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ファンクショナルリーチテストとは?
前回は転倒予防におけるバランス評価として使用頻度の高い片脚起立テストについて紹介させていただきました.
今回は転倒予防で用いられることの多いFunctional Reach test(ファンクショナルリーチテスト)の利点・欠点について考えてみたいと思います.
先日のバランスの階層構造を振り返ってみますとFunctional Reach testは因子構造3に分類されます.
因子構造3は支持基底面内での重心移動(支持基底面固定)を評価していることになります.
ファンクショナルリーチテスト(Functional Reach test)は前方への移動能力を評価していることになりますが,最近では後方・側方へのリーチを使ったテストも報告されております.
ファンクショナルリーチテストの高齢者年齢別基準値・カットオフ値
地域在住高齢者を対象としたDuncanらの調査では6 inches (15.3 cm)が転倒発生を予測するカットオフ値とされております.
また入院高齢者を対象とした森尾らの調査では26.0cmが歩行自立・転倒発生を予測するカットオフ値となることを報告しております.
ファンクショナルリーチテストの限界(文献的考察)
実はFunctional Reach testに関しては既に2000年代前半にバランステストとしてのFunctional Reach testの問題点が報告されております.
以下にFunctional Reach testの問題点をお示しいたします.
- 片側リーチでは体幹回旋の柔軟性(特に)の影響が大きくなる.
- 健常高齢者を対象とした調査ではFRと足圧中心偏位に有意な相関が無い
- 地域在住高齢者を対象とした調査ではFRと前方への重心移動距離と有意な相関が無い
- 高齢・若年女性を対象とした調査ではFRと他のバランス機能評価(OLS・TUG)に有意な相関が無い
ファンクショナルリーチテスト(Functional Reach test)は支持基底面内での重心移動距離を測定しているはずなのですが,実は足圧中心の移動距離との関連性が低いということが明らかにされているのです.また他のバランス機能評価との関連性も低く,バランス評価というよりは柔軟性を評価する指標である可能性があるとさえされております.
ファンクショナルリーチテストのストラテジー
なぜこのような問題が生じるのかを理解するにはReachのStrategyを考える必要があります.
Ankle strategyを使用したリーチ動作の場合には重心は前方へ移動するので足圧中心移動距離とリーチ距離に関連が見られますが,Hip Strategyを使用したリーチ動作の場合には股関節を屈曲させることで重心を後方へ移動し,上部体幹を伸張し上肢を前方へリーチします.
したがいましてHip Strategyを使用したFRは体幹柔軟性との関連性は強いものの重心移動距離との関連が低くなるのです.
高齢者ではAnkle Strategyによる姿勢制御範囲が狭小化し, Hip Strategyによる姿勢制御が主となっていることが多いわけですので,Functional Reach testを行う際にはAnkle strategyを使用したリーチ動作で測定を行うことが重要となります.
Hip StrategyによるFunctional Reach testでは挙上した上肢高が下がるため, 上肢高を変化させずにReachを行う課題とするとAnkle StrategyによるFunctional Reach testが可能となります.
参考文献
1)Tantisuwat A, et al: Multi-directional Reach Test: An Investigation of the Limits of Stability of People Aged between 20-79 Years. J Phys Ther Sci26: 877-880, 2014
2)Duncan PW, et al: Functional reach: predictive validity in a sample of elderly male veterans. .J Gerontol47: M93-98, 1992
3)森尾裕志, 他: 指示棒を用いたFunctional Reach Testの開発. 総合リハビリテーション35: 487-493, 2007
4)Jonsson E, 他: Does the functional reach test reflect stability limits in elderly people?. J Rehabil Med35: 26-30, 2003
5)Wallmann HW: Comparison of elderly nonfallers and fallers on performance measures of functional reach, sensory organization, and limits of stability. J Gerontol A Biol Sci Med Sci56: M580-583, 2001
6)中村一平, 他: ファンクショナルリーチテストとその他のバランス評価法との関係. 理学療法科学21: 335-339, 2006
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