目次
半側空間無視に対する頸部へ振動刺激の効果
最近は振動刺激を使った理学療法士・作業療法士の介入が増えてきております.
最も多いのはWhole body vibrationと呼ばれる全身に対する振動刺激の効果を使った介入です.
また振動刺激により運動錯覚を惹起し疼痛改善を図ったり,筋紡錘をターゲットに筋出力を向上させるような介入も増えてきております.
今回は頸部といった局所への振動刺激が脳卒中片麻痺例に生じる高次脳機能障害の1つである半側空間無視に与える影響を明らかにした研究論文を紹介させていただきます.
今回紹介する研究
Disabil Rehabil. 2011;33(23-24):2322-8. doi: 10.3109/09638288.2011.570411. Epub 2011 Apr 12.
Effects of 5 minutes of neck-muscle vibration immediately before occupational therapy on unilateral spatial neglect.
Kamada K1, Shimodozono M, Hamada H, Kawahira K.
今回ご紹介する論文は2011年に掲載された少し古い論文です.
本邦で行われた臨床研究ですね.
研究の目的
To evaluate the effects of neck-muscle vibration for 5 min before occupational therapy (OT) on unilateral spatial neglect (USN).
研究の目的は作業療法実施前の5分間の頸部筋群へ振動刺激が,半側空間無視に与える影響を明らかにすることとなっております.
研究の方法
In this multiple-baseline design study for 6 weeks (A(1)-B-A(2) design: A(1), A(2); conventional OT without neck-muscle vibration, B; neck-muscle vibration before OT together with conventional OT), we examined 11 right brain-damaged patients in the post-acute phase of stroke who showed USN. Sessions A(1) and A(2): conventional OT for 40 min once daily for 5 days a week. Session B: the left posterior neck muscles of the patient were subjected to vibration for 5 min, without confirming the appearance of a kinaesthetic illusion, immediately before OT, and then the same OT programme as in sessions A(1) and A(2) was performed. Each session lasted 2 weeks. USN and activities of daily living (ADL) were evaluated at 2-week intervals by the Behavioural Inattention Test (BIT) and Functional Independence Measure (FIM), respectively.
この研究では6週間のマルチベースラインデザイン研究が用いられております.
研究デザインはA-B-Aデザインで,A期である基礎水準測定期には,通常の作業療法を行い,操作導入期であるB期には作業療法前に頸部筋群へ振動刺激を行い,その後に作業療法を行っております.
研究対象は半側空間無視を呈した脳卒中後急性期の右脳損傷患者11例となっております.
基礎水準測定期には通常の作業療法を1日1回40分,週5日実施しております.
操作導入期には作業療法の直前にクライアントの左頚部後筋群を5分間振動させ,運動錯覚の出現を確認せずに,基礎水準測定期と同様の作業療法プログラムを実施しております.
基礎水準測定期・操作導入期の各セッションは2週間行い,半側空間無視と日常生活動作能力について2週間間隔で,それぞれ行動不注意テスト(BIT)と機能的自立度評価(FIM)を用いて評価しております.
研究の結果
Significant increases in the total scores in both the conventional subtest and behavioural subtest of the BIT were only seen during session B. FIM scores increased significantly during both sessions A(1) and B.
BITの得点は操作導入期にのみ有意に改善しております.
FIMのスコアは第1基礎水準測定期と操作導入期の両セッションで有意に増加しております.
研究の結論
The application of neck-muscle vibration before OT may have positive effects on USN, but the specific effect on the improvement of ADL is not clear.
作業療法前の頸部筋振動の適用は半側空間無視の改善に有用である可能性がありますが, ADLの改善に具体的にどのような効果があるのかは不明であります
今回は頸部といった局所への振動刺激が脳卒中片麻痺例に生じる高次脳機能障害の1つである半側空間無視に与える影響を明らかにした研究論文を紹介させていただきました.
ADLへどのように汎化させるかといった課題は残りますが,BITには改善が得られており,半側空間無視に対する介入としては有効性は高そうですね.
コメント