厚労省から出されたPT・OT養成改訂案

臨床実習・国家試験
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2018年10月9日に日本理学療法士協会のホームページに「理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン/理学療法士作業療法士臨床実習指導者講習会の開催指針」に関する記事が掲載されておりました.

今回はこの記事について,特に重要な変更点を見ていきたいと思います.

 

理学療法臨床実習サポートブック [ 岡田慎一郎 ]

目次

   改訂の趣旨   

はじめに今回の養成施設指導ガイドライン改訂の趣旨が記載されております.

この趣旨を見ると,高齢化や地域包括ケアシステムの構築等により,理学療法士・作業療法士に求められる役割や知識等が大きく変化してきていること,学校養成施設のカリキュラムについて臨床実習の実施方法や評定方法が各養成施設で様々である実態を踏まえ,ガイドラインを改訂することになったと記載されております.

また合わせて臨床実習の在り方の見直す必要性についても言及されております.

これまでは理学療法士及び作業療法士法(昭和 40 年法律第 137 号)第 14 条の規定に基づいて,養成が行われてきたわけですが,そもそも40年以上もこの法律にメスが入れられなかったのが不思議なくらいです.

やはり時代に合わせて法も変わる必要があるということですね.

 

 

 

 

 

   改訂の概要   

改訂の大きなポイントとしては理学療法士・作業療法士学校養成施設指定規則(昭和 41 年文部省・厚生省令第3号)に定める教育内容や専任教員の要件が挙げられます.

 

 

 

 

 

 

   カリキュラム変更   

平成 32 年度に入学生から現行のカリキュラムに以下のカリキュラムを加え,総単位数を現行の 93 単位以上から 101 単位以上に引き上げます

追加カリキュラムとして基礎分野では「社会の理解」の科目が新設され, 専門基礎分野では「疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進」の科目において「栄養・薬理・医用画像・救急救命及び予防の基礎」が追加となります.また「保健医療福祉とリハビリテーションの理念」の科目においては,「自立支援・就労支援・地域包括ケアシステム及び多職種連携の理解」が必修となり, 専門分野では「理学療法管理学」及び「作業療法管理学」の科目が新設されます.

さらに「理学療法評価学」及び「作業療法評価学」の科目においては「医用画像の評価」が必修となり,「理学療法治療学」及び「作業療法治療学」の科目において「喀痰等の吸引」も必修となります.

 

 

 

これだけ見ると本当に今の時代に合ったカリキュラムになるなといった印象を受けます.

理学療法士・作業療法士はこれまでリハビリテーションに関連する内容の学習にとどまっていたわけですが,これまでの理学療法士・作業療法士に欠けていた栄養・薬理・医用画像・救急救命といった内容が追加されたのは非常に大きいと思います.

また以前から問題となっている喀痰の吸引や今後必須となる地域包括ケアシステム等,今求められる理学療法士・作業療法士像がこのカリキュラムに反映されているといった印象を受けます.

 

 

 

 

また個人的に気になるのは8単位の引き上げです.

現行でも3年制の養成校はぎりぎりの中でカリキュラムを組んでいる養成校が多いのですが,この単位数の増加によってカリキュラムの作成に苦労する3年制養成校は多いでしょうね.実質の3年制養成校つぶしとも考えられます.

 

 

 

さらに臨床実習については1単位を40時間以上の実習をもって構成することとし,実習時間外に行う学修等がある場合にはその時間も含め45時間以内とすることといった要件も追加されております.

つまり自宅での学習は1時間以内にしなければなりません.

基本的にはOJTですべてを終えなさいということです.忙しい職場ではOJTなんてとても無理でしょうから,学習時間を削るほかないわけですが,これが本当に理学療法士・作業療法士の質の向上につながるのかは疑問ですが,先日もご紹介した理学療法士・作業療法士実習生の自殺が絶えないといった実情を踏まえると仕方ないのかもしれませんね…

 

 

 

 

 

   専任教員の要件の改定   

専任教員の要件をが現行の免許を受けた後5年以上理学療法(作業療法)に関する業務に従事した者から,5年以上理学療法(作業療法)に関する業務に従事した者であって,指定する講習会を修了したもの等とすると変更されます.

 

さらに教員は一つの養成施設の一つの課程に限り専任教員となるものとする,専任教員は専ら養成施設における養成に従事するものとする,専任教員は臨床に携わるなどにより臨床能力の向上に努めるものとするといった文言も追加され,教員も臨床に携わることが義務付けられております.

 

教員の質を向上させるために,要件が追加された形ですね.中でも臨床能力の向上に努めるといったところが大きいですね.実際に臨床を離れて長い教員も少なくありませんからね…

 

 

 

 

 

   実習指導者の要件の改定   

現行の制度では実習指導者は免許を受けた後3年以上業務に従事した者であることが唯一の臨床実習指導者の要件だったわけですが,免許を受けた後5年以上業務に従事した者であり,かつ次のいずれかの講習会を修了した者であることといった要件が追加されました.

 

  • 厚生労働省が指定した臨床実習指導者講習会
  • 厚生労働省及び公益財団法人医療研修推進財団が実施する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士養成施設教員等講習会
  • 一般社団法人日本作業療法士協会が実施する臨床実習指導者中級・上級研修

 

ちなみに見学実習については,養成施設の教員及び臨床実習指導者の要件を満たしていないが免許を受けた後 5 年以上業務に従事した者を指導者とすることができるとされており,講習会を受講した指導者でなくとも指導を行うことができるようです.

 

 

 

 

 

   実習施設の要件の改定   

臨床実習を行う実習施設については,現行の「病院又は診療所」から「医療法第1条の2第2項に規定する医療提供施設(薬局及び助産所を除く)」とし,実習時間については、現行の「実習時間の3分の2以上は病院又は診療所において行うこと」から「実習時間の3分の2以上は医療提供施設において行うこと

また医療提供施設において行う実習時間のうち2分の1以上は病院又は診療所において行うこと.通所リハビリテーション又は訪問リハビリテーションに関する実習を1単位以上行うこと」とする要件が追加となります.

 

実習地確保がますます大変になりそうな要件ですね.脆弱な養成校であれば養成校存続の危機さえあると思います.

 

 

 

 

 

   臨床実習の形式について   

現行の制度では実習形式に関する要件は何もないわけですが,新しいガイドラインでは臨床実習の形式について評価実習と総合臨床実習については,実習生が診療チームの一員として加わり,臨床実習指導者の指導・監督の下で行う診療参加型臨床実習が望ましいと謳われております.

つまりガイドライン上もクリニカルクラークシップ形式での実習が推奨されているわけです.

 

実践理学療法スーパーバイズマニュアル 写真で学ぶ臨床実習のポイント

 

 

 

 

今回は10月9日に日本理学療法士協会のホームページに掲載された「理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドライン/理学療法士作業療法士臨床実習指導者講習会の開催指針」に関して考えてみました.

これまでの流れを考えれば妥当なガイドラインの改訂だと思いますが,これを機に実習を受けないといった施設も増えるのではないかと危惧しております.

 

また今回の改定は実質上の3年制養成校つぶしの第1歩とも考えられます.どこの養成校も実習先の確保と合わせて実習先の指導者の理解を得ることに苦慮しそうですね.

 

 

 

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