理学療法士・作業療法士の実習において,臨床実習指導者が実習生に望むものというのは専門職としての高度な知識・技術なのでしょうか?おそらくほとんどの臨床実習指導者というのは実習生に専門職として高度な知識や技術を求めておりません.どちらかちというと学ぶ姿勢であったり,社会人としての一般的な態度が臨床実習でもっとも求められる資質であったりします.今回は臨床実習において,臨床実習指導者が臨床実習生に何を望んでいるのか,こういった視点で考えてみたいと思います.
目次
ある職場の調査によると
ある職場の調査によると,資格を有する理学療法士に「臨床実習を受ける実習生に何を一番望みますか?」と質問をすると,結果として「実習生としての心構えや態度」,そして「クライアントに対する配慮」といった,いわば一般常識とも言える資質を求めるといった回答が得られております.この中で臨床実習者は臨床実習生に求めるものとして接遇面に関する事項を上位に挙げるものが多いといった結果でありました.
実習生としての心構えや態度とは?
臨床実習指導者が求める実習生としての心構えや態度というのはどのようなものでしょうか?例えば学生らしい謙虚さが備わっているか,見学中の報告・連絡・相談の徹底であったり,基本的な挨拶ができるかどうか,実習中に居眠りをしないか,提出物の締切を守れるかどうかといったところです.臨床実習生からすれば,こんな当たり前のこと誰でもできるよと感じるかもしれませんが,臨床実習といった特殊な環境では,こういったごくごく当たり前のことができない実習生が多いのです.提出物の締切に関しては,昔から理学療法士・作業療法士の実習では症例レポートが課されることが多いので,この症例レポートの締切が間に合わないといった学生は少なくありません.最近はクリニカルクラークシップ形式での実習が主流になっておりますので,課題そのものが少ないまたは課せられない実習施設も増えていると思いますが,いずれにしても社会人になれば期限というのは必ず遵守しないといけないわけです.計画的に課題を作成する中で期限まで間に合いそうになければ,事前に指導者に相談して期限を延長してもらうとかそういった態度が重要です.また学生の中には何も提出することなく間に合いませんでしたとだけ報告する学生も見受けられますが,ここまではできましたがここでうまく考えがまとまらなくて期限に間に合いませんでしたとか,そういった形での報告が理想です.こういった報告であれば,臨床実習指導者としても指導の行い様があるわけですが,何も提出されなければ指導のしようがありません.
また実習生に求められる心構えや態度の中には,積極的に学ぶ姿勢,話を聞こうとする態度というのも求められます.ほとんどの臨床実習指導者は実習生にいろいろな臨床的なことを伝えたいと思っています.ただ実習生が何がわからないのかが理解できなかったり,話をしてもリアクションが薄く学ぼうとする姿勢が見られなければ,指導したいといった気持も萎えてしまうわけです.
実習生としてのクライアントに対する配慮とは?
臨床実習指導者が求める実習生に臨む資質として実習としての心構えや態度以外にも,クライアントに対しての配慮が挙げられます.例えばクライアントの立場になって,身体機能面だけでなく精神面への配慮をしてほしいとか,疾患や病気だけではなくクライアントを人として見るべきであるとか,クライアントの人格や人としての個性を重視してほしいとかそういった資質が求められるわけです.実習生を受け入れる側としては,実習生が原因でクライアントに失礼があったり,治療者としての臨床実習指導者とクライアントとの信頼関係が崩れてしまうことは絶対に避けたいわけですので,実習生としてクライアントに十分な配慮ができるかどうかといった面は非常に重要になります.
クライアントは医療者にどういった対応を求めているのか?
実習生としてクライアントに対して適切な配慮を行うためには,クライアントが医療者に何を求めるかを理解しておくことも重要です.
- 自分の不安や痛みを理解してくれる
- 優しく対応してくれる
- 気持ちを受け止めてくれる
- プライバシーに配盧してくれる
- 清潔感ある身だしなみをしている
- いたわりの言葉をかけてくれる
といった対応です.
クライアントが失望する対応としては以下のようなものが挙げられます.
- 事務的に対応される
- 表情や口調が冷淡である
- 質問したら手が離せないと軽くあしらわれた
- 目が合っても声かけしてくれない
といった対応です.
実は多くのクライアントというのは高い専門性や高い治療技術というのを一義的に求めているわけではないのです.これは専門職としてはさみしい気がするかもしれませんが,まずはこういった基本的なベースの上に専門性や高い技術がのっかっているのだということを認識する必要があります.臨床実習指導者が臨床実習生に望む資質と同様に,クライアントも医療者へ知識や技術といった専門的な要素よりも,基本的な接遇面での姿勢を求めているわけです.
実践理学療法スーパーバイズマニュアル 写真で学ぶ臨床実習のポイント
今回は臨床実習において,臨床実習指導者が臨床実習生に何を望んでいるのか,こういった視点で考えてみました.臨床実習では専門職として高度な知識や技術よりも,学ぶ姿勢であったり,社会人としての一般的な態度が求められます.かといって専門職として学習が不要という意味ではありません,社会人としての基本的な姿勢・態度をベースに,その上に専門性があるのだといった認識が必要です.
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