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筋輝度から見た体幹筋の質の加齢変化
理学療法士・作業療法士がクライアントの筋に対してアプローチを行うことは多いと思います.
筋に対するアプローチの1つとして筋力トレーニングが挙げられますが,最近は筋肥大をはじめとする筋量のみならず筋の質に着目した報告も増えてきております.
今回は筋の質に関する報告の中でも,体幹筋の筋輝度(筋の質を表す指標)が加齢とともにどのように変化するかを明らかにした報告をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Age-related changes in muscle thickness and echo intensity of trunk muscles in healthy women: Comparison of 20s to 60s age groups
Megumi Ota; Tome Ikezoe; Takehiro Kato; Hiroshige Tateuchi; Noriaki Ichihashi
European Journal of Applied Physiology, 08 Jun 2020,
DOI: 10.1007/s00421-020-04412-7 PMID: 32514606
今回ご紹介する論文は2020年に掲載された新しい論文です.
本邦で行われた研究ですね.
研究の目的
PURPOSE:The objective of this study was to investigate the age-related changes in muscle thickness and muscle echo intensity of trunk in subjects including wide range of age groups.
この研究では幅広い年齢層の被験者を対象として,体幹の筋厚と筋エコー強度の加齢に伴う変化を調査することとなっております.
過去の報告でも加齢とともに筋肉の質の低下と量の減少が起きることが明らかにされておりますが,加齢に伴う筋の量や質の変化は筋肉によって異なることも明らかにされております.
しかしながら筋の量や質の変化というのがどの年代から生じるのかは明らかにされておりません.
この研究では,20~60歳代までの女性を対象とし10歳ごとに分類して,体幹筋の筋厚(筋肉の量)と筋輝度(筋肉の質)を比較しております.
研究の方法
METHODS:The subjects were 112 healthy women (age range 20-60s). The rectus abdominis, external oblique, internal oblique, transversus abdominis, erector spinae, and lumbar multifidus muscles were examined. To confirm the differences among the age groups, the linear mixed effect models were performed.
対象は健常女性112名(20~60歳代)としております.
腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・脊柱起立筋・腰部多裂筋の筋厚および筋輝度を調査しております.
年齢層間の違いを明らかにするために,統計学的解析には線形混合効果モデルを使用しております.
研究の結果
RESULTS:There were significant decreases in muscle thickness of the rectus abdominis and external oblique muscles in the 50s and 60s age groups compared to those in the 20s age group, and a significant decrease in muscle thickness of the erector spinae muscle in the 60s age group compared to those in the 20s age group. However, there was no significant difference among the age groups in muscle thickness of other trunk muscles. There were significant increases in echo intensity of the abdominal muscles in other age groups compared to those in the 20s age group, and significant increases in echo intensity of the back muscles in the age groups over 40 compared to those in the 20s group.
50歳代,60歳代では20歳代に比較して,腹直筋・外腹斜筋の筋厚が有意に減少し,60歳代では20歳代に比べて脊柱起立筋の筋厚が有意に減少しておりました.
しかしながら他の体幹筋の筋厚には年齢群間で有意差は認められませんでした.
またその他の年齢層では腹筋の筋輝度が20代と比較して有意に増加しており,40歳以上では背筋の筋輝度が20代と比較して有意に増加しておりました.
研究の結論
CONCLUSION:Our study revealed that muscle quality may be more affected by age than muscle quantity and the effects of aging differ among muscles.
この研究の結果から,筋肉の質は筋量よりも加齢の影響を受ける可能性があり,筋肉によって加齢の影響が異なることが明らかになりました.
今回は筋の質に関する報告の中でも,体幹筋の筋輝度(筋の質を表す指標)が加齢とともにどのように変化するかを明らかにした報告をご紹介させていただきました.
加齢に伴う筋量と筋の質の変化のタイミングというのが異なるものであるというのは興味深いですね.
今後は理学療法士・作業療法士がどのようにして筋の質の低下に対してアプローチを行っていくべきかが明らかにされることを期待したいですね.
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