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捻挫にRICE処置は古い?PEACEとLOVEが重要?
理学療法士・作業療法士がスポーツ外傷後のリハビリテーションに携わる機会は多いと思います.
足関節捻挫や肉離れ,打撲などさまざまなスポーツ外傷後にはRICE処置が行われることが多かったわけですが,近年このRICE処置の意義に疑問符が打たれ,新たな概念が登場してきております.
今回はRICE処置に代わるPEACE&LOVEについてご紹介させていただきます.
RICE処置とは?
まずはRICE処置についてご説明いたします.
RICE処置というのは肉離れや打撲、捻挫など外傷を受けたときの基本的な応急処置方法を指します.
Rest(安静)
Icing(冷却)
Compression(圧迫)
Elevation(挙上)
この4つの処置の頭文字から名付けられました.
早期にRICE処置を行うことで,内出血や腫張,疼痛を抑制し回復を助けることができます.
RICE処置は回復を妨げる?
ここ数年の研究でRICE処置の中でも「Rest:安静」と「Ice:冷却」については,鎮痛には効果がありますが,組織治癒を遅延させてしまう可能性があると科学的に疑問視されております.
RICE処置に代わってここ最近スポーツ医学で提唱されているのが「PEACE & LOVE」という考え方です.
「PEACE & LOVE」とは?
「PEACE & LOVE」というのは,イギリスのスポーツ医学で発表された考え方で下記のような処置を指します.
「PEACE」については受傷直後の処置について示してあります.
また「LOVE」では受傷翌日以降からの処置について示してあります.
数年前の常識とは大きくことなる処置の考え方となっております.
P…Protection
E…Elevation
A…Avoid Anti-inflammatories
C…Compression
E…Education
L…Load
O…Optimism
V…Vascularization
E…Exercise
このような頭文字をとったものが「PEACE & LOVE」というわけです.
まずはPEACEについてです.
「PEACE」については受傷直後の処置について示してあります.
P…Protection:患部を保護する
外傷後,数日間は患部の疼痛を伴う活動を避けることで保護します.
E…Elevation:患部を心臓より高い位置に挙げる
A…Avoid Anti-inflammatories:抗炎症薬を避ける
抗炎症薬(痛み止め)を使用すると痛みは和らいで楽になりますが,炎症を抑制することで患部の回復を遅延させる可能性があります.
そのため早期回復には抗炎症薬を使用しないことが重要です.
C…Compression:患部を圧迫する
E…Education:教育する
クライアントの状態に適した対処法を教え,クライアントが受動的な治療を受けることで医療従事者に頼りきりになることや,不必要な画像診断,過剰な薬物療法を避けることも重要となります.
次にLOVEについてです.
LOVEでは受傷翌日以降からの処置について示してあります.
L…Load:徐々に負荷を上げる
痛みを避けながら徐々に日常生活に戻れるよう負荷を上げていきます。この際に無理は禁物です。
O…Optimism」楽観思考
前向きな気持ちで治療に取り組むことはケガからの回復を早めます.
昨今の疼痛科学の研究結果がここにも組み込まれているわけですね.
V…Vascularization:血流を促進する
患部への血流を促進することで回復を促進することができます.
もちろん疼痛は避ける必要がありますが,1日に20分程度の有酸素運動を行うことが推奨されます.
E…Exercise:運動する
回復するため積極的に運動することも大切です.
ストレッチや筋力強化,
バランス運動などを通して患部の運動能力や神経系を回復させていきます.
RICE処置とPEACE&LOVEでは何が異なるのか?
PEACE&LOVEではRestとIcingが無くなり,ExerciseやLoadといった運動の概念や,Vascularizationといった血流促進の視点,また患者教育のEducationや疼痛科学に基づくOptimismの概念が追加されました.
今回はRICE処置に代わるPEACE&LOVEについてご紹介させていただきました.
理学療法士・作業療法士も知識をアップデートしないといつまでのRICE処置だけをベースに仕事をしていると問題でしょうね.
新たに取り入れられた血瘤促進や患者教育の視点をもって対応に当たる必要がありますね.