前回までは変形性股関節症例における理学療法評価について紹介させていただきました.
今回からは実際の理学療法治療に関して考えてみたいと思います.
まずは最近,変形性股関節症例における保存療法として注目されている「貧乏ゆすり」に関して,その有用性と関節症治療の機序を考えてみたいと思います.
目次
貧乏ゆすり(Jiggling:ジグリング)とは?
変形性股関節症例における保存療法として注目されているのが「貧乏ゆすり(Jiggling)」です.
ジグリングというのは柳川リハビリテーション病院の名誉院長 井上明生先生が考案した保存的治療法の一つで,テレビでも多数報道され,非常に大きな反響が寄せられました.
貧乏ゆすり(ジグリング)は1978年にカナダの整形外科医であるソルター博士が行った「関節に負担をかけない持続的な摩擦運動が,軟骨の再生を促進する」といった,ラットを対象とした動物実験の結果に基づく運動療法です.
貧乏ゆすり(ジグリング)によって関節軟骨に刺激を与えることで,硝子様軟骨の再生および関節裂隙の開大効果が期待できます.
関節軟骨には血管・神経・リンパ管は存在せず,滑液によって栄養されているわけですが,この滑液による栄養が貧乏ゆすり(ジグリング)によって促進されると考えられています.
貧乏ゆすり(ジグリング)のアイディアの元になったのは,CPM(Continuous Passive Motion)です.CPMというと膝関節の術後に癒着予防として用いられる機器ですが,持続的に関節を運動させるといった点ではジグリングとCPMは確かに似てますね.
われわれの体の中には実に250を超える関節が存在すると言われておりますが,人体の中で唯一,変形性関節症が起こらない関節があります.
それは肋椎関節・胸肋関節です.
この肋椎関節・胸肋関節の大きな特徴は呼吸によって,常に関節運動が起こっているといったところです.実に1日に23,000回の関節運動が起こっていることになります.
どうやら1日に20,000回を超える関節運動を行うことができれば,変形性関節症を予防することが可能だということです.
自己でジグリングを行うと20,000回を達成するには4時間30分もの時間が必要なわけです.
とても無理ですよね.ジグリングを行う機器を使用すれば約2時間で達成可能なわけです.
このジグリング機器も高額で数万円するものが多いのですが,この機器を使用することで関節軟骨が再生し,関節裂隙が開大したといった方も少なくないようです.
数万円もかかる機器ですので患者様に購入を勧めるのも勇気がいりますが,われわれ理学療法士にとって重要な視点は関節を持続的に可動させることが変形性関節症の予防につながるのだといった点です.
長期の臥床を強いられた患者様に関節痛が出現するのは,不動によって滑液による関節軟骨の栄養が阻害されるためです.関節痛を予防するためには関節を動かすことが重要なのですね.
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参考文献
1)広松聖夫, 井上明生:【股関節をめぐる最新の進歩】股関節手術 最新の話題 貧乏ゆすり(Leg jiggling)は軟骨再生に有効か? Bone Joint Nerve3: 475-482, 2013
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