整形外科医は人工股関節全置換術後の脱臼に関してどのくらい配慮すべきと考えているのか?

人工股関節全置換術
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整形外科医は人工股関節全置換術後の脱臼に関してどのくらい配慮すべきと考えているのか?

これまでもこのブログの中でTHA例における脱臼に関して取り上げてきました.

人工股関節全置換術(THA)後の脱臼~本質が理解できてないから制限が厳しくなる~
前回までは変形性股関節症例の理学療法について紹介させていただきました.今回からは人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty; THA)例に対する理学療法について考えてみたいと思います.人工股関節全置換術後の合併症として脱臼が挙げられますが,特に理学療法士教育においてはこの脱臼肢位に関して,過剰な指導が行われてきました.脱臼に関する過剰な指導は患者様のADLやQOLを低下させ,昨今においては「脱臼不安感」といった概念まで提唱される状況です.今回は理学療法士の脱臼に関する認識を少しでも変えるべく,人工股関節全置換術後の脱臼について考えてみたい思います.

理学療法士・作業療法士・看護師等による過度な脱臼に関する日常生活動作指導はクライアントの恐怖心を増大させ,QOLを低下させることが明らかにされてきております.

われわれ理学療法士・作業療法士としては人工股関節全置換術後の脱臼に関して整形外科医がどのように考えているのかといった点です.

今回は整形外科医に対して人工股関節全置換術後の脱臼に関して行われたアンケート調査に関する報告をご紹介させていただきます.

man in white dress shirt wearing white goggles

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ご紹介する論文

J Arthroplasty. 2018 Oct;33(10):3201-3205. doi: 10.1016/j.arth.2018.05.043. Epub 2018 Jun 6.

Variation in Use of Postoperative Precautions and Equipment Following Total Hip Arthroplasty: A Survey of the AAHKS and CAS Membership.

Carli AV1, Poitras S2, Clohisy JC3, Beaulé PE1.

今回ご紹介する論文は2018年に掲載された比較的新しい論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の背景

A traditional method to reduce dislocation risk following total hip arthroplasty involves prescribing postoperative precautions and ambulatory equipment to patients. The purpose of this study was to determine the prevalence of postoperative precaution and equipment use among North American arthroplasty surgeons for patients undergoing primary total hip arthroplasty.

THAの術後脱臼を減少させるために,古くから術後の脱臼指導と補装具の処方が行われてきました.

この研究では,北アメリカの整形外科医(関節外科医)が術後どのように脱臼への注意と補装具の処方を行っているかを調査することを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法

We conducted a survey of American Association of Hip and Knee Surgeons and Canadian Arthroplasty Society members using an electronic questionnaire format to determine how often precautions and equipment were prescribed, and whether their use was associated with surgical approach and other surgeon demographics.

American Association of Hip and Knee Surgeons and Canadian Arthroplasty Society に所属する整形外科医にメールにて調査を行っております.

実際にクライアントに対してどのように脱臼予防の指導を行っているか,また脱臼予防のために補装具を処方しているのかに関して調査が行われております.

さらに用いられている人工股関節全置換術のアプローチ,外科医の背景についても調査が行われております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結果

Of the respondents, 44% universally prescribed precautions while 33% never prescribed precautions. Use of the posterolateral approach, surgeon experience, and larger head size use were significantly associated (P < .01) with precaution and equipment use. Direct anterior approach surgeons were significantly less likely to prescribe precautions (P < .0001) and significantly less likely to prescribe equipment (P < .0001).

44%の整形外科医が脱臼予防のための日常生活指導を指導を行っている一方で,33%の外科医については脱臼に関して全く注意を行っていないといった結果でありました.

後側方アプローチの仕様,整形外科医の経験年数,大径骨頭の使用が脱臼予防のための日常生活指導を行うかどうかで有意な差を認めております.

DAA(前方アプローチ)を用いる整形外科医では脱臼予防のための日常生活指導や補装具の処方を行っている割合がが有意に少ない結果でありました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

Although postoperative precautions continue to be used to some degree by the majority of members, their consumption of healthcare resources through utilization of additional care providers and purchasing of equipment, known association with reduced patient satisfaction, and lack of supporting evidence make them a target for future scrutiny.

人工股関節全置換術後の脱臼指導については未だにある一定の割合で行われておりますが,過剰な指導や過剰な補装具購入について,そして患者満足度減少との関連に関してはまだ十分な科学的根拠がが少ない状況です.

今後この分野における調査が必要であると考えられます.

 

今回は整形外科医に対して人工股関節全置換術後の脱臼に関して行われたアンケート調査に関する報告をご紹介させていただきました.

理学療法士・作業療法士界隈でも人工股関節全置換術後の脱臼予防指導がどの程度必要かというのは最近話題になることが多いですよね.

ここ数年はどの論文を見ても,過剰な指導は不要と結論付けられている論文も増えてきておりますし,大径骨頭の使用などで早期脱臼が予防できることが多くなってきております.

ただ全くしなくてもよいかとなると,確率はゼロではありませんので…このあたりが非常に難しいところです.

いずれにしても理学療法士・作業療法士であれば●●はダメですといった後ろ向きな指導ではなく,●●はこういった方法で行ってくださいといった前向きな指導を行って脱臼を予防しながらQOLや満足度を下げないように介入したいものです.

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