ラジオ体操による介護予防って?

介護予防
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目次

 ラジオ体操による介護予防って? 

近年,介護予防領域では,理学療法士・作業療法士による更なる参画が求められております.

理学療法・作業療法は,個々の興味や日常生活での習慣化を意図することで高齢者の健康保持・増進に貢献でき,理学療法士・作業療法士による予防的健康介入の成果が報告されております.

なかでも,地域住民の全てを対象としたポピュレーション戦略では,理学療法士・作業療法士による提案・助言といった間接的関与の効果とその重要性が示されております.

われわれ理学療法士・作業療法士は,個人に対するアプローチだけでなく,集団を対象とした健康支援にもその専門性を注力することで,介護予防領域における諸問題に提言・提案できる可能性があります.

一方,高齢者の運動実践を妨げている要因に,高齢期の心理特性である新規なイベントへの参加や挑戦を避ける傾向が指摘されております.

また,高齢者への大規模調査では,「なんとなく機会がない」といった理由が最も多いことや,運動の継続には,身近な地域での実施が重要とされております.

ゆえに,高齢者への運動の導入・継続にむけた支援では,馴染み深い活動であることや,参加しやすい身近な地域での実施に留意すべきと考えられます,

今回ご紹介いたします研究では,地域開催型ラジオ体操による介護予防の有用性について検討がなされております.

この研究では,地域在住高齢者を対象に地域ラジオ体操による介入を行い,対照群との比較から身体・心理社会面への効果を明らかにすることを目的としております.

 

 

 

 

 ラジオ体操とは? 

ラジオ体操は,1928年にラジオ放送が開始されて以来,学校体育や就労前体操として行われ男女間わず全世代に亘り馴染み深い運動です.

また,ラジオ体操は,「夏期巡回ラジオ体操」として全国の地域自治会で実施されてきた経緯があり,地域活動として取り入れやすいといった特徴があります.

さらに行動変容技法のひとつであるトランスセオレティカル・モデルでは,行動実践の敷居が低い活動を生活に取り入れる「スモールチェンジ」が行動変容の促進に効果的とされております.

新たな学習を必要とせず,短時間で手軽なラジオ体操は,この行動実践の敷居が低い活動と捉えることができ,運動開始のきっかけとして期待できます.

おそらくこれほどまでに多くの日本人に普及している体操というのは他に無いのではないでしょうか?

 

 

 

 

 ラジオ体操に関する過去の研究 

地域ラジオ体操の効果については,先行研究により地域ラジオ体操の習慣者は,歩行能力や筋力が優れている,参加者間でコミュニティーが形成されるといった報告があります.

しかしながら,これらは習慣者を対象とした横断研究であり,介入を用いてその効果を明らかにした研究はありません.

 

 

 

 

 この研究の対象 

対象は地域ラジオ体操の参加者は,愛知県A市B小学校区に在住する65 歳以上の高齢者に対し「地域で行うラジオ体操の参加者募集」として,自治会の回覧板・掲示板,公民館へのポスター掲示により募集しております.

対照群は,B小学校区に隣接するC小学校区に在住する65歳以上の高齢者を対象に「体力測定会の参加者募集」として,ラジオ体操群と同様の方法で募集をおこなっております.

募集期間は,2012年 3~4月の1ヵ月間とし,ラジオ体操群には22 名,対照群には17名の応募がありました.

しかし,ラジオ体操群で介入期間中に中断者が2名生じ,分析対象は,ラジオ体操群20名(男性4名/女性16名,平均年齢71±3歳),対照群17名(男性5名/女性12名,平均年齢73±4歳)となっております.

 

 

 

 

 研究の方法 

地域ラジオ体操は,週5日(月~金)の頻度で,2012年5月14日~8月15日の3ヵ月間実施しております.

体操には,号令ありの音源(NHK Service Center 2009)を用いてラジオ体操第 1と第2を連続して行い,1回あたりの実施時間は合計約6分でありました.

また,指導者1名が参加者の前で見本となる動きを行い,正しい体操方法となるよう口頭にて指導を行っております.

実施場所は,B小学校区内の公園とし,午前6時30分より開始しております.

なお,屋外での活動であるため,雨天時は中止としております.

アウトカムの測定は介入期間の前後2週間以内に実施しております.

調査項目ですが基本属性 年齢,性別,身長,体重となっております.

また継続割合として介入期間中に参加しなくなった者を中断者, 3ヵ月間の出席率が8割以下の者を非継続者を調査しております.

