肩関節後方タイトネスおよび肩甲上腕関節内旋減少に対するストレッチング効果:システマティックレビュー

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肩関節後方タイトネスおよび肩甲上腕関節内旋減少に対するストレッチング効果:システマティックレビュー

肩関節後方タイトネスや肩甲上腕関節内旋減少は,野球やテニスなどのオーバーヘッドスポーツに共通して認められる機能不全です.

肩関節後方タイトネスや肩甲上腕関節内旋減少といった機能不全は,肩峰下インピンジメントやinternal impingementを引き起こす原因と考えられており,理学療法士・作業療法士の間でも肩関節障害を引き起こすリスクの1つと認識されております.

今回は肩関節後方タイトネスおよび肩甲上腕関節内旋減少に対するストレッチングの効果について明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.

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今回ご紹介する論文

Review J Sport Rehabil. 2017 Jul;26(4):294-305. doi: 10.1123/jsr.2015-0172. Epub 2016 Aug 24.

Effectiveness of Stretching on Posterior Shoulder Tightness and Glenohumeral Internal-Rotation Deficit: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials

Koya Mine, Takashi Nakayama, Steve Milanese, Karen Grimmer

PMID: 27632891 DOI: 10.1123/jsr.2015-0172

今回ご紹介する論文は2017年に掲載された論文です.

本研究で行われた研究ですね.

 

 

 

 

 

 

 

研究の背景

Posterior shoulder tightness (PST) and glenohumeral internal-rotation deficit (GIRD) can contribute to shoulder pain suffered by athletes engaged in overhead sporting activities. Stretching is a common intervention to resolve PST and GIRD, but it has weak evidence of effectiveness to date.

肩関節後方タイトネス(Posterior shoulder tightness, PST)や肩甲上腕関節内旋減少(glenohumeral internal rotation deficit, GIRD)は,オーバーヘッドスポーツに従事するアスリートが受ける肩の痛みの一因となることが少なくありません.

ストレッチングは肩関節後方タイトネスと肩甲上腕関節内旋減少を改善するために一般的に行われる介入ですが,これまでのところストレッチングの有効性については明らかにされておりません.

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の目的

Objective: This systematic review aimed to collect and synthesize effectiveness data from English- and Japanese-language randomized controlled trials (RCTs) investigating stretching interventions for PST and GIRD.

この研究では肩関節後方タイトネスおよび肩甲上腕関節内旋減少に対するストレッチング介入を調査した英語および日本語のランダム化比較試験(RCT)の有効性データを収集し,ストレッチングの有効性を明らかにすることを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

エビデンスの収集

Evidence acquisition: 7 English databases and 3 Japanese databases were searched from inception until December 5, 2015. Only English- and Japanese-language RCTs were considered. Risk of bias in the included studies was assessed using the Physiotherapy Evidence Database scale. Data were synthesized qualitatively.

2015年12月5日までに英語データベース7件,日本語データベース3件を検索しております.

英語および日本語のRCTのみを対象としております.

対象となった研究におけるバイアスリスクは,Physiotherapy Evidence Databaseスケールを用いて評価がなされております.

 

 

 

 

 

 

 

 

エビデンスの合成

Evidence synthesis: Eight English-language and 2 Japanese-language papers of low to high quality were included. There was moderate evidence for positive immediate and short-term effects of cross-body stretch on PST and GIRD in asymptomatic young subjects. Moderate evidence was found to suggest that active sleeper stretch might not be more effective than no intervention to improve PST and GIRD in the short term.

対象となった研究論文は英語論文8編,日本語論文2編で質の低いものから質の高いものまで含まれておりました.

無症状の若年者において,クロスボディーストレッチングストレッチの肩関節後方タイトネスと肩甲上腕関節内旋減少に対する即効性と短期的な効果を示す中等度のエビデンスが確認できました.

また積極的なスリーパー・ストレッチが,短期的に肩関節後方タイトネスと肩甲上腕関節内旋減少を改善する可能性を示唆する中等度のエビデンスが見出されました.

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

Conclusions: Cross-body stretch can be effective to improve PST and GIRD in asymptomatic young subjects immediately or in the short term. Further study with methodological rigor is necessary to investigate the long-term effectiveness of stretching interventions on PST and GIRD in symptomatic patients.

クロスボディーストレッチングは,無症状の若年者を対象とした肩関節後方タイトネスと肩甲上腕関節内旋減少の改善に即効性があり,短期的にも効果的である可能性があります.

症状のあるクライアントにおける肩関節後方タイトネスと肩甲上腕関節内旋減少に対するストレッチ介入の長期的な有効性を調べるためには,方法論的な厳密さを持った更なる研究が必要であります.

 

今回は肩関節後方タイトネスおよび肩甲上腕関節内旋減少に対するストレッチングの効果について明らかにした研究論文をご紹介させていただきました.

結果としてはクロスボディーストレッチングが即時的,短期的に中程度の効果量を認め,スリーパーストレッチングの効果は認められませんでした.

今回の結果は臨床・スポーツ現場において肩関節後方タイトネスおよび肩甲上腕関節内旋減少の予防を目的としたストレッチングの選択に際し参考になりそうですね.

ただ今回の論文というのはあくまで無症候性の肩関節を対象とした研究のみを対象としておりますので,有症者を対象とする場合にそのまま適応することはできません.

今後はストレッチングの長期的な効果や,損傷肩を対象とした研究が増えていくことが期待されますね.

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