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なぜフォームローラーによるマッサージが可動域や疼痛を改善させるかを考えるうえで重要な論文をご紹介
近年,理学療法士・作業療法士が運動療法の中でフォームローラーを使用する機会は多いと思います.
しかしながらなぜフォームローラーを使用することで関節可動域や疼痛に改善が得られるのかどうかは不明な点が多いのも実際です.
今回はなぜフォームローラーによるマッサージが可動域や疼痛を改善させるかを考えるうえで重要な論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Randomized Controlled Trial J Appl Physiol (1985)
. 2018 Apr 1;124(4):950-959. doi: 10.1152/japplphysiol.00732.2017. Epub 2018 Jan 4.
Roller massage decreases spinal excitability to the soleus
James D Young 1, Alyssa-Joy Spence 1, David G Behm 1
Affiliations expand
PMID: 29357488 DOI: 10.1152/japplphysiol.00732.2017
今回ご紹介する論文は2018年に掲載された論文です.
研究の背景・目的
Roller massage (RM) interventions have shown acute increases in range of motion (ROM) and pain pressure threshold (PPT). It is unclear whether the RM-induced increases can be attributed to changes in neural or muscle responses. The purpose of this study was to evaluate the effect of altered afferent input via application of RM on spinal excitability, as measured with the Hoffmann (H-) reflex.
フォームローラーマッサージによる介入は,関節可動域と痛覚閾値に対して即時的効果をもたらすことが知られております.
しかしながらフォームローラーマッサージの効果機序が神経と筋肉のどちらの反応の変化に起因するかは不明であります.
この研究では,求心性入力の変化が,Hoffmann (H-) 反射で測定される脊髄の興奮性に及ぼす影響を評価することを目的としております.
研究の方法
A randomized within-subjects design was used. Three 30-s bouts of RM were implemented on a rested, nonexercised, injury-free muscle with 30 s of rest between bouts. The researcher applied RM to the plantar flexors at three intensities of pain: high, moderate, and sham. Measures included normalized M-wave and H-reflex peak-to-peak amplitudes before, during, and up to 3 min postintervention.
研究デザインは無作為化被験者内デザインとなっております.
外傷が無く,運動をしていない安静な筋に,30秒間のフォームローラーマッサージを3回実施し,30秒間の休息を挟んでおります.
研究者は下腿三頭筋に対して,高・中・偽刺激の3段階の痛みの強さでフォームローラーマッサージを適用しております.
測定項目は介入前,介入中,および介入後3分までのM波およびH反射のピーク・ツー・ピークの正規化された振幅となっております.
研究の結果
M-wave and H-reflex measures were highly reliable. RM resulted in significant decreases in soleus H-reflex amplitudes. High-intensity, moderate-intensity, and sham conditions decreased soleus H-reflex amplitudes by 58%, 43%, and 19%, respectively. H-reflexes induced with high-intensity rolling discomfort or pain were significantly lower than moderate and sham conditions. The effects were transient in nature, with an immediate return to baseline following RM.
M波およびH反射の測定値は高い信頼性を示しました.
フォームローラーマッサージはヒラメ筋のH反射の振幅を有意に減少させました.
また高強度,中強度,偽刺激の各条件で,ヒラメ筋H反射の振幅がそれぞれ58%,43%,19%減少しております.
高強度のフォームローラーマッサージによる不快感や痛みで誘発されたH反射は,中強度および偽条件に比べて有意に低い結果でありました.
これらの効果は即時的なものであり,フォームローラーマッサージ後にはすぐにベースラインに戻っております.
研究の結論
This is the first evidence of RM-induced modulation of spinal excitability. The intensity-dependent response observed indicates that rolling pressure or pain perception may play a role in modulation of the inhibition. Roller massage-induced neural modulation of spinal excitability may explain previously reported increases in ROM and PPT. NEW & NOTEWORTHY Recent evidence indicates that the benefits of foam rolling and roller massage are primarily accrued through neural mechanisms. The present study attempts to determine the neuromuscular response to roller massage interventions. We provide strong evidence of roller massage-induced neural modulation of spinal excitability to the soleus. It is plausible that reflex inhibition may explain subsequent increases in pain pressure threshold.
この研究はフォームローラーマッサージによる脊髄の興奮性の変化を示す初めての科学的根拠であります.
強度に依存した反応が観察されたことから,転圧や痛覚が抑制の調節に役割を果たしている可能性があります.
フォームローラーマッサージによる脊髄の興奮性の神経調節は,これまでに報告された関節可動域と疼痛閾値の増加を説明できるかもしれません.
NEW & NOTEWORTHY フォームローリングやローラーマッサージの効果は,主に神経メカニズムによってもたらされることを示す最近の根拠があります.
本研究ではフォームローラーマッサージの介入に対する神経筋の反応を明らかにすることを試みました.
その結果,ヒラメ筋に対する脊髄の興奮性をローラーマッサージによって神経的に調節していることが明らかになりました.
また反射抑制によりその後の痛覚閾値の上昇を説明することができると考えられます.
今回はなぜフォームローラーによるマッサージが可動域や疼痛を改善させるかを考えるうえで重要な論文をご紹介させていただきました.
この研究結果から考えるとフォームローラーによる可動域や疼痛改善効果は組織の柔軟性改善というよりも脊髄の興奮性に起因するところが大きい可能性があります.
非常に興味深い結果ですね.