継続割合は,中断者,非継続者を除き, 3ヵ月間参加できた者の割合としております,

運動習慣についても「週2回以上⊥「週1回」,「月1~2回」,「していない」の4件法で調査をしております.

移動手段と会場までの所要時間については「ラジオ体操の会場までの移動手段」と「ラジオ体操の会場からご自宅まで徒歩で要する時間」を調査しております。

身体機能については上肢筋力にアームカール(Arm Curl;以下, AC),下肢筋力にチェアスタンド(Chair Stand;以下, CS),下肢柔軟性にシットアンドリーチ(Sit and Reach;以下, SR),上肢柔軟性にバックスクラッチ(Back Scratch;以下, BS),動的バランスにアップアンドゴー(Up and Go;以下,UG)をそ用いております.

さらに心理社会機能として,老研式活動能力指標,高齢者抑うつ尺度短縮版,生活リズム,気分,体調の主観的変化を調査するとともに身体活動量についても「ライフコーダEX」を用いて評価を行っております.

 

 

 

 

 研究の結果 

まず身体機能きのうですが下肢筋力は介入前後で,ラジオ体操群が20±3回から24±5回,対照群が24±5回から23±5 回となり,ラジオ体操群にのみ有意な変化が認められております.

動的バランスについても,ラジオ体操群が4.7±0.6 秒から4.0±0.4秒,対照群が4.8±0.5秒から5.1±0.6秒となり,ラジオ体操群にのみ有意な変化が認められております.

心理社会機能では老研式,GDS-15ともに介入前後における有意な変化は認められておりません.

生活リズム,気分,体調の主観的変化については肯定的な変化を感じていた者は,生活リズム17名(85,0%),気分17名(85.0%),体調15名(75.0%)となっております.

身体活動量についても,介入前と介入期間中で,ラジオ体操群が7,350±3,458歩から8,282±3,805歩,対照群が8,000±3,264歩から7,227±2,995歩と変化し,ラジオ体操群のみ有意な変化が認められております.

 

 

 

 

 この研究から考えられること 

身体機能では,下肢筋力と動的バランスに改善が得られており,ラジオ体操群の7割以上が生活リズム,気分,体調に良好な変化を認知している結果となっております.

高齢者の筋力向上を目的としたレジスタンス運動では,最大筋力(1-repetition maxi- mum:1RM)の70~80%といった高強度で実施することが推奨されておりますが,中~低強度の負荷であっても,筋力増強・維持が可能との報告もあります.

ラジオ体操は,3.8METS と中等度の活動強度に分類され,これは軽いジョギングやランニングに相当します.

この介入では,体操の際に指導者が見本を示しながら,適宜,運動方法のアドバイスを行ったことから,毎回の体操において,十分な活動強度が確保できており,特に自重による負荷が大きい下肢筋群において筋力が向上したと考えられます.

また,ラジオ体操群では,介入期間中の歩数が介入前よりも平均932歩(12.7%)増加し,有意な変化が認められたことから,歩数の増加と体操の実践が複合し下肢筋力の向上につながったと推察されます.

地域ラジオ体操は,新たな学習や特別な道具の必要がない手軽な運動でありながらも,移動動作に関わる下肢筋力や動的バランスの向上が期待できることから,地域在住高齢者の健康維持・増進に役立つ活動であることが示唆されます.

また介入後の主観的変化では,ラジオ体操群の7割以上において,生活リズム,気分,体調に良好な変化が認められ,地域ラジオ体操は,身体面のみでなく,生活リズムや気分にも好影響をもたらす活動であると考えられます.

さらにこの点において,地域ラジオ体操は,これまでの実施経緯から,習慣的な朝の体操といった認識が定着しやすく,高齢者の生活リズムの改善にむけたプログラムとして活用しやすいと考えられます.

ラジオ体操の欠点としては屋外の活動でありますので,冬季期間の実施や天候の問題に加え,手軽で単純な体操であるがゆえに,長期間の継続によって飽きや脱落者が生じる可能性も予測されます.

そのため,継続的な効果を得るためには,その方法や展開などに工夫が必要でしょう.

 

 

本邦における地域の通いの場では高知県で開発されたいきいき百歳体操を使って介護予防を普及している市町が多いと思いますが,ラジオ体操をツールに通いの場を展開するというのも1つだと思います.

またいきいき百歳体操も継続的に行っていると,飽きてきたりもしますのでそういった際にラジオ体操を活用するというのも1つの方法ではないでしょうか?

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