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リストバンド型加速度計が脳卒中片麻痺例の上肢機能改善に有効?
脳卒中片麻痺例の上肢機能に対するアプローチとしてはCI療法をはじめさまざまなアプローチが報告されておりますが,使用頻度を増加させることが上肢機能改善に有効であることは言うまでもありません.
今回はリストバンド型加速度計を使ったアプローチが脳卒中片麻痺例の上肢機能改善に及ぼす影響を明らかにした研究報告をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Multicenter Study Clin Rehabil. 2019 Aug;33(8):1391-1403. doi: 10.1177/0269215519834720. Epub 2019 Mar 7.
Wristband Accelerometers to motiVate Arm Exercises After Stroke (WAVES): A Pilot Randomized Controlled Trial
Ruth H Da-Silva 1, Sarah A Moore 1, Helen Rodgers 1, Lisa Shaw 1, Louise Sutcliffe 1, Frederike van Wijck 2, Christopher I Price 1
Affiliations expand
PMID: 30845829 DOI: 10.1177/0269215519834720
今回ご紹介する論文は2019年に掲載された比較的新しい論文です.
研究の目的
Objective: To evaluate the feasibility of a multicentre, observer-blind, pilot randomized controlled trial (RCT) of a wristband accelerometer with activity-dependent vibration alerts to prompt impaired arm use after stroke.
この研究では脳卒中片麻痺例を対象として,活動性に依存した振動アラートを付加したリストバンド型加速度計が上肢機能改善に有効か否かを明らかにすることを研究目的としております.
多施設で行われた,評価者が盲検化されたパイロット無作為化比較試験(RCT)となっております.
研究デザイン
Design: Parallel-group pilot RCT.
研究デザインは平行群パイロット無作為化比較試験となっております.
研究セッティング
Setting: Four English stroke services.
この研究は英国における4つの脳卒中片麻痺例に対するサービスを提供する施設で行われた多施設共同研究です.
研究の対象
Participants: Patients 0-3 months post stroke with a new arm deficit.
研究の対象ですが,脳卒中発症後0~3ヵ月のクライアントで,脳卒中発症後に上肢機能障害が出現したクライアントとなっております.
介入の方法
Intervention: Participants were randomized to wear a prompting or ‘sham’ wristband during a four-week self-directed therapy programme with twice-weekly therapy review.
対象者は週2回の治療を伴う4週間のプログラム中に,上肢活動を促進するためのリストバンドまたは偽物のリストバンドを着用するように無作為に割り付けられました.
主要アウトカム
Main outcomes: Recruitment, retention and adherence rates, safety and completion of assessments were reported. Arm recovery was measured by Action Research Arm Test (ARAT) and Motor Activity Log (MAL) without statistical comparison.
対象者,対象者の参加率,アドヒアランス,安全性,評価の完了率を評価した上で,主要アウトカムとして上肢機能の回復の程度についてARATと運動活動記録(MAL)を用いて評価を行っております.
統計学的な比較は行われておりません.
研究の結果
Results: In total, 33 patients were recruited (0.6 per month/site; median time post stroke: 26 days (interquartile range (IQR):15.5-45)). Baseline, four-week and eight-week median (IQR) ARAT for the control group (n = 19) were 15 (2-35), 35 (15-26) and 31 (21-55) and those for the intervention group (n = 14) were 37 (16-45), 57 (29-57) and 57 (37-57), respectively; for MAL Amount of Use, the corresponding values in the control group were 0.2 (0.0-1.2), 1.1 (0.3-2.9) and 1.2 (0.7-2.9) and in the intervention group were 1.4 (0.5-2.6), 3.8 (1.9-4.5) and 3.7 (2.1-4.3). Four participants withdrew from the study. Wristbands were worn for 79% of the recommended time. The intervention and control group participants received a median of 6.0 (IQR: 4.3-8.0) and 7.5 (IQR: 6.8-8.0) therapy reviews. A median of 8 (IQR: 6-10) prompts were delivered per intervention participant/day. Research assessments were completed for 28/29 and 25/28 patients at four and eight weeks. Eight serious adverse events were reported, all unrelated to the intervention.
最終的に33人のクライアントが研究に参加しております(1施設あたり0.6人/月,発症後期間の中央値:26日(四分位間範囲(IQR):15.5~45)).
対照群(n=19)のベースライン,4週間,8週間のARAT中央値(IQR)は15(2-35),35(15-26),31(21-55)であり,介入群(n=14)のARATはそれぞれ37(16-45),57(29-57),57(37-57)となっております.
なおMALの使用量については,対照群での対応値が0 2(0.0~1.2),1.1(0.3~2.9),1.2(0.7~2.9)であり,介入群では1.4(0.5~2.6),3.8(1.9~4.5),3.7(2.1~4.3)となっております.
最終的に4例がドロップアウトしております.
リストバンドは推奨された期間の79%の間着用されておりました.
研究評価は4週間後と8週間後に28/29例と25/28例で実施されておりますが,8件の重篤な有害事象が報告されております.
いずれも介入とは無関係でありました.
研究の結論
Conclusion: A multicentre RCT of wristband accelerometers to prompt arm activity early after stroke is feasible. A total sample of 108 participants would be required.
脳卒中発症後早期に上肢の活動を促すリストバンド型加速度計の多施設RCTは実現可能であることが明らかとなりました.
統計学的な比較検定を行い,質の高い比較を行うためには108例のサンプルが必要であることが明らかとなりました.
今回はリストバンド型加速度計を使ったアプローチが脳卒中片麻痺例の上肢機能改善に及ぼす影響を明らかにした研究報告をご紹介させていただきました.
万歩計と一緒で活動量をモニタリングするだけでも活動量が増えるといった結果ですね.
脳卒中片麻痺例の上肢機能改善を図るためには,理学療法・作業療法介入以外の時間の上肢の使用頻度を増やすことが必須となりますので,このツールは役に立ちそうですね.
今後は質の高い無作為化比較試験による検討が待たれますね.
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