目次
理学療法の対象は「身体に障害のある者」に限定されない?
先日,株式会社geneの主催で日本理学療法士協会会長の半田先生の講演が行われました.
この講演は無料ということもあり,かなりの数の理学療法士が聴講しており,SNSでも話題となりました.
この講演の中で話題に取り上げられたのが理学療法の対象に関するテーマです.
今回は理学療法の対象は「身体に障害のある者」に限定されないのかといった点について考えてみたいと思います.
理学療法の対象は「身体に障害のある者」に限定される?
われわれ理学療法士の業界では,昔から理学療法の対象は身体に障害のあるものに限定されるというのが通説でした.
身体に障害にある者に対して医師の指示を元に理学療法を提供する,それが理学療法士の仕事だと考えられてきました.
この考えの原点になるのが「理学療法士及び作業療法士法」第2条です.
以下に「理学療法士及び作業療法士法」第2条をお示しいたします.
「理学療法士及び作業療法士法」第2条
この「理学療法士及び作業療法士法」第2条には理学療法について以下のように明示されております.
この文言を見ると確かに「身体に障害のある者に対し…」と記載があります.
理学療法の対象はやっぱり「身体に障害のある者」なのでしょうか?
理学療法士法の改正が必要?
この点に関しては以前から理学療法の対象を拡大すべきだとか,理学療法士法を改正すべきだといった意見が多く出ておりました.
「身体に障害のある者」のみならず,「身体に障害のない者」や「身体に障害が生じる恐れのある者」は含まれていないわけです.
日本作業療法士協会なんかは,作業療法の対象を広げる記載を追加した定義を独自に出しており,日本理学療法士協会はなぜ法改正に向けて動かないんだなんて指摘も多くありました.
法律の解釈の仕方が重要
gene主催の半田会長による講演会では,この理学療法の対象に関しても取り上げられました.
重要なのは法律の解釈の仕方です.
半田会長がこの理学療法の対象に関して数年前に国会議員に対して相談をされたようです.
驚くべきことに厚生労働省医政局の解釈としては,「身体に障害のある者に対し…」とは記載されているが,「身体に障害の無い者に対して理学療法を行ってはいけない」とは記載されていない,つまり「身体に障害の無い者に対して理学療法を行うこともこの法律上は問題ない」といった回答であったようです.
これが法律上の見方なんですね.
確かに診療報酬なんかも,記載されていないことは都合のよいように解釈して請求がなされる場合が多いです.
グレーのところをQ&Aなんかではっきりさせてしまうことで仕事が煩雑になったなんてこともこれまでたびたびありました.
仮に理学療法士法を改定してしまって,理学療法の対象を身体に障害の恐れのあるものに対してなどといった記載を加えてしまうと,さらに理学療法士の対象者を限定してしまうことになってしまいます.
そのため現在の法律というのは理学療法士にとっても問題が少ない法律と考えることができます.
身体に障害のない者への理学療法は法律に抵触しない?
実際には現在も身体に障害の無い者に対して理学療法を行っている現状があります.
先ほどの法律の解釈からすれば,身体に障害のない方々への予防目的の運動指導は医師法,理学療法士及び作業療法士法等に抵触しないことになります.
ただ結局は事故あるときには,他の法的責任が免除されることはありません.
医師とのしっかりとした連携の上で,より安全で効果的な運動指導を行うことが求められます.
今回は理学療法の対象は「身体に障害のある者」に限定されないのかといった点について考えてみました.
驚くべき法律の解釈ですが,半田会長の話を聞いて腑に落ちました.
先日のgeneの講演会をきっかけに理学療法の対象に関する認識も大きく変化しそうですね.