大腿骨転子部骨折例に対する関節可動域運動~浮腫に対する対策が重要~

大腿骨近位部骨折
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今回は大腿骨転子部骨折例に対する関節可動域運動について考えてみたいと思います.

大腿骨転子部骨折例の可動域運動を考える上では,骨折型や術式別に侵襲や起こりやすい機能低下を考える必要があります.

大腿骨転子部骨折に対する手術療法と骨折型・術式別に見た起こりやすい機能低下
大腿骨転子部骨折例に対する手術療法はCHSとガンマネイル(γ-nail)に分類されますが,手術侵襲が術式によって異なります.筋への手術侵襲に加えて,骨折型による機能低下も含めて術後の運動機能低下をとらえる必要があるでしょう.

 

今回は骨折型・術式別に可動域運動のポイントをご紹介したいと思います.

 

 

 大腿骨転子部骨折(安定型骨折・骨接合術 CHS) 

安定型の大腿骨転子部骨折例に対してはCHSによる骨接合術が施行されることが多いです.

術式については以前ご紹介いたしましたが,CHSでは大腿筋膜張筋の侵襲が加わりますので股関節内転可動域制限,膝関節屈曲可動域制限が生じやすいのが特徴です.

股関節内転可動域制限は骨盤傾斜やDuchenne跛行の原因となるため,正常歩行に必要な5°の可動域獲得が最低限必要となります.

またCHSでは外側広筋を骨膜下に剥離し展開が行われるため,膝関節屈曲可動域制限が生じやすいのも特徴です.解剖学上,腸脛靭帯は外側広筋の表層に位置し,外側広筋表層や外側筋間中隔と密接な連結を持ちます.

CHS術後には腸脛靭帯・外側広筋間の癒着が起こりやすく,組織間の滑走性低下が生じやすい点にも注意が必要です.

腸脛靭帯の短縮や滑走性低下は二次的な外側広筋の過緊張を引き起こし,結果的に屈曲可動域制限の原因となります.

股関節を外転位として屈曲可動域が拡大すれば,大腿筋膜張筋・腸脛靭帯の過緊張や短縮が可動域制限の一因となっていることが窺われます.

したがって大腿筋膜張筋へのDirect stretchやOber positionでのストレッチが効果的です.

 大腿骨転子部骨折(不安定型骨折・骨接合術(γ-nail)) 

不安定型骨折は骨折に伴う出血量が多く,大腿部にまで皮下出血に伴う浮腫を認める場合も少なくありません.

浮腫と腫張の違い,癒着とは?
今回は大腿骨転子部骨折例に起こりやすい大腿部の浮腫とそれに伴う癒着について考えてみたいと思います.以前の記事で大腿骨転子部骨折は,骨折に伴う出血量が多く,この出血の大腿部への浸潤によって大腿部に浮腫が生じやすいということをご紹介いたしました.

大腿部の浮腫はコンパート内圧を上昇させ大腿筋群の伸張性や滑走性を低下させるため,膝関節屈曲可動域制限を引き起こします.

また大腿部の浮腫や重力によって大腿後面に浸潤することが多く,そのために大腿後面筋群の滑走性や伸張性が低下しやすい点も不安定型骨折例の特徴です.

不安定型骨折例では術式による可動域制限よりも浮腫に伴う影響が圧倒的に大きいので,浮腫の改善を図ることが重要です.具体的にはリンパドレナージやポジショニング(下肢挙上)を徹底することが重要です.

また腫れている状態が続くと大腿軟部組織の癒着を引き起こすことも少なくありませんので,大腿軟部組織の癒着予防に努めることが重要です.

癒着予防というと筋の伸張性改善を目的とした他動運動がプログラムの主体となりがちですが,癒着を予防する上では低負荷で筋を収縮させる方法が有用です.

筋を収縮させることで組織間での滑走を引き出すことができれば癒着予防につながります.

大腿四頭筋セッティング一つをとっても中間広筋を収縮させることができれば膝蓋上嚢を滑走させることに繋がりますので大腿軟部組織の癒着を予防する上でとても有効です.

筋の緊張が高い場合には,最大収縮後の弛緩を利用したリラクセーション手技も効果的であり,筋収縮をうまく利用しながら可動域拡大を図ることが重要です.

 

今回は大腿骨転子部骨折例に対する可動域運動のポイントについてご紹介いたしました.特に不安定型の転子部骨折例においては可動域運動時の疼痛が強く防御性収縮も生じやすいので,疼痛を出現させないように時には自動運動も併用しながら可動域を拡大していくことが重要です.次回は筋力トレーニングについて考えてみたいと思います.

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