理学療法士・作業療法士にとっては誤った認識で転倒予防という言葉が広がりすぎるのは怖い

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理学療法士・作業療法士にとっては誤った認識で転倒予防という言葉が広がりすぎるのは怖い

介護予防分野ではずいぶん前から転倒予防という言葉が独り歩きしておりますし,理学療法士や作業療法士も日常的に転倒予防というワードを使用することが多いと思います.

最近は高齢者の多くもこの「転倒予防」という言葉を口にします.

地域における転倒予防は確かに重要ですが,病院や施設における転倒って100%防ぐことが不可能なことを考えると,一般の方の中にこの転倒予防という言葉が誤って広がりすぎるのは怖いですよね.

今回は医療者にとっては誤った認識で転倒予防という言葉が広がりすぎるのは怖いといって件について考えてみたいと思います.

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転倒は100%防げるか?

「医療崩壊」という言葉や「医療の不確実性」という言葉を耳にする機会は多いと思います.

医療というのは確実なものではありません.

例えば,薬には目的とする効果もありますが,一方で副作用もあります.

手術に関しても合併症という期待に反する有害事象がある程度の確率で起こり得るわけです.

理学療法士・作業療法士からずれば当然ですが,医療には100%の安全というのはあり得ませんよね.

理学療法士・作業療法士も人ですので,間違いを犯すことがありますし,システムそのものの問題が原因となって生じる有害事象もあります.

今回のテーマである転倒というのも100%生じないということはあり得ないわけです.

最近の医療不信の高まりの中で,このようなヒューマンエラーやシステムエラーと医療そのものが持つ不確実性が混同されて,医療に伴う有害事象を全て医療ミスと誤解している一部のマスメディアや患者・家族・一般の方々もおられます.

理学療法士・作業療法士関連の転倒事故でも医療訴訟に発展しているケースが多く存在します.

自宅で生活していても高齢者は転倒するわけですから,病院や施設でも転倒して当然です.

もちろんリハビリテーション室でクライアントが独りで不意に動いてしまって転倒することもあるでしょう.

これを注意義務違反と言わればそれまでですが,全ての転倒は予防できるといったような概念が独り歩きするのは非常に怖いですよね.

 

 

 

 

 

 

 

 

病院・施設に責任はないのか?

確かに病院に入院されている中での事故として,病院には大きな意味での管理責任はあると思います.

ただ現実の医療体制の中では防ぎうる事故と防ぎえない事故があることを一般の方に理解していただく必要があります.

クライアントが危険な動きをしないように何らかの方法で身体を拘束したり抑制したりすることは特別な状況でない限りできませんし,1対1で常時監視することなんて難しいわけですので,クライアントの転倒やベッドからの転落を100%防ぐなんて無理なわけです.

1フロア60床の一般病床の深夜帯に勤務する看護師数が数名という中で,実際に家族の方に付き添っていただいている時でも転倒・転落事故が起こる可能性もあるわけです.

認知症やせん妄を合併していれば,転倒・転落をゼロにするなんていうのは不可能に近いわけです.

転倒事故は入院や寝たきりに繋がるきっかけや最悪の場合死に至ることもありますので,病院・施設としては可能であれば転倒事故を100%無くすことが目標となるわけですが,実際には転倒なんていうのはゼロにできないわけです.

仮に転倒をゼロにするのであれば全例に身体拘束しか方法はないと思います.

 

 

 

 

 

 

 

転倒事故と活動性向上は裏表

また理学療法士・作業療法士の立ち位置で考えると日常生活上の活動性向上と転倒事故は表裏一体の関係にあります.

活動性を向上させれば転倒・転落事故が増えるのも当然ですし,転倒・転落事故を怖がっていてはADLは向上しません.

理学療法士・作業療法士にとっては非常に難しい問題です.

介助が必要な状態から全く転倒・転落の危険がある状態を経ることなく自立へ移行するというのは不可能に近いでしょうからね…

現実的にはクライアントご本人はもちろんご家族にも説明を行った上で同意を得ておくことが重要です.

例えばADLを向上させるために転倒・転落する可能性が出てきますがどういたしましょうかといった形式です.

仮にここで転倒・転落を100%防いでほしいといった希望があれば身体拘束しますが良いですかといった同意を得る必要があるわけです.

 

今回は理学療法士・作業療法士にとっては誤った認識で転倒予防という言葉が広がりすぎるのは怖いといって件について考えてみました.

最近はマスコミやTV報道でやたらと転倒予防という言葉が独り歩きしてますので,一般の方が誤った理解をされないように,転倒・転落というのは100%防ぐというのは難しいのだということを理解していただく必要がありますね.

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