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脳卒中治療ガイドライン2021(仮)の原稿案公開 運動障害・ADL障害・歩行障害・上肢機能障害に対するアプローチ
先日,脳卒中治療ガイドライン2021年の原稿案が公開され,パブリックコメントが募集されております.
この新しい脳卒中治療ガイドライン2021ではリハビリテーションに関連する項目も多く,理学療法士・作業療法士にとっても必見の内容となっております.
今回は原稿案が公開された脳卒中治療ガイドライン2021の中から,理学療法士・作業療法士にも関連が深い運動障害・ADL障害・歩行障害・上肢機能障害に対するアプローチについて考えてみたいと思います.
運動障害・ADL 障害に対するアプローチ
運動障害に対するアプローチ
運動障害に対するアプローチについては以下のように記載されております.
推奨
1.脳卒中後の運動障害に対して,課題に特化した訓練の量もしくは頻度を増やすことが勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)
2.自立している脳卒中患者に対して,集団でのサーキットトレーニングや有酸素運動を行うよう勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)
3.脳卒中後の運動障害に対する薬物療法の有効性は,確立していない(推奨度 C エビデンスレベル中)
特徴としては課題特異的アプローチが推奨度・エビデンスレベルが高い点ですね.
今後はこのあたりに再生医療なんかも入ってくるのでしょうね.
ADL障害に対するアプローチ
ADL障害に対するアプローチについては以下のように記載されております.
推奨
1.運動療法を行うことは,ADL を向上させるために勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)。
2.ADL を向上させるために,麻痺側上肢を強制使用させる訓練,課題志向型訓練,鏡像を利用した訓練,ロボットを利用した訓練を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)
3.感覚刺激やバーチャルリアリティを利用した訓練を行うことを考慮してもよい(推奨度 C エビデンスレベル中)
4.上肢運動訓練に反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulataion:rTMS),経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS),電気刺激療法を併用することは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)
5.テレリハビリテーションを含めた在宅リハビリテーションを行うことは妥当である(推奨度 Cエビデンスレベル中)
このADL障害に対するアプローチについては,最新のエビデンスが盛り込まれているところですね.
課題特異的アプローチ,ミラーセラピー,ロボティクス,Brain Machine Interfaceと昨今の最新機器が多く盛り込まれております.
さらに遠隔リハビリテーションが含まれた点も時代の情勢を考慮した内容となっております.
歩行障害に対するアプローチ
歩行訓練
歩行トレーニングについては以下のように記載されております.
推奨
1.歩行機能を改善させるために,頻回な歩行訓練を行うことが勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)
2.亜急性期において,バイオフィードバックを含む電気的デバイスを用いた訓練や部分免荷トレッドミル訓練(partial body weight-supported treadmill training:PBWSTT)を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル高)
3.歩行可能な発症後早期脳卒中患者に対して,歩行速度や耐久性を改善するためにトレッドミル訓練を行うことが勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)
4.歩行ができない発症後3 か月以内の脳卒中患者に対して,歩行補助ロボットを用いた歩行訓練を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)
5.下垂足を呈する脳卒中患者に対して,歩行機能を改善させるために機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)を行うことが勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)
6.歩行速度を改善させるために,反復性経頭蓋磁気刺激(repetitive transcranial magnetic stimulation:rTMS)を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル高)
7.歩行機能改善や筋力増強のために,バーチャルリアリティを用いた歩行訓練を行うことを考慮してもよい(推奨度 B エビデンスレベル中)
まずは歩行トレーニングの量に関して,そして免荷式トレッドミルやロボティクス,FES,Brain Machine Interfaceを用いたトレーニングの有効性が記載されております.
VRなんかが組み込まれている点も新しい点ですね.
歩行障害に対するアプローチ
装具療法
装具療法については以下のように記載されております.
推奨
脳卒中後片麻痺で内反尖足がある患者に対して,歩行機能を改善させるために短下肢装具を使用することは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル高)
気になる長下肢装具の使用に関してですが,今回のガイドラインでは触れられておりません.
ただ歩行トレーニングの中に頻回な歩行トレーニングが歩行速度や歩行耐久性を改善するとありますので,歩行トレーニングの量を増やすためには長下肢装具という話にはなると思いますが…
上肢機能障害に対するアプローチ
上肢機能障害に対するアプローチについては以下のように記載されております.
推奨
1.軽度から中等度の上肢麻痺に対しては,麻痺側上肢の使用を強制する訓練など特定の動作の反復を含む機能訓練を行うよう勧められる(推奨度 A エビデンスレベル高)
2.ロボットを用いた上肢運動訓練を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル高)
3.重度の上肢麻痺に対して,神経筋電気刺激を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)
4.視覚刺激や運動イメージの想起を利用した訓練を行うことは妥当である(推奨度 B エビデンスレベル中)
5.患者の選択と安全面に注意したうえで、反復性経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:rTMS)や経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)を行うことを考慮してもよい(推奨度 C エビデンスレベル中)
キーワードとしては課題特異的なトレーニング,ロボティクス,電気刺激療法,ミラーセラピー,BMIですね.
やはり課題特異的なトレーニングの推奨度の高さが目立ちますね.
今回は原稿案が公開された脳卒中治療ガイドライン2021の中から,理学療法士・作業療法士にも関連が深い運動障害・ADL障害・歩行障害・上肢機能障害に対するアプローチについて考えてみました.
改訂されるガイドラインの中でも理学療法士・作業療法士に最も関連する内容だと思いますので,必ずご一読ください.
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