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PT・OTも知っておきたい「いたします」の意味と使い分け
理学療法士・作業療法士も仕事の中でメールや文書を作成する機会は少なくないと思います.
メールや文書を作成する際に使用することが多いのが,「致します」「いたします」といった表現です.
日常的に何気なく使っている「○○いたします」という表現ですが,意外と言葉の意味や正しい使い方を知らない方も多いと思います.
今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい「致します」「いたします」の意味と使い分けについてご紹介させていただきます.
「いたします」は「します」より丁寧な表現
「いたします」は、「○○する」の謙譲語である「いたす」に,語尾の「ます」が結びついた敬語です.
相手へ敬意をはらい,「私が○○させてもらいます」,「私が○○させていただきます」と自分自身が率先する意味として使うことが多い敬語です.
例えば
- 「失礼します」⇒「失礼いたします」
- 「確認します」⇒「確認いたします」
- 「連絡します」⇒「ご連絡いたします」
とこんな感じです.
接頭語の「お」と組み合わせて使う言葉に「いたします」をつける場合もあります.
- 「お願いします」⇒「お願いいたします」
- 「お供します」⇒「お供いたします」
また「します」は,敬語ではありますが,相手への敬いや自分がへりくだっていないため敬語の分類としては「丁寧語」となります.
「いたします」と「させていただきます」の違いと使い分け
「させていただきます」は,自分の行動に対して相手から承諾してもらうことを前提に,許しを得るための言葉で「いい切り」の表現となります.
「相手に問いかけて,行動してもよいかどうかのイエス・ノーを求めるわけではなく,自分の行動を『○○しようと思う』という意味で表現します.
- 本日都合によりお休みいたします.
- 本日都合により休ませていただきます.
言葉や場面を考えることなく,丁寧な言葉だからとむやみに「させていただきます」を使うってしまうと,なんとなく違和感があったり,押しつけがましく感じ,相手に不快感を与えてしまうこともあります.
したがって「させていただきます」を多用しないようにすることも重要です.
「いたします」と「申し上げます」の違い
「申し上げます」の元の形は謙譲語「言う」に補助動詞の「あげる」,丁寧語の「ます」で、それらが組み合わさって一つの形になっています.
これに対して「いたします」は謙譲語「致す」に丁寧語「ます」がついた形です.
「いたします」と「申し上げます」はどちらもビジネスシーンで使用できますが,微妙なニュアンスの違いがあります.
- 申し上げます⇒送り手が動作の対象
- いたします⇒受け手が動作の対象
もし相手に何かを依頼したい場合,「お願い申し上げます」よりも「お願いいたします」の方が好まれるのはそのためです.
依頼した後は,相手が何かを行わなければならないため,相手(受け手)の動作が強められます.
そのため「いたします」を使った方が丁寧な表現に聞こえます.
一方で「申し上げます」は自分(送り手)の動作が対象になるため,「お詫び申し上げます」「御礼申し上げます」「お祈り申し上げます」などと使うことが多いです.
「いたします」と「致します」の違い
同じ「いたします」でも,ひらがな表記で使う場合と漢字表記で使う場合があります.
ビジネスシーンで一番目にする「よろしくお願いいたします」「よろしくお願い致します」では,前者のひらがなでの使い方が正解です.
「いたす」は前述のとおり「する」の謙譲語で補助動詞です.
一方で,漢字表記での「致す」は「届くようにする,至らす」という意味があり,動詞として使われます.
「よろしくお願いいたします」は「お願い」の補助動詞として「するの謙譲語のいたす」が付くため,ひらがな表記で使うのが正しいわけです.
漢字表記の「致す」は「私の不徳の致すところ」といったように「する」を動詞として使う場合に使用するのが正しい使い方です.
つまり「する」に動詞の意味が含まれる場合には,漢字表記の「致す」を,動詞の意味が含まれない場合には,ひらがな表記の「いたす」を用います.
今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい「致します」「いたします」の意味と使い分けについてご紹介させていただきました.
あまり知られていない「いたします」の使い分けですが,使用頻度も高いのできちんと整理しておきたいですね.
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