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胸腰椎圧迫骨折例のアライメント評価
胸腰椎圧迫骨折は骨折が多椎体に及ぶことも多く,姿勢アライメントにも大きな影響を及ぼします.
姿勢アライメントが変化すると立位バランスや歩容にも大きな影響が出るため,胸腰椎圧迫骨折例において姿勢アライメントを評価することは非常に重要となります.
特に胸腰椎圧迫骨折例における脊椎の後彎変形は,歩行速度・階段昇降・立ち上がりなどの動作能力低下に影響するのみならず,肺活量や1秒率の低下といった呼吸機能の障害をも引き起こします.
今回は理学療法士の視点で胸腰椎圧迫骨折例のアライメント評価について考えてみたいと思います.
胸腰椎圧迫骨折例のアライメント評価
座位や立位のアライメントの評価は脊柱の変形の程度を評価したり,日常生活動作能力を推察するために行います.
胸腰椎圧迫骨折による脊椎変形の特徴としては,脊椎の後彎変形をきたし,骨癒合完成後も脊柱後彎化は進行します.
脊柱後彎の進行は遅発性に脊柱管を圧迫し神経症状を起こすこともありますので,注意が必要です.
後彎変形が進行すると,脊柱起立筋に持続的に筋活動が生じることから,慢性的な筋・筋膜性の疼痛の原因ともなります.
脊椎後彎は矢状面で評価するのが一般的です.
静止立位での骨盤前後傾角度の評価や,体幹の最大突出部を壁や背もたれにつけて頭部までの距離を測定するなどの方法が用いられることが多いです.
脊椎後彎変形の後彎変形に関してはGold Standardとなっている評価はありませんが,介入による変化を見極めるためには,数値化できる評価を行うことが重要です.
無理ない立位姿勢を取ったときの矢状面からのアライメントを評価します.
壁から頭部との距離で体幹の前傾の程度を評価します.
視線は正面を向く後頭隆起から壁までの距離をメジャーで測定する殿部を壁につけかるく寄り掛かります.
上肢は対側に踵を床につけて膝を伸展します.
膝の伸展が困難な場合には,膝の屈曲角度も合わせて記録しておきます.
実際に評価を行う際にはアライメントの評価の際は手すりなどにつかまる,壁に寄りかかるなど安全に配慮して行うとよいでしょう.
Occiput-to-wall distance
Occiput-to-wall distanceと呼ばれる体幹屈曲姿勢を簡便に評価する方法では上の図と同様に踵を窩別接触させた立位姿勢における壁と後頭部との距離を計測します.
通常は5.0cm以下であれば軽度の屈曲姿勢,5.1~8.0cmであれば中等度の屈曲姿勢,8.0cm以上であれば重度の屈曲姿勢と判断します.
この評価は非常に簡便に実施が可能なので臨床上も有用だと思います.
その他にも脊椎のアライメントを評価する方法として,Bubble Inclinometerを用いた評価方法や,自在曲線定規を用いた評価方法が報告されておりますが,現在のところ標準化された方法は存在しないのが現状です.
また治療の効果判定やクライアントへのフィードバックのために,画像を撮影しておくことも勧められます.
胸腰椎圧迫骨折例のX線画像によるアライメント評価
観察的な評価だけでなく,X線写真からも椎体の変形やそれに伴う脊椎のアライメントの変化を評価する方法が有用です.
また骨折後は身長の変化を引き起こすこともありますので,受傷前の身長と受傷後の経過による変化も港湾変形を評価する1つの指標となります.
参考文献
1)草刈佳子:円背姿勢が呼吸循環反応ならびに運動耐用能に及ぼす影響.理学療法科学18:187-191,2003
2)Harrison RA:Osteoporosis-related kyphosis and impairments in pulmonary function: a systematic review. J Bone Miner Res22:447-457,2007
3)Kado DM:Hyperkyphotic posture and poor physical functional ability in older community dwelling me and women: the Rancho Bernardo study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci60: 633;637, 2005
4)Blazini L, et al: Clinical characteristics of flexed posture in elderly women. J Am Geriatr Soc51: 1419-1426, 2003
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