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新型コロナウイルス感染拡大に伴う理学療法臨床業務への調査報告結果
日本理学療法士協会が新型コロナ感染拡大を受けて会員の中でも主に施設管理者に対してアンケート調査を行いました.
先日,このアンケート調査の集計結果が公表されましたので今回はこの新型コロナウイルス感染拡大に伴う理学療法臨床業務への調査報告結果について見ていきたいと思います.
新型コロナウイルス感染拡大に伴う理学療法臨床業務への調査
この調査は令和2年5月15日~21日の期間で18,952名に対して行われました.
回収率は11.2%で2,097名の会員から回答が得られているようです.
決して高い回答率とは言えませんが調査項目も非常に多く,5月中旬の新型コロナ感染対策で多忙な中での調査でしたのでいたしかたないところもあるでしょう.
1.回答者に関して
- 回答者の経験年数は平均で約20年であった.
- 回答者の約8割が主任・係長・課長職以上であった.
基本的には施設管理者に対して行われた調査ですので理学療法士の平均経験年数も長いですね.
2.施設に関して
- 全都道府県の会員から回答があった.
- 施設形態は半数が病院であった.
病院に勤務する理学療法士の回答率が高かったことを考えると医療機関における理学療法士の新型コロナウイルス感染への関心度の高さが見てとれます.
3.新型コロナウイルス感染症感染者の有無について
- 新型コロナウイルス感染症感染者を受け入れている施設は約1割であり,そのうち約3割に理学療法を実施していた.
- 職員やリハビリテーション対象の患者・利用者の感染者も認められた.
- 一方で感染ルートは施設外や不明が多い傾向にあった.
1割は新型コロナウイルス感染症患者の受入施設であり,3割が感染者に対して理学療法を提供していたという回答ですので,感染症が拡大した最前線の地域の理学療法士がアンケートに回答されていることが分かります.
4.施設における運営方針に関して
- 約8割の施設が継続して運営していた
- 理学療法部門の運営は4割は継続運営,運営方法を変えても業務量は継続が4割であった
- 機能別には業務量を縮小・全て休止している割合が多いのは,4割を超えているのは児童発達支援,3割を超えているのは外来診療であった.
多くの施設で運営を工夫しながら業務を継続しているといった回答が多い一方で,児童施設や外来診療を主とする機能がストップしている現状も明らかとなりました.
5.施設における感染対策に関して
- 約9割の施設でもともと感染症対策マニュアルがあり,新たに新型コロナウイルス感染対策のマニュアルを作成した施設が約6割であった.
- 多くの施設で使用物品の確保が困難であり,使用を制限や使いまわすなどの対策が行われていた.
もともと何かしらの感染症対策マニュアルはあったものの,新型コロナウイルス感染対策として新たにマニュアルを作成した施設が多かったようです.
6.ICUの状況について
- ICUを有する医療機関において約10割の医療機関で理学療法士が関与していた.
- そのうち約2割で業務に制限が生じた.
ICU入室患者への対応は継続的に行われていたようですが,業務制限も生じていたようです.
7.リハビリテーション提供体制について
- 外来・通リハ・放課後デイ・児童発達は理学療法等の対象者が減少していた.
- 多くの施設で対患者・利用者、対職員に感染対策を講じていた.
- 環境設定にも対策を講じており,理学療法等の提供においても,通常とは異なる体制を敷いていた.
外来・通リハ・放課後デイ・児童発達の理学療法対象者の減少が顕著であったようで,多くの施設で何かしらの感染対策がなされ,通常とは異なる業務体制を強いられていたようです.
8.理学療法提供時以外の感染対策に関して
- 理学療法提供時以外でも移動の際の感染対策として,3密を避けるような対策や時間の区分などを実施していた.
3蜜対策が徹底されている施設が多かったようです.
9.職員に対する感染対策について
- 職員の配置は多くの施設が対策していないと回答していた.
- しかし病院や介護老人保健施設など入院・入所者がいる事業形態の場合には,病棟等の専従者を設ける対策を実施していた.
- カンファレンスや共有スペースでの感染対策は多くの施設で実施していた.
理学療法士の専従配置を行って感染対策を図った施設が多かったようです.
10.感染対策に関する情報について
- 回答者の約9割が新型コロナウイルス感染症への感染対策において新たに学習が必要であった.
11.追加調査について
- 回答者の約9割が追加調査はWