改善すべきDuchenne歩行と改善すべきでないDuchenne歩行があるって知ってましたか?

変形性股関節症
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目次

PTが遭遇することの多いDuchenne歩行には複数のパターンが存在する

Duchenne(デュシェンヌ)歩行・Duchenne(デュシェンヌ)跛行・Duchenne(デュシェンヌ)徴候といえば,理学療法士が日常的に遭遇することの多い異常歩行の1つです.

股関節疾患はもちろんですが,膝関節・足部・腰部の問題がDuchenne(デュシェンヌ)歩行パターンを引き起こすこともあります.

理学療法士の中にはDuchenne(デュシェンヌ)歩行=中殿筋の筋力低下といった認識で仕事をされている方もいらっしゃいますが,実はDuchenne(デュシェンヌ)歩行にも複数のパターンが存在します.

実はこのDuchenne(デュシェンヌ)歩行のパターンによっても理学療法の内容というのは異なりますので,まずはDuchenne(デュシェンヌ)歩行の複数のパターンを見分けることが重要となります.

今回は,理学療法士が遭遇することの多いDuchenne(デュシェンヌ)歩行について考えてみたいと思います.

person walking on room

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Duchenne(デュシェンヌ)歩行とは?

釈迦に説法になりますが,まずはDuchenne(デュシェンヌ)歩行についてその定義をみてみたいと思います.

Duchenne(デュシェンヌ)歩行というのは,「立脚期に立脚側へ体幹が傾斜し,かつ骨盤の傾斜を伴う歩行」と定義されます.

変形性股関節症例では前額面上の臼蓋被覆を高めるためにDuchenne(デュシェンヌ)歩行を呈している方が多いですし,変形性膝関節症例では膝関節内反モーメントを軽減するためにDuchenne(デュシェンヌ)歩行を呈しているケースが多いと思います.

もちろん中殿筋等の股関節外転筋力低下によって立脚期に骨盤が反対側へ傾斜するのを代償するためにDuchenne(デュシェンヌ)歩行が出現するケースも存在します.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Duchenne(デュシェンヌ)歩行には複数のパターンが存在する

 

パターン1

左側の図のように骨盤の遊脚側傾斜を合併したパターンです.

これはいわゆるTrendelenburg徴候を合併したパターンです.

この歩行パターンでは腰椎下部(L5-S1)の側屈によって,体幹が立脚側へ傾斜し,骨盤は遊脚側へ傾斜します.

重要なのは立脚側の股関節は内転位にあるということです.

前額面上の臼蓋被覆の面から考えると,被覆率が低下しますので,大腿骨頭の外上方偏位を引き起こし,股関節への力学的負荷が増大してしまうことになります.

基本的にはDuchenne(デュシェンヌ)歩行はTrendelenburg徴候を代償するために起こっていることが多いので,まずはTrendelenburg徴候を引き起こす原因を考えることが重要となります.

最も多いのは中殿筋をはじめとする股関節外転筋力の収縮機能の低下です.

絶対的な筋力が低下している場合もあれば,筋出力発揮のタイミングが遅延している場合もあります.

この場合には,側屈に伴う腰仙移行部へのメカニカルストレスに加え,股関節内転に伴う股関節への力学的負荷が増大いたしますので,歩容の改善が重要となります.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パターン2

真ん中の図のようなパターンですが,この場合には体幹と合わせて骨盤も立脚側へ傾斜するというのがポイントです.

非常に重要なポイントは体幹と骨盤が立脚側へ傾斜しますので,股関節が外転位であるといった点です.

そのため前額面上における臼蓋被覆は増大し,股関節への力学的負荷は少なくなります.

またこの場合には,パターン1とは異なり,運動中心は股関節になりますので,腰椎の側屈は生じません

そのため腰椎や腰仙関節に対する力学的負荷も小さくて済みます

この場合には,二次的な腰痛に発生も比較的少ないことが多いです.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パターン3

右側の図のように骨盤が遊脚側へ移動するパターンです.

この場合には,体幹は重心を中心に立脚側へ傾き,骨盤は遊脚側へ移動することになります.

ここで非常に重要なポイントは,骨盤が遊脚側へ移動することによって立脚側の股関節は相対的に外転位になるといった点です.そのため前額面上における臼蓋被覆は増大し,股関節への力学的負荷は少なくなります.

運動の中心点は胸腰移行部の高さになります.

パターン3の場合にも,運動中心が胸腰椎移行部ですので脊椎関連の二次的な障害の発生が危惧されますが,このパターンの場合には,体幹の立脚側への側屈を骨盤の移動が代償しているため,実際に胸腰椎移行部にかかる負荷は弱くてすみます.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変形性股関節症の場合

変形性股関節症の場合には,パターン1の場合には理学療法介入によって早急に歩容改善を図ることが重要となります.

しかしながらパターン2・パターン3の場合には,股関節への前額面上での臼蓋被覆は増大しており,股関節症の進行予防を考える上では進行予防に寄与する歩行パターンといえると思います.

つまり同じDuchenne(デュシェンヌ)歩行といっても変形性股関節症そのものに与える影響を言うのが異なるということです.

理学療法士にありがちですが,すべての異常歩行を正常歩行に近づけるといった考えは捨てた方が良いです.

パターン2・3の場合には代償的な歩容を修正することが変形性股関節症を増悪させてしまう可能性もあります.

代償的な歩行にも意味がありますので,代償的な意味を考慮して理学療法を行う必要がありますね.

 

今回は,理学療法士が遭遇することの多いDuchenne(デュシェンヌ)歩行について考えてみたいと思いました.

Duchenne(デュシェンヌ)歩行のパターンを見極めたうえで適切な介入を行いたいものです.

コメント

  1. 島  より:

    大昔の事故が遠因でデュシャンヌ状態です。

    ・右膝痛
    ・右中臀筋萎縮(原因か結果かは不明)
    のため、右足着地時に無意識に右に傾け、更に無意識に安定性を確保する為に右脚を外旋(爪先を外側向きに)させています。

    質問ですが、帰宅後に「左側」の中臀筋が物凄く張っているのです。
    どんな時に、どんな代償をしているのかが気になります。
    心当たりがありましたら、お教え頂ければ幸いです。

    (一時期は通院もしておりましたが、最近は自己研究しております。)

    • ptotskillupnote より:

      こういったご相談は実際に医療機関を受診されて担当の医師や理学療法士に確認をされた方が良いと思います。お身体を診ていない私があまり間違ったことをお伝えしても問題ですのでご理解いただければ幸いです。

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