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理学療法士・作業療法士はネガティブデータを論文投稿する?しない?
学術研究に取り組まれている理学療法士・作業療法士であればデータ収集を行ったものの,結果が仮説通りにならなかったとか,ポジティブな結果が得られなかったなんて経験をされることは少なくないと思います.
このようにデータ収集を行ったもののポジティブな結果が得られなかった場合には,論文として投稿すべきではないのでしょうか?
それとも論文としてきちんと投稿すべきなのでしょうか?
今回は理学療法士・作業療法士はネガティブデータを論文投稿すべきか,論文投稿するべきではないかについて考えてみたいと思います.
ネガティブデータはアクセプトされない
「失敗は成功の元」と言われますが,理学療法士・作業療法界隈の研究というのも初期段階では多くの失敗を乗り越えて進められてきました.
曖昧さのない仮説に基づいてよく考えられた実験であっても,予想した通りの結論がでなかったり,否定的な結果になったりすることがあります.
ただ一方で研究論文の投稿に際しては,肯定的な結果だけが受け入れられる傾向にあります.
良い結果でなければアクセプトされないというのは,結果として情報操作や捏造といった非倫理的な行動を誘発してしまう可能性もありますので,実は問題なわけですが,実際にはネガティブデータというのはアクセプトされにくいというのは間違いないでしょう.
費用対効果が低い?
ネガティブデータの場合には,ポジティブデータを公表することに比べると出版費用や原稿を作成するのにかかる労力と時間などで割に合わないところがあります.
費用対効果が低いと考える理学療法士・作業療法士も多いかもしれません.
結果がネガティブな者になったのは,研究デザインが不適切であるとか,解析の方法が不十分であったとか研究に厳密さが欠如していたために否定的な結果になったと評価されることもあるでしょう.
そのため研究者はネガティブデータの公表をためらってしまうことが多いわけです.
ネガティブデータを公表することも大切
どのような研究結果においても重要な要素が3つあります.
それは再現性,頑健性,普及可能性です.
ネガティブデータであっても論文が出版されれば,多くの理学療法士・作業療法士がその論文から新たな仮説を立てるきっかけとなることもあります.
そのためポジティブなデータであってもネガティブなデータであってもきちんと公表するということが重要なわけです.
ネガティブデータがアクセプトされるためには?
一方でネガティブデータを使った論文がアクセプトされるためにはいくつかの壁があり増す.
まずデータは適切な解析方法を用いて,ネガティブであることを客観的に証明するものでなくてはなりません.
例えば介入研究で2群に有意差が無かったなんて結果から,同等であるといった結論を導くといったような手法では問題があります.
非裂性試験を使って同等であることがきちんと証明できれば,ネガティブデータであってもその価値は高くなるでしょう.
また研究方法が妥当であったことをネガティブデータこそきちんと示さなければ,方法が不適切だから結果がネガティブなものに終わってしまったと判断されてしまうこともあるでしょう.
つまりネガティブデータこそより厳密な方法で研究がなされていないとアクセプトされにくいといった側面があるでしょう.
今回は理学療法士・作業療法士はネガティブデータを論文投稿すべきか,論文投稿するべきではないかについて考えてみました.
ネガティブデータであっても研究としての意義がないわけではありません.
理学療法士・作業療法士も,ネガティブデータであってもきちんと公表できるようにしたいですね.