転倒予防に有効な二重課題トレーニング

介護予防
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前回は高齢者の転倒の原因が身体機能レベルによって異なることを紹介させていただきました.虚弱高齢者は筋力トレーニングを元気高齢者は二重課題トレーニングをおこなうことが転倒予防を図る上では重要です.今回は具体的な二重課題トレーニングについて紹介させていただきます.

二重課題トレーニングは大きく分類すると負荷する課題によって「認知課題」と「運動課題」に分類できます.

認知課題:運動課題(歩く)+認知課題(しりとり)
運動課題:運動課題(歩く)+運動課題(水の入ったコップを持つ)

 

認知課題

二重課題が注目されるようになったきっかけになった論文がSWWT(Stops walking when talking)研究です.この研究では,対象者を歩行中に話しかけた際に立ち止まった人と立ち止まらなかった人の2群に分けて,転倒した人の割合を比較したところ,立ち止まった人の多くが転倒していたといった結果でした.その後,脳卒中例の転倒を予測する指標としてもこのSWWTの有用性が報告されております.このSWWTでは歩行という運動課題に話すといった認知課題が加わったものになります.

以下に私が良く用いる認知課題を挙げます

  • しりとり
  • 計算課題
  • 「●」から始まる言葉
  • 鳥の種類
  • 花の種類
  • 「●●町」の良いところ
  • 最近あった嬉しいこと

こんな感じです.特に下から2つは対象者の笑いも得られて盛り上がります.
これに下のような運動課題を組み合わせると二重課題トレーニングが完成します.

  • 座って足踏み
  • 立って足踏み
  • 踏み台昇降運動

 

認知課題を用いるときにはその難易度に注意が必要です.二重課題トレーニングを行う場合には,2つ以上の課題が同時に行われることが重要となります.ですので課題が難しすぎても簡単すぎてもトレーニングにならない可能性があります.

課題が簡単すぎる場合
課題が簡単すぎると前頭葉に負荷を加えることができませんので,二重課題トレーニングになりません.例えば計算課題であれば減算する数字を難しいものにするなどの対応が必要です.

課題が難しすぎる場合
課題が難しすぎると認知課題ばかりに集中しすぎてしまい,運動課題を継続できなくなってしまいますので,トレーニングになりません.

 

運動課題

運動課題としてよく用いられるのは

  • コップに入った水を運ぶ
  • お盆に載せたボールを運ぶ
  • 3の倍数の歩数で手をたたく

こういった課題でしょうか.この課題を歩きながら行うというのが非常に有効です.歯をくいしばって繰り返して行うだけのつまらない筋力トレーニングに比較して,対象者の笑いも誘えるというのがこの二重課題トレーニングの良いところの一つです.この運動課題も先ほどの認知課題と同様に難易度を調整することが重要となります.

二重課題トレーニングの転倒予防効果というのもいくつかの論文で明らかにされておりますが,有名なのは山田実先生の論文でしょうか.この論文では要支援から要介護2までの状態にある虚弱高齢者を3群(デュアルタスク+バランストレーニング群(DT群)・バランストレーニングのみ(ST群)・コントロール群)に無作為に分類し,12週間後の介入効果を検証しております.結果はDT群だけが歩行速度が有意に改善しており,DT群でのみ介入後半年間の転倒が減少しております.

課題の難易度に注意しながら是非とも介護予防,そして通常の理学療法にも取り入れたいですね.二重課題トレーニングに関しては国立長寿健康医療研究センターがコグニサイズといったエクササイズを考案されております.コグニサイズに関しては認知症の予防にも有効とされており,書籍もたくさん出てますので,参考にしていただければと思います.

二重課題トレーニングについて学びたい方はこの書籍もお勧めです.


参考文献
1)Lundin-Olsson L, et al: “Stops walking when talking” as a predictor of falls in elderly people. Lancet349: 617, 1997
2)Hyndman D, et al: “Stops walking when talking” as a predictor of falls in people with stroke living in the community. J Neurol Neurosurg Psychiatry75: 994–997, 2004
3)山田実,他:Dual-taskバランストレーニングには転倒予防効果があるのか?―地域在住高齢者における検討─.理学療法ジャーナル42: 439-445, 2008

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