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脊椎圧迫骨折の整形外科的治療~コルセットを装着すると腹筋が弱くなる?~
前回は脊椎圧迫骨折の診断方法についてご紹介させていただきました.
診断がつけばあとは治療ということになります.
今回は脊椎圧迫骨折の整形外科的治療と理学療法の流れについて考えてみたいと思います.
脊椎圧迫骨折の整形外科的治療
脊椎圧迫骨折後の整形外科的治療は大きく分類すると保存療法と手術療法に分類されます.
保存療法
保存療法の場合にはコルセットを装着し,脊椎を伸展位に保ったまま歩行や日常生活動作の練習を行うのが一般的です.
コルセットには様々な種類がありますが,右側へ進むほど固定力は強くなります.
一方で固定力が強くなればなるほど患者様の不快感の訴えも強くなる点に注意が必要です.
一般的には軟性コルセット(ダーメンコルセット)が処方されることが多いです.
不安定性が強い場合には半硬性コルセットや硬性コルセットが作成されます.
破裂骨折例の場合には,軟性コルセットよりも硬性コルセットを作成する場合が多いです.まれに遅発性神経麻痺が起こるような症例ではベーラーギプス(ちなみにギプスはドイツ語(Gips)です)を作成することもあります.
コルセット装着のポイント
- 脊椎が伸展位となる臥位または立位で装着
- コルセットの下に肌着を着る
- 上前腸骨棘をコルセット下部が覆うことが重要
- 上前腸骨棘のバンドをまずはしっかりと締め,その後他のバンドを固定する
- トイレ動作でコルセットが邪魔にならないようコルセットの上にパンツを履く
- 女性で胸部が痛い場合は薄いタオルを挿入(胸椎圧迫骨折)
- 必ず苦しいと訴えるので必要性を十分に説明
- 胸腰椎屈曲動作や回旋動作が禁忌であることを指導
コルセット装着の手順
①背臥位でベッドの手前に対象者を移動(スペースを作る)
②側臥位としてコルセットをかぶせる(ダーメンコルセットでは上下を確認しコルセットの長軸で脊椎を挟むように位置させる)
③コルセットの半面を体幹の下方に押し込む
④体幹が回旋しないように背臥位となる
⑤コルセットの位置を修正した上でベルトを締める
コルセットを装着すると腹筋が弱くなる?
昔からこういったうわさってよく聞きますよね?
コルセットを装着することによって腹筋などが筋力低下を起こすというエビデンスというのは実はいまのところありません.
ただコルセットが腰痛を予防できるか否かについても一定の結論が出ていない状況です.
予防に関しては現在のところ,以前に腰痛を経験していない人の予防にはならないが,再発予防には有効な可能性があるといったところのようです.
胸腰椎圧迫骨折の場合には,胸腰椎にかかる負荷の大きさとその蓄積が腰痛の発症リスクとなりますので,腰部に負荷のかかる活動をするとき|こ限定して使用するのが適切な使い方だと考えます.
もちろん,急性期で被刺激性の高い患者さんで, コルセットがなければまったく活動できないという場合には,一定の期間装着することは活動性を維持するためにも必要ではないでしょうか.
したがって胸腰椎圧迫骨折後に,腹筋の筋力が低下するからコルセットの装着に対して否定的な意見を言うといった理学療法士はナンセンスなわけです.
手術療法
近年,脊椎圧迫骨折に対する手術療法として,経皮的圧迫骨折椎体形成術(Balloon Kyphoplasty:BKP)が行われるようになってきております.BKPは透視下に椎体を経皮的に穿刺して穿刺針を通して骨セメント(PMMA = polymethylmethacrylate)を注入し,骨折した椎体の中で風船を膨らませることにより,潰れた椎体を整復する手術です.
この手術は認定病院での手術実習を受講し,試験に合格した医師のみが実施できる手術なので,残念ながらまだ一部の医療機関でしか実施されておりませんが,一般的には圧迫骨折による疼痛軽減効果が保存療法に比べて大きく,脊椎後彎変形に改善が得られますので,姿勢の改善も期待できます.主な効果としては以下のようなものが考えられます.
①疼痛によるADL障害・睡眠障害・うつ状態の改善
②新規の脊椎圧迫骨折の予防
③脊椎後彎による腹部臓器圧迫による食欲不振・逆流性食道炎の改善
④肺の圧迫による呼吸機能障害の改善
⑤バランス感覚の低下による転倒の予防
BKPによる治療は今後多くの医療機関で取り入れられることが予測されますので,われわれ理学療法士もBKPの利点・欠点について知っておく必要がありますね.
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