長期臥床および抗重力活動が筋特性に及ぼす影響

介護予防
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 長期臥床および抗重力活動が筋特性に及ぼす影響 

前回は加齢に伴う筋機能の変化についてご紹介させていただきました.

われわれ理学療法士・作業療法士が対象とするクライアントの多くが何らかの筋力低下を呈していることが多いわけですが,筋力低下の原因には加齢に加えて廃用性の機能低下の影響も無視できません.

今回は長期臥床および抗重力活動が筋特性に及ぼす影響について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 長期臥床が筋特性に及ぼす影響 

筋量は,加齢に伴う退行性変化のみならず,無重力状態(長期臥床)や歩行などの抗重力活動の程度によっても変化します.

例えば起居・移動動作をまったく行わないベッドレスト状態にすると,ベッドレスト7日後という早期から大腿四頭筋の筋萎縮がみられることが報告されております.

高齢女性における体幹筋の筋萎縮と日常生活動作との関連性について検討した報告をご紹介いたします.

この研究では若年女性,高齢女性を自立群(起居・移動動作が自立している高齢者)と長期臥床群(起居・移動動作に介助を要し,自力座位保持も不可能である長期臥床高齢者)に分類し,腹横筋と多裂筋の筋厚について比較をしております.

その結果,若年女性と高齢自立群との間に有意差が認められなかったのに対して,高齢長期臥床群では若年女性や高齢自立群よりも有意に低い値を示したと報告されております.

腹横筋や多裂筋は脊椎の安定性に作用し,姿勢保持において非常に重要な役割を担っています.

脊椎中間位で姿勢を保持するのに必要なこれら体幹筋の筋活動量は最大収縮の1~3%で十分とされており,生活が自立している高齢女性では日常の姿勢保持におけるわずかな筋収縮の持続により腹横筋や多裂筋の筋量を維持できるわけです.

一方で長期間臥床すると,これらの体幹深部筋は萎縮し,筋量を維持できないことになります.

 

 

 

 

 

 抗重力活動が筋特性に及ぼす影響 

高齢女性の下肢筋の筋萎縮と歩行自立度との関連性について,高齢女性を歩行自立群と歩行不可群(歩行困難で半年以上歩行していない高齢者)に分け,若年女性に対する筋厚低下率を求めた報告によると,歩行不可群で特に外側広筋,大腿直筋,中間広筋の筋厚低下率が78.2~83.0%と著しく高い値が示されております.

すなわち,歩行が困難となり歩行などの抗重力活動を長期間実施していない高齢女性では,下肢筋の特に大腿四頭筋の廃用性萎縮が著しく進行することが示唆されます.

 

 

 

 

 

 身体活動量が筋特性に及ぼす影響 

筋委縮を考える上では自立度のみならず身体活動量も重要な要因となります.

日常のメカニカルな負荷は筋量や筋力に影響を及ぼし,高齢者で特に筋量や筋力の個人差が拡大する傾向があり,歩数や外出頻度などの活動量が高齢者の下肢筋量や下肢筋力に影響を及ぼすことが知られております.

地域在住高齢者を身体活動量が多い高活動群と身体活動量が少ない低活動群に分け, 4年後の大腿四頭筋の筋特性(筋厚および筋輝度)を追跡調査した報告によると,筋輝度から評価した筋の質は高活動群のみ改善が認められ,さらに身体活動による2群を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,筋厚と筋輝度の変化率がともに有意な因子として抽出されております.

この結果から考えると,身体活動は高齢者の筋量および筋の質の維持.改善に寄与していると考えられます.

 

 

 

 

 

 筋量維持に必要な歩行量とは? 

身体活動量が筋の量・質の維持・改善に重要であることはご理解いただけたと思いますガ,そうなると気になるのがどのくらい身体活動量を増加させれば筋量を維持できるのかといった点です.

地域在住高齢者を対象に1日あたりの歩行量と筋量を数年間追跡調査した研究報告によると,ウォーキングのみで筋量を維持するためには,1日に7,000~8,000歩あるいは速いペースで15~20分歩く必要があることが明らかにされております.

厚生労働省が1日当たり8,000~10,000歩の歩行を推奨しているのもこの研究結果から考えるとうなづけるわけです.

 

今回は長期臥床および抗重力活動が筋特性に及ぼす影響について考えてみました.

われわれ理学療法士・作業療法士は廃用性機能低下を予防するためにクライアントに対して動きましょう,身体活動量を増やしましょうといった指導をすることが多いと思います.

今回ご紹介させていただいたようなデータを用いながら,客観的に高齢者に運動指導を行っていけるとよいと思います.

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