者の歩容の特徴は歩行速度の低下や,歩幅の狭小化だけではないということですね.

特に転倒リスクを評価する場合には,歩行の変動性に着目する必要がありますね.

特に立脚終期~遊脚初期における股関節・膝関節・足関節の関節角度にばらつきに着目することが重要であると考えられます.

実は経験の豊富な理学療法士・作業療法士ほど転倒リスクを評価する際に,無意識的に歩容の変動性に着目していたりするんですよね.

この無意識的にといったところがポイントなわけですが…

歩容が一定じゃない人には注意が必要ですね.

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