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フォームローラーによるマッサージが対側下肢の柔軟性も改善させる?
理学療法士・作業療法士が運動療法の中で使用するツールとして近年使用が増えているのがフォームローラーです.
最近はフォームローラーに関連する論文も増えてますよね.
今回はフォームローラーによるマッサージが対側下肢の柔軟性も改善させる可能性を示唆する研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Front Physiol. 2021 Jun 25;12:702042. doi: 10.3389/fphys.2021.702042. eCollection 2021.
Local and Non-local Effects of Foam Rolling on Passive Soft Tissue Properties and Spinal Excitability
Masatoshi Nakamura 1 2, Andreas Konrad 3, Ryosuke Kiyono 1, Shigeru Sato 1, Kaoru Yahata 1, Riku Yoshida 1, Koki Yasaka 2, Yuta Murakami 2, Futaba Sanuki 2, Jan Wilke 4
Affiliations expand
PMID: 34248682 PMCID: PMC8267519 DOI: 10.3389/fphys.2021.702042
今回ご紹介する論文は2021年に掲載された論文です.
研究の背景
In sports and clinical settings, roller massage (RM) interventions are used to acutely increase range of motion (ROM); however, the underlying mechanisms are unclear. Apart from changes in soft tissue properties (i.e., reduced passive stiffness), neurophysiological alterations such as decreased spinal excitability have been described. However, to date, no study has investigated both jointly. The purpose of this trial was to examine RM’s effects on neurophysiological markers and passive tissue properties of the plantar flexors in the treated (ROLL) and non-treated (NO-ROLL) leg.
スポーツ現場や臨床現場では,フォームローラーマッサージを使用して可動域拡大を図る機会がありますが,その作用機序はまだまだ不明な点が多いのも実際です.
軟部組織の特性の変化(受動的な硬さの減少)のほかに,脊髄の興奮性の低下などの神経生理学的な変化が報告されております.
しかしながらこれまでに両者を同時に調査した研究は存在しません.
この研究では下腿三頭筋の神経生理学的マーカーおよび受動的組織特性に対するフォームローラーマッサージの効果を,フォームローラーマッサージを行った下肢とフォームローラーマッサージを行っていない下肢を対象として調査することを目的としております.
研究の対象
Fifteen healthy individuals (23 ± 3 years, eight females) performed three unilateral 60-s bouts of calf RM. This procedure was repeated four times on separate days to allow independent assessments of the following outcomes without reciprocal interactions: dorsiflexion ROM, passive torque during passive dorsiflexion, shear elastic modulus of the medial gastrocnemius muscle, and spinal excitability.
15例の健常者(23±3歳,女性8例)を対象として片側60秒の時間で下腿後面に対してフォームローラーマッサージを3回行っております.
この手順を別々の日に4回繰り返し,足関節背屈可動域,受動的背屈時のトルク,内側腓腹筋のせん断弾性率,脊髄の興奮性を相互に影響し合うことなく独立して評価しております.
研究の結果
Following RM, dorsiflexion ROM increased in both ROLL (+19.7%) and NO-ROLL (+13.9%). Similarly, also passive torque at dorsiflexion ROM increased in ROLL (+15.0%) and NO-ROLL (+15.2%). However, there were no significant changes in shear elastic modulus and spinal excitability (p > 0.05). Moreover, significant correlations were observed between the changes in DF ROM and passive torque at DF ROM in both ROLL and NO-ROLL.
フォームローラーマッサージの後に,フォームローラーマッサージを行った場合に19.7%増,フォームローラーマッサージを行っていない場合に13.9%増と両方で足関節背屈可動域に改善がみられております.
同様に足関節背屈可動域における受動的トルクもフォームローラーマッサージを行った場合で+15.0%,フォームローラーマッサージを行っていない場合で+15.2%と増加ししております.
しかしながらせん断弾性係数と脊髄の興奮性には有意な変化は見られませんでした.
さらにフォームローラーマッサージを行った場合とフォームローラーマッサージを行っていない場合の両条件において,足関節背屈可動域の変化と足関節背屈運動時の受動トルクの間には有意な相関関係が認められました.
研究の結論
Changes in ROM after RM appear to be the result of sensory changes (e.g., passive torque at DF ROM), affecting both rolled and non-rolled body regions. Thus, therapists and exercise professionals may consider applying remote treatments if local loading is contraindicated.
フォームローラーマッサージ後の関節可動域の変化は,感覚的な変化(例えば背屈可動域運動時の受動的トルク)の結果であり,ロールしている体の部位とロールしていない体の部位の両方に影響を与えていると思われます.
このようにセラピストや運動専門家は,局所的な負荷が禁忌である場合,遠隔治療の適用を検討することができます.
今回はフォームローラーによるマッサージが対側下肢の柔軟性も改善させる可能性を示唆する研究論文をご紹介させていただきました.
これは非常に興味深い結果ですね.
対側においても可動域が改善し,その機序として感覚入力の変化といったメカニズムが考えられるといった話です.
これが本当であれば著者らも記載しているように遠隔からの介入が可能となりますね.