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理学療法士・作業療法士の観察による動作分析は錯視?妄想?
動作分析といえば理学療法士・作業療法士が日常臨床で行う機会も非常に多いと思います.
中には動作分析は理学療法士・作業療法士のアイデンティティだと豪語する方も結構いらっしゃいます.
動作分析だけは他の医療職種の持っていない理学療法士・作業療法士の武器だなんて考え方ですね.
でも臨床で行われる理学療法士・作業療法士の観察による動作分析ってどこまで信頼できるものでしょうか?
今回は理学療法士・作業療法士の観察による動作分析は本当に武器になり得るのかどうかについて考えてみたいと思います.
動作観察では客観的な情報を抽出する
まず観察による動作分析で重要なポイントは客観的な情報のみを抽出するといった点です.
前遊脚期の膝関節屈曲角度が小さいといったような関節角度に着目した視点であったり,立脚終期におけるヒールオフのタイミングが早いといったタイミングに関する視点等も客観的な情報ですね.
その他にも荷重応答期に体幹が術側へ傾斜するといったDuchenne兆候の出現や,立脚中期の膝折れなどの現象を抽出するというのも客観的な情報の抽出と言えるでしょう.
こういった客観的な情報を抽出するのは問題無いと思いますが,目に見えないものまで観察による動作分析による記述に加えている理学療法士・作業療法士も多く,これだと観察による動作分析というよりは妄想といわれて仕方ないわけです.
モーメント・筋活動まで見える理学療法士がいる?
モーメントや筋活動を推定することは重要かもしれませんが,当然ながら関節モーメントや筋活動を観察による動作分析でとらえることはできません.
仮にこういったモーメントが増えているだろうということが推測されたとしても,それは客観的な情報ではありませんので動作観察から得られる情報として記述すべきでない情報ということになります.
可視化できない情報や可視化していない情報をデータとらずに勝手に記述したら,それは錯視や妄想といわれてしまっても仕方ありませんね.
定性的評価の限界
また観察的な動作分析というのは臨床的な理学療法介入を考える上では重要ではありますが,観察による動作分析を過信しすぎている理学療法士が多いのも実際だと思います.
観察による動作分析というのはあくまで定性的な評価ですので,その限界を踏まえたうえで解釈を行うという視点が重要です.
また定性的な評価だけで効果判定をするのも客観性に欠けます.
可能であれば定量的な評価も合わせて行って,その上で効果判定を行うべきでしょうね.
もちろん効果判定にあたっては測定誤差とかMCIDとかそのあたりも踏まえて変化が臨床的に意味のある変化かどうかも合わせて考慮する必要があります.
自分の得意な介入に結び付けたいがための妄想的分析
また理学療法士に多いのが介入ありきの妄想的な動作分析です.
自分の得意な介入に結び付けたいがために特定の異常歩行パターンに着目し,自分の得意な介入をするといったパターンですね.
自身の妄想推論が正しいと決めつけたいがために,バイアスを入れて動作分析をしても何にもなりませんよね.
介入ありきの明らかにこじつけの動作分析って多いですよね.
動作分析が理学療法士・作業療法士の武器?
何か客観的に検証しにくいようなものが理学療法士・作業療法士の武器っていうのもなんだかなと思ってしまいます.
確かに観察による動作分析からクライアントの問題を抽出する作業は重要ですが,それしか武器が無いというのはなんか残念ですよね.
今回は理学療法士・作業療法士の観察による動作分析は本当に武器になり得るのかどうかについて考えてみたいと思います.
動作分析できれば関節可動域や筋力なんて測定する必要はない,おおよそ推測できるなんて考え方もありますが,これはどうでしょうか…
観察による動作分析は重要ですが,その限界を知った上で他の定量的な評価もふまえて総合的に病態を解釈する必要があるでしょうね.
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