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認定理学療法士の更新要件に学術活動が必須となった背景
先日もご紹介させていただきましたが,認定理学療法士の更新要件に学術活動が義務化されることとなりそうです.
新生涯学習制度(2022年4月~)における認定理学療法士・専門理学療法士資格の更新条件が明らかに
これまでの認定理学療法士の更新要件と言えばレポートの提出とポイントの取得で良かったわけです.
今回は認定理学療法士の更新要件に学術活動が必須となった背景について考えてみたいと思います.
認定理学療法士は臨床に特化した資格
認定理学療法士の目的をみると,「特定分野において、より安全で質の高い理学療法を提供できることにより、国民に高水準の理学療法を提供できる理学療法士として認知してもらうことを目的とする」とあります.
認定理学療法士というのは,特定の領域における臨床に特化した資格ですので学術活動は必要なく,研修会で研鑚を積みながら臨床でクライアントと向き合った上で症例レポートを作成すれば更新できたわけです.
それが今回提示された更新条件では学会発表や論文執筆といった学術活動が必須となりました.
学会発表か論文掲載が必要というのは人によってはハードルがかなり高くなったと感じる方も少なくないのではないでしょうか?
「認定理学療法士・専門理学療法士更新」の基本構造
これは先日もご紹介させていただいた内容ですが,今回提示された認定理学療法士・専門理学療法士の更新要件というのは,認定理学療法士・専門理学療法士ともに共通のもので以下の要件を満たすと認定理学療法士・専門理学療法士の更新が可能となります.
基本的には以下の1から3の何れも満たすことが認定理学療法士・専門理学療法士更新の条件となります.
1.維持・研鑽のための活動における100点の取得(点数基準は別に定める)
2.下記のいずれかの活動を1つ行うこと(1. の100点には使用できない)
・都道府県理学療法士会学術雑誌への投稿(筆頭著者に限る)
・ブロック主催学会での一般発表の筆頭演者
・都道府県理学療法士学会での一般発表の筆頭演者
3.更新時研修(集合研修1日程度でe-ラーニングも準備を想定)
認定理学療法士の更新に際しても学会での発表を義務付けているというのが特徴だと思います.
なぜ認定理学療法士の更新にも学術活動が必要なのか?
専門理学療法士の更新に学術活動が必要というのは誰もが納得できると思います.
ただ認定理学療法士の更新にも学術活動が必要というのは驚いた方も多いのではないでしょうか?
これは日本理学療法士協会の一種の方針転換な気もします.
つまり臨床を主体として活動する認定理学療法士であっても,学術活動も並行して行いなさいということでしょうね.
学術活動は理学療法士であれば行うべき活動の1つであるといった方針を示したと言ってもよいでしょう.
都道府県理学療法士学会・ブロック学会演題投稿への誘導
もう1つ考えられるのは,今回提示された更新要件は都道府県理学療法士学会・ブロック学会演題投稿への誘導の意味合いも大きいのではないかといった点です.
特に理学療法学術大会が分科学会での開催になってから,理学療法関連の学会の数というのは非常に多くなりました.
分科学会での発表が増えている一方で,都道府県理学療法士学会やブロック学会での発表というのは少なくなっている状況です.
学術大会というのは一般演題の演題数が少ないと学会として成立しませんし,この点については多くの都道府県理学療法士会が頭を悩ませているところでもあります.
今回,認定・専門理学療法士の更新要件の中に都道府県理学療法士学会やブロック学会での発表が盛り込まれることで,今後は都道府県理学療法士学会やブロック学会での一般演題発表というのもかなり増えることが予測されます.
地方の学会が盛り上がるというのは良いことだと思いますが,明らかな誘導としか思えません.
また条件の1つに都道府県理学療法士学術雑誌への投稿が掲げられておりますので,都道府県理学療法士会の中で学術雑誌が無い都道府県理学療法士会はこのあたりも早く整備する必要がありそうですね.
都道府県間で学術雑誌が整備されているところと整備されていないところで格差が生じると,会員が認定・専門理学療法士を更新する上で問題になりますからね.
今回は認定理学療法士の更新要件に学術活動が必須となった背景について考えてみました.
初回の更新までにまだまだ期間はありますが,認定理学療法士の更新が必要な方は研究法に関する知識を深めるなどして,徐々に学術活動が行える準備をしていく必要がありますね.
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