地域の通いの場に関する最新理学療法研究紹介1

介護予防
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昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年10月20-21日に福岡県で第5回日本予防理学療法士学会が開催されました.

今回はこの第5回日本予防理学療法士学会の一般演題の中から地域の通いの場に関する研究をいくつかご紹介いたします.

 

目次

 介護予防体操教室の参加高齢者と体操指導を行う高齢者の特徴 

ここ数年,理学療法士や作業療法士が介護予防事業に参画することが多くなり,以前よりも地域での介護予防事業に関する研究報告も増えてきております.

また介護予防事業においては,単に運動を実践する場を提供するといった目的にとどまることなく,高齢者同士が互いに支え合う自助と互助を促す地域づくりに取り組む自治体が増えております.

運動を実践する地域の通いの場に参加する高齢者は,体操教室の参加者と,通いの場を主体的に運営する指導士(サポーターとも呼称されます)の役割を担う住民に分類されます.

この研究では,体操教室参加者と指導士に対して握力と開眼片脚立位時間に加え,生きがい感や精神的健康度の質問紙調査を行い,参加者と指導士の特徴について比較をしております.

対象はある特定の市町で体操教室に参加した地域住民と指導士の役割を担う地域住民としております.

測定項目は握力と開眼片脚立位時間となっております.

また質問紙(高齢者の生きがい感スケール,精神的健康度評価は気分・不安障害の調査票)を使用して,生きがい感や精神的な県高度の評価も行っております.

測定結果および質問紙の調査結果を体操教室参加者と指導士で2 群に分け,各項目について比較を行っております.

結果ですが,最終的に対象者は体操教室参加者509名,指導士62 名となっております.

2 群間の比較では,握力は両群間に有意差は認めず,年齢は指導士群が有意に低く,片脚立位は指導士群が有意に高いといった結果でありました.

生きがい感については総得点と各構成因子についていずれも指導士群が有意に高い結果となっております.

 

実際に理学療法士として住民主体の通いの場に参加していると,指導士(サポーター)の方が生き生きしているというのを肌で実感するわけですが,まさにこの結果は私自身が通いの場の支援を行う際に感じることそのものでした.

先行研究でも介護予防ボランティアに参加する高齢者の健康感やQOL は一般高齢者より高いと報告されており,この研究でも生きがい感は指導士群が有意に高い結果でありました.

難しいのはもともと生きがい感の高い方が指導士になられる方が多いのか,通いの場の支援を通じて生きがい感が向上しているのかといった因果関係がこの研究からはわかりません

私自身は両方の要素が含まれていると考えておりますが,通いの場を通じて高齢者に役割を作ってあげるといった視点も,理学療法士が通いの場の支援を行う上では非常に重要だと思います.

 

 

 

 

 地域住民主体の体操教室運営における活動の阻害因子について 

住民主体の通いの場の支援に関わっていると遭遇することが多いのが,通いの場が消滅してしまったり,活動できなくなってしまったりといったケースです.

この研究ではどういった原因で住民主体の通いの場における活動が阻害されているかを検討しております.

対象は住民主体の通いの場に参加している地域在住高齢者503 名となっております.

この503名に郵送法による自記式質問紙調査を実施し,性別,年齢,居住区等の基本属性に加えて,活動状況(「2 カ所以上活動している」「1 カ所以上活動している」「不定期に活動している」「参加したことがない」)を調査しております.

活動状況に関して「参加したことがない」と回答した群を非活動群,それ以外を活動群と定義しております.

また活動していない理由について「仕事の都合で活動できない」「仕事以外の事が忙しくて活動できない」「自身の体調不良」「家族の介護」「教室参加者の前で体操を教える自信がない」「サポーター(リーダー)としての活動は責任が重い」「サポーター(リーダー)同士の人間関係が難しい」「サポーター(リーダー)としての活動に興味が薄れた,またはなくなった」について尋ね,「あてはまる」「まああてはまる」「あまりあてはまらない」「あてはまらない」の4 件法で回答をしております.

さらに活動していない理由について,自由記載による回答も得ております.

結果ですが,回答した対象者は318名で回収率は63.2%となっております.

活動群は256名で,平均年齢は71.0±4.7歳,非活動群は52 名で,平均年齢は71.5±5.4歳となっております.

活動群と非活動群で基本属性に有意な差はなく,割合が高い質問項目は「仕事以外の事が忙しくて活動できない(71%)」「仕事の都合で活動できない(46%)」であり,最も割合が低かった項目は「家族の介護(15%)」でありました.

自由記載欄の回答からは「体操内容指導の問題」「サポーター(リーダー)同士の人間関係」「会場の問題」があがっております.

さらに「体操内容指導の問題」は「内容が期待外れ」「指導に自信がない」に分類され,「会場の問題」は「会場が遠い」「活動場所の情報提供がない」に分類されたとされております.

いずれにしても参加者が減少している通いの場においてはきちんと参加者が減少している原因を突き止めた上で,介入を行う必要があると思います.

 

高齢者の通いの場での活動を阻害する要因としては,身体的な問題ではなく,サポーター(リーダー)体操教室以外の活動に取り組んでいることが示唆されます.

また人間関係の問題や会場の問題で活動していない高齢者に対して,新しい会場の紹介などサポートが必要であることが示唆される結果だと思います.

 

 

 

 

 

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