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第26回参議院議員通常選挙 理学療法士・作業療法士立候補議員いずれも落選
昨晩から今朝にかけて第26回参議院議員通常選挙の開票が行われました.
ご存じの通りには第26回参議院議員通常選挙には2名の理学療法士,1名の作業療法士が比例代表として立候補しておりましたが,残念ながら3名とも落選という結果となりました.
今回は第26回参議院議員通常選挙の開票結果について考えてみたいと思います.
気になる得票数は?
小川かつみ氏:118,035票 落選
山口和之氏:18,112票 落選
堀越啓仁氏: 39,505票 落選
結果的には3名の得票数を合計すれば自民党の比例区で当選を勝ち得た可能性もあります.
そう考えると3年前の田中氏と山口氏が票を分け合ってともに落選となった選挙と同じ結果にも思えますが,この3年で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が増えていることを考えるともう少しどうにかならなかったものかと考えてしまいます.
3年で理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の母集団は増えてるし,単純計算なら普通に通ったはずです.
自分の1票なんてって思ってた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も多いかもしれませんが,455票差で負けた結果を考えればたかが自分の1票で勝てた選挙です.
まぁ結果論ですけどね.
小川かつみ氏はたった455票差で敗れた
小川かつみ氏に関しては得票数の差はたったの455票差です.
惜敗と言えば惜敗なのですが,選挙においては惜敗も大敗もあまり大きな違いはありません.
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の議員が国会からいなくなった事実には変わりありませんし,これから理学療法士・作業療法士・言語聴覚士のおかれる状況が厳しくなることは言うまでもありません.
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の有資格者,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の学生数は?
理学療法士有資格者:202,423名
作業療法士有資格者:94,255名
言語聴覚士有資格者:38,200名
実に有資格者だけで理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は合計334,878名にものぼります.
このうち各協会に入会している会員数だけで考えても,7割としても20満票は超えるはずなんですけどね…
いかに今回の得票数が少なかったかがわかります.
もちろん理学療法士・作業療法士・言語聴覚士であっても職場の事情やその他の理由で他の比例代表候補に投票した方もいらっしゃったのかもしれませんが,そもそも投票に行っていない理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が多いのではないかと思ってしまいます.
また理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の学生数もかなりの数です.
理学療法士学生:56,000 名
作業療法士学生:30,000名
言語聴覚士学生:4,200名
合計で90200名の学生がいます.
18歳から投票が可能になったわけですのでもう少しここを取り込むことができなかった者かと思ってしまいますが,この世代だと選挙そのものに興味のない方も多いでしょうし,選挙活動にしてもSNSを使用するなどの若者向けの動きが無いとこのあたりの票を得るのは難しいのでしょうね.
ガー〇ーさんなんかが当選しているのを見るとやっぱり時代に合わせた選挙活動が必要なのではないかと思ってしまいます.
TwitterとFacebookの発信メインでは拡散力乏しいですね.
選挙での落選が意味するところ
今回の理学療法士・作業療法士の落選は何を意味するのでしょうか?
国会からリハビリテーション専門職が消えてしまいましたので,リハビリテーション専門職として診療報酬・介護報酬に関して意見することができなくなってしまいます.
そのため①~③のような次回の同時改訂では最悪の改定が予測されています.
①疾患別リハビリテーション料の廃止
②訪問看護ステーションの看護師配置6割
③訪問リハビリテーション対象者は要介護3以上に限定
これが本当に実現されれば,5000人以上の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が職を失うことになってしまいますし,診療報酬が下がれば必然的に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の平均年収も下がってしまうでしょう.
①疾患別リハビリテーション料の統一
まずは疾患別リハビリテーション料の統一です.
この話は実は2022年診療報酬改定の段階で議論に挙がっており,一時は疾患別リハビリテーション料が廃止され,一律で170点になるなんて話がありました.
今で行けば心大血管は200点を超えておりますし,脳血管疾患リハビリテーション料については245点と170点とは大きな差があります.
仮に疾患別リハビリテーション料が廃止され,一律で170点なんて話になると経営的に大きな打撃を食らう病院が多いでしょう.
170点というのはあくまで疾患別リハビリテーション料が廃止されて一律に統一された場合の最低の場合ということですが,こういった場合には過去の例を見ても低い方の点数に統一される可能性が高いです.
脳血管疾患リハビリテーション料の点数が170点になれば1人の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士当たり年間で300万以上の赤字になります.
病院のよっては給料カットなんて話もでかねません.
また理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は収益を上げられないから必要無いと考える経営者も増えそうですので,そもそも理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の勤務先が減ってしまう可能性もあります.
これは大きな問題です.
②訪問看護ステーションにおける看護師配置を6割に
これも以前から議論のある部分です.
令和3年度介護報酬改定に向けて厚生労働省で行われた議論では,訪問看護ステーションにおける看護師配置を6割以上にといった話が挙がっておりました.
日本理学療法士協会の試算では制度改正によって介護保険利用者だけでも約8万人の方がサービスを受けることができなくなり,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は約5千人が雇用を失うと見込まれます.
看護師の人員配置基準が仮に6割以上となれば全体の15.6%にあたる約1860事業所が何らかの対策を迫られることになるわけですね.
既に次回の改定に向けて動いている事業所も多いですが,前回の介護報酬改定では見送られた看護師とリハビリテーション専門職の人員配置についても次の同時改定でばっさりやられる可能性は高いです.
行政からずれば看護師6割配置案で訪問看護におけるリハビリテーション専門職増大に歯止めを掛けたいところですし,看護協会もこの案には強く賛同しております.
というか元々は看護協会から出た話だった気がします.
介護保険分野についても多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が職を失うことになってしまいます.
③訪問リハビリテーションの対象者を要介護3以上とする
最後に訪問リハビリテーションの対象者です.
これについても以前から話がありますが,対象者が要介護3以上の重度者に限定されてしまう可能性が高いです.
これは厚生労働省が出している要介護度別のリハビリテーションアプローチの指針です.
要支援1・2:予防的リハビリ,介護が必要にならないために
要介護1・2:自立支援型リハビリ,ADL,IADLの自立を図る
要介護3・4・5:介護負担軽減型リハビリ,介護者の負担を軽減
これを見てもわかるのは要支援1・2や要介護1・2は通いの場や通所サービスの短期的な介入へ,訪問リハビリテーションは要介護3以上の方へといった方針が見てとれます.
こうなると訪問リハビリテーションの対象者はかなり減ってしまうことになりますので,やはり多くの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が職を失うことになってしまいます.
今回は第26回参議院議員通常選挙の開票結果について考えてみました.
今回の落選は残念で仕方ありませんが,小川氏・山口氏・堀越氏には心から「お疲れ様でした」と言いたいです.
協会・連盟も含めたわれわれの力不足ですね.
2024年度の診療報酬・介護報酬同時改訂では理学療法士・作業療法士・言語聴覚士にとって厳しい改訂となりそうですが,結果は悔やんでも変わりませんので,次の選挙に向けて今回の反省をふまえて新たなスタートを切る必要がありますね.