変形性股関節症の理学療法評価~評価項目を挙げなさいと言われたら~

変形性股関節症
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前回までは変形性股関節症の疫学変形性股関節症の分類変形性股関節症のX線の診方について紹介させていただきました.今回は臨床実習でも重要となる変形性股関節症の理学療法評価について考えてみたいと思います.特に臨床実習では指導者から「明日から変形性股関節症例の評価を行ってもらうから,評価項目を考えてきてね」等と課題を出されることも少なくないと思います.私の考える変形性股関節症例における理学療法評価を挙げてみました.

1.現病歴

2.職業歴・生活歴

3.画像所見

4.疼痛

5.形態測定(下肢長・周径)

5.関節可動域・筋長テスト

6.筋力

7.姿勢分析(臥位・坐位・立位)

8.動作分析

9.日常生活動作能力(ADL)

10.住環境

 

まだまだあるかもしれませんが基本的にはこんなところでしょうか?

1.現病歴

疼痛が出現し始めた時期や現在までの経過を確認しましょう.幼少期から股関節に何らかの問題があったのであれば二次性股関節症に分類できるタイプの股関節症だと考えられますし,高齢になってから股関節痛が出現し始めたのであれば一次性股関節症の可能性が高いです.変形性股関節症は,経過が長いほど軟部組織の機能破綻が大きくなりますので,症状出現がいつからなのかを確認することが重要です.転倒などをきっかけに外傷性の変形性股関節症を発症しておられる場合と寛骨臼形成不全によって比較的若い頃から股関節に問題を抱えていた場合には,理学療法の考え方も大きく異なるものとなります.

2.職業歴・生活歴

特に二次性股関節症例は40歳代・50歳代と若い方も多いので,お仕事の内容を確認することも非常に重要となります.お仕事や日常生活の中で股関節に負担のかかる動作が無いかを確認することがポイントです.

3.画像所見

X線の診方については以前の記事でもご紹介いたしましたが,前期・初期・進行期・末期いずれの股関節症の病期に当てはまるのかを把握することが重要です.また骨棘による代償がどの程度できているのか,大腿骨頭の亜脱臼の程度はどのくらいか,関節裂隙はどのくらい保たれているのか等,画像から得られる情報は非常に多いです.

4.疼痛

疼痛の評価にはVAS(Visual Analogue Scale)やNRS(Numerical Rating Scale)等が用いられますが,疼痛の強さと合わせて疼痛の部位を聴取することが重要です.変形性股関節症例に多い疼痛部位としては鼠径部や大腿外側部の疼痛が挙げられますが,腰痛や膝痛など隣接関節へも疼痛が波及していないかどうかを確認することが重要です.また関節由来の疼痛なのか二次的に生じた筋をはじめとする軟部組織由来の疼痛なのかを見極めることも非常に重要となります.

5.形態測定(下肢長・周径)

大腿骨頭の外上方偏位や大腿骨頭の圧潰があれば,脚短縮をきたしている場合が少なくありません.この場合には棘果長(SMD)に左右差を認める場合が多く,一方で大腿骨大転子~脛骨外果を測定する転子果長(TMD)には左右差を認めない場合が多いです.また合わせて測定しておきたいのが臍果長(さいかちょう,UMD)です.臍果長は臍から脛骨内果までの距離を測定しますが,股関節内外転拘縮や腰椎の変形によって骨盤傾斜が見られれば臍果長に左右差を認める場合が多いです.周径については大腿長や下腿長を測定します.疼痛により罹患側へ十分に荷重ができない状況が続くと,大腿部の筋群にも萎縮が見られることが多く,大腿周径にも左右差が生じていることもあります.一方で変形性股関節症例においては下腿三頭筋に萎縮が見られることは比較的少ないのが特徴です.これは股関節で発揮すべき伸展モーメントを下腿三頭筋で代償していることが多いためと考えられますが,踵接地を避け爪先接地で歩行しているような症例の場合には下腿三頭筋の萎縮が認められないケースも少なくありません.

5.関節可動域・筋長テスト

関節可動域については股関節はもちろんですが,胸腰椎の可動域や膝関節の可動域といった隣接関節の可動域を確認しておくことが重要です.以前の記事でもご紹介いたしましたが,脊椎の可動性が変形性股関節症の進行に関連することも明らかにされておりますので,脊椎の可動性を確認にしておくことが重要です.可動域に加えてThomas test・Ober test等の筋長テストを実施して,短縮している筋を特定することも重要です.

6.筋力

筋力については股関節周囲筋に加えて,体幹筋群,膝関節周囲筋の筋力を測定する必要があります.変形性股関節症例では特に大腿骨頭の圧潰や外上方偏位によって中殿筋の静止張力が低下している場合が多いので,股関節外転筋群の筋力低下が目立つ場合が多いです.また関節を安定させる筋として重要な腸腰筋・小殿筋・深層外旋六筋といったいわゆるインナーマッスルの機能低下についても合わせて評価をしておくと良いでしょう.

7.姿勢分析(臥位・坐位・立位)

姿勢については臥位・坐位・立位の姿勢を観察します.以前の記事でもご紹介いたしましたが,一次性股関節症例と二次性股関節症例では呈する姿勢が異なりますので,姿勢から股関節症のタイプを判断するヒントを得ることもできるでしょう.

8.動作分析

主には立ち上がり・歩行を中心に股関節内転モーメントを増大させる歩行パターンを呈していないか,股関節の可動域制限や筋力低下をどのように代償しているかを観察します.

9.日常生活動作能力(ADL)

特に股関節の大きな屈曲可動域を必要とする更衣動作(靴・靴下の着脱を含む),爪切り動作,しゃがみ動作等が制限されやすいので,どの程度実施できているかを確認するとともに,どのように代償して動作を行っているかを核にしていくことが重要です.

10.住環境

住環境については基本的には和式スタイルの環境よりも洋式スタイルの環境が勧められます.環境面で股関節に負担のかかる環境が無いかを評価することが重要となります.

 

今回は変形性股関節症例における理学療法評価について必要な評価項目を挙げてみました.各項目の評価の詳細は今後の記事でご紹介させていただきますのでお楽しみに!

 

 

コメント

  1. […] 前回までは変形性股関節症例における理学療法評価について紹介させていただきました. […]

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