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なぜ認定理学療法士取得を目指す理学療法士が急増しているのか?
登録理学療法士制度が明らかとなり,理学療法士の業界を震撼させましたが,認定理学療法士・専門理学療法士制度が今後どうなるのかについてはまだ明らかではありません.
現在のところほとんどインセンティブの無い認定理学療法士制度ですが,実はここ数年で認定理学療法士取得を目指す理学療法士が急増しております.
今回はなぜ認定理学療法士取得を目指す理学療法士が急増しているのかについて考えてみたいと思います.
認定理学療法士はメリットがないから取得する価値が無い?
SNSをはじめとして,巷では認定理学療法士を取っても給与が上がるわけでもないし,現在のところ明らかなインセンティブが無いので時間をかけてまで取得する意味がないといったご意見をよく目にします.
私自身も認定理学療法士・専門理学療法士を取得しておりますが,現状ではほとんどメリットはありません.
資格を取得していることで何かしらのインセンティブがあったというよりは,資格を取得するための過程で自分自身が成長できたといったところが一番の取得におけるメリットでしょうか?
ただ自己研鑽であればこういった認定理学療法士・専門理学療法士を取得する以外にも方法はたくさんあります.
日本理学療法士協会のレールに乗らずに研鑽されている理学療法士も多く存在します.
残念ながら,現時点では認定理学療法士を取るための労力を考えると全く不要であると言われても致し方ありません.
ただあくまで「現状では」といった点にも注意が必要です.
認定理学療法士の資格取得者が急増している
ここ数年で認定理学療法士の資格取得者は急増しています.
現在の認定理学療法士資格取得者数は7,641名となっております.
また平成29年度・平成30年度は受験者数が2,000名を超え,合格者数も1,500~2,000名の単位で増加している現状です.
それまでの受験者数が1,000人程度で合格者数が500人ほどだったことを考えると,ここ数年の増加は異様です.
今後も1,000人単位で認定理学療法士が増え続ければ,数年後には認定理学療法士資格を有する理学療法士は10,000人を突破することでしょう.
なぜ認定理学療法士取得者が増えているのかを考えてみると,一番は理学療法士免許だけでは不安といったところが大きいのではないでしょうか?
理学療法士免許は国家資格ですが,以前のような国家資格としての希少価値はほとんどありません.
理学療法士国家資格取得者は20万人を超える勢いですし,給料も減少傾向にあります.
こういった現状に危機感を覚えた理学療法士が資格取得を目指しているというのが資格取得者増加の原因だと思います.
日本理学療法士協会の認定理学療法士制度に関する動き
まずは日本理学療法士協会は,「医療広告ガイドライン」に準じた「専門性資格認定団体」として認可されることを目標に制度化しております.
この医療広告ガイドラインにおける専門性資格認定団体としての認可されることによって,患者様やその御家族様あるいは住民自身が自分の病状等に合った適切な医療機関を選択することが可能となるように,患者等に対して必要な情報が正確に提供され,その選択を支援する観点から,広告が可能となります.
具体的には,「○○病院 運動器理学療法の専門理学療法士がいます」と広告ができ,患者数増加につながる可能性があります.
さらに日本看護協会のように,診療報酬に反映できるような制度構築を第2の目標として日本理学療法士協会は動きを進めております.
日本理学療法士協会の生涯学習制度におけるQ &A
日本理学療法士協会の生涯学習制度におけるQ &Aの中でこんな質問がありました.
研修を修了した理学療法士と修了していない理学療法士との何らかの差をつけるようなことはありますか?
これに対して日本理学療法士協会はこのように回答しております.
新制度では,前期研修・後期研修を生涯学習制度として運用予定です.
一定水準・一定期間のカリキュラムを修了後,登録理学療法士を維持し,理学療法士としての質を保証することが重要だと考えています.
将来的に登録理学療法士となることで,登録理学療法士でない会員との差が社会や勤務先での評価に反映されるような制度になることを望んで新制度を構築しています.
JPTA Newsにおける半田会長のコメント
さらにJPTA Newsの中で半田会長が以下のようにコメントしております(以下抜粋)
このメッセージが会員の方々に届くころには新しい生涯学習制度の輪郭をはっきりと示せることになります.
今回の改定では理学療法士の臨床能力をいかにして引き上げるかが焦点です.
これまでの新人教育をより重厚にして時間をかけることになりました.
そのための時間を後期3年・前期2年(5年間)としました.
年々理学療法士の臨床能力低下を危惧する声が高まっており,この状況は理学療法士の雇用不安に大きくつながるものと思っています.
療法士の供給が過剰になった時,単に就職浪人がでることに留まらず既卒者の身分保障に大きな影響が出ることが予測されます.
雇用者が給料の上がった経験者よりも,人件費の安い新人に興味を示すことは考えられます.
我々理学療法士の持っている商品は理学療法に関する知識と技術しかないのです.
消費者は価格が安くてよい商品を選ぶのは当然です.
質の良い理学療法(良い商品)を持った理学療法士は患者や利用者の必需品になります.
しかし質の悪い商品(理学療法)しか持ちえない理学療法士は消費社会にあって淘汰されるのは当たり前のことです.
理学療法士の供給過剰時代,これから先,理学療法士を生き残るためには,他の理学療法士よりも商品価値を高めることが最重要です.
理学療法士のライセンスに希少価値がなくなった今日,理学療法士の資格を基礎としてどのような理学療法士になりたいか,そこで自身の希少価値をいかにして高めるかを考えてどのようにキャリアを形成していくかがポイントです.
その基礎として本会の生涯学習制度を活用することをお勧めします.
そして目指すキャリアが確実に見えてきたら勇気をもって挑戦してください.
専門理学療法士や認定理学療法士の資格を所有することは他の理学療法士との差別化に有効と思います.
1981年のリスボン宣言にあるように,患者には選択の権利があります.
近い将来患者や利用者が理学療法士を選ぶ時代が来ます.
選ばれる理学療法士を目指してください.
このコメントをどのように捉えるかは様々だと思います.
ただ認定理学療法士が増えていることを考えると,日本理学療法士協会や半田会長の動きに,心を動かされている会員が多いのも事実だと思います.
半田会長が中医協専門委員に就任
またもう1点非常に大きいのが,2019年10月に日本理学療法士協会の半田会長が中医協専門委員に就任されております.
中医協というのは厚生大臣の諮問機関です.
健康保険や国民健康保険等の医療保険および老人医療の,診療報酬点数表といわれる療養に要する費用の算定方法は,厚生大臣が中央社会保険医療協議会(中医協と略称)に諮問し,その意見を聴いて定めることになっております.
中医協の委員は支払側委員8名,診療側委員8名,公益委員4名の3者で構成されます.
つまり中医協というのは診療報酬を決定する主要機関と考えても良いと思います.
どこまで診療報酬に関して意見が受け入れられるのかは不明ですが,意見できる立場に初めて理学療法士が立ったというのは非常に大きいのではないかと思います.
半田会長を信じて認定理学療法士や専門理学療法士,登録理学療法士を取得するかどうかは自分次第ですが,いずれにしても今後の動きから目が離せませんね.
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