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筋力トレーニングは可動域全体にわたって行うべき?
筋力トレーニングを行うときに理学療法士・作業療法士が考慮する必要があるのは関節角度特異性の原則です.
関節角度特異性の原則を考慮すると筋力を強化したい関節角度でトレーニングが行われることが多いと思います.
関節角度特異性を考慮したトレーニングは等尺性収縮運動として実施される場合が多いと思いますが,等張性運動の場合には可動域の部分的に運動を行った方がよいのでしょうか?
それとも可動域全体にわたって行った方がよいのでしょうか?
今回は筋力トレーニングは可動域全体にわたって行うべきである可能性を示唆する研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Review SAGE Open Med. 2020 Jan 21;8:2050312120901559. doi: 10.1177/2050312120901559. eCollection 2020.
Effects of range of motion on muscle development during resistance training interventions: A systematic review
Brad J Schoenfeld 1, JozoGrgic 2
Affiliations expand
PMID: 32030125 PMCID: PMC6977096 DOI: 10.1177/2050312120901559
今回ご紹介する論文は2020年に掲載された論文です.
研究の目的
The purpose of this study was to systematically review the literature as to the effects of performing exercise with a full versus partial range of motion (ROM) during dynamic, longitudinal resistance training (RT) programs on changes in muscle hypertrophy.
この研究では動的なレジスタンストレーニング(RT)プログラムにおいて,全可動域にわたってトレーニングを行う場合と部分的な可動域の範囲でトレーニングを行う場合で筋肥大効果に差があるかを比較することを目的としております.
研究の方法
Based on the available literature, we aimed to draw evidence-based recommendations for RT prescription. Six studies were identified as meeting inclusion criteria: four of these studies involved RT for the lower limbs while the other two focused on the upper extremities. The total combined sample of the studies was n = 135, which comprised 127 men and 8 women. The methodological quality of all included studies was deemed to be “excellent” based on the modified PEDro scale.
利用可能な文献に基づきレジスタンストレーニング処方のためのエビデンスに基づく勧告を導き出すことを目的としております.
これらの研究のうち4つは下肢のレジスタンストレーニングに関するものであり,他の2つは上肢に焦点を当てたものでありました.
これらの研究の合計サンプル数はn=135で男性127例,女性8例から構成されておりました.
対象となったすべての研究の方法論の質は,修正PEDroスケールに基づいて「優」であると判断されました.
研究の結果
When assessing the current body of literature, it can be inferred that performing RT through a full ROM confers beneficial effects on hypertrophy of the lower body musculature versus training with a partial ROM. Alternatively, research on the effects of ROM for the upper limbs is limited and conflicting, precluding the ability to draw strong practical inferences. No study to date has investigated how ROM influences muscle growth of the trunk musculature. Finally, some evidence indicates that the response to variations in ROM may be muscle-specific; however, this hypothesis also warrants further study.
現在の一連の文献を評価すると,全可動域にわたったレジスタンストレーニングの実践が部分的な可動域によるトレーニングと比較して下肢筋群の筋肥大に有益な効果をもたらすことが明らかとなりました.
一方で上肢のトレーニングに関する研究は限られており矛盾しているため実用的な強い推論を行うことはできない状況でありました.
また体幹筋群についてもは現在までのところ研究そのものがなされていおりません.
最後に運動範囲に対する反応が筋に特異的であることを示す証拠もありますがこれらの仮説もさらに研究する必要があります.
今回は筋力トレーニングは可動域全体にわたって行うべきである可能性を示唆する研究論文をご紹介させていただきます.
今回の結果から考えると下肢の運動に関しては可動域全体にわたってトレーニングを行う方が筋肥大に効果的であるということですね.