変形性股関節症の分類~変股症といってもタイプは様々~

変形性股関節症
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前回は変形性股関節症の疫学について紹介させていただきました.今回は変形性股関節症の分類と分類ごとの理学療法アプローチについて考えてみたいと思います.

変形性股関節症は大きく分類すると一次性股関節症と二次性股関節症に分類されます.欧米では圧倒的に一次性股関節症が多いわけですが,本邦では先天性脱臼や臼蓋形成不全を基盤とした二次性股関節症が多い(80%)とされます.近年は食習慣の欧米化や高齢化に伴い一次性股関節症も増加している状況です.ちなみに変形性膝関節症の場合には,一次性関節症が圧倒的に多く,股関節症と膝関節症では逆の傾向にあると覚えておくと良いでしょう.

目次

一次性股関節症

一次性変形性関節症は特に股関節に形態的な問題が無く,原因は明らかではありませんが,加齢に伴って起こる関節症です.比較的高齢な方(70~80歳代)が多く,肥満による関節への負担も一次性股関節症の原因となります.理学療法士にとっては一次性股関節症を考える上では,腰椎・骨盤のアライメントに着目することが非常に重要です.

一次性股関節症の場合には左の図のように胸腰椎が後彎し,それに伴って骨盤が後傾した姿勢をとっていることが多いです.骨盤の後傾により矢状面上における臼蓋被覆が低下し,そのために股関節症が引き起こされるということになります.当然ながら臼蓋被覆の低下に加齢等の要因が複雑に重なることで股関節症を発症するということではありますが,発症を予防する上では,姿勢に着目することが重要だと言えるでしょう.

胸腰椎後彎変形⇒骨盤後傾⇒臼蓋被覆↓⇒一次性股関節症発症

二次性股関節症

前述したように日本人は先天性股関節脱臼や寛骨臼形成不全,または骨折等の外傷に引き続いて起こる二次性股関節症が一次性股関節症に比較して圧倒的に多いのです.そのうえ二次性股関節症の約8割は寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)が現任で起こっている者だと考えられております.

寛骨臼形成不全(以前は臼蓋形成不全と呼ばれることが多かったです)というのは,その名の通り形態的に寛骨臼の被りが浅い状態を指します.上の図でも右側の正常股関節では寛骨臼が十分に骨頭を覆っておりますが,左側の寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)では寛骨臼の被覆が浅いことがわかります.このように寛骨臼の被覆が浅い状態であれば,荷重に伴い大腿骨頭が外上方へ亜脱臼してしまうのも納得していただけると思います.

二次性股関節症の場合には矢状面上における臼蓋被覆の低下を,下の図のように骨盤を前傾させることで代償しようとします.

通常,関節窩(寛骨臼)は楕円に近い半球状になっており,後面部は深い作りになっていて骨性支持が高くなっているのですが,前面部は浅く骨性支持が低くなっています.構造上,大腿骨頭前面の臼蓋被覆率が低いわけですが,骨盤を前傾させることで臼蓋被覆を増加させることができます.

骨盤を前傾させると腰椎は前彎することになりますので,二次性股関節症例では腰を反ったような姿勢で歩行をしている症例が非常に多いのが特徴的です.

 

 

一次性股関節症の場合には胸腰椎の変形が股関節症発症の一つの原因になっておりましたが,二次性股関節症の場合には,脊椎のマルアライメントは股関節症の進行を予防するための代償的な反応だということになります.

寛骨臼形成不全⇒臼蓋被覆↓⇒二次性股関節症発症⇒代償的な骨盤前傾・腰椎前彎

 

 

同じ変形性股関節症でも一次性股関節症と二次性股関節症では脊椎に生じているマルアライメントが股関節症の原因になっている場合と,代償的な反応になっている場合があるということをわかっていただけたと思います.ですので一次性股関節症における脊椎後彎変形はわれわれ理学療法士が積極的に介入を行い,胸腰椎後彎・骨盤後傾を改善する必要があります.一方で二次性股関節症例における骨盤前傾・腰椎前彎といった反応は股関節症の進行を遅延させる代償的な反応であると考えれば,安易に腰椎の前彎を減少させるためのアプローチを行うことはできないということになります.

 

 

 

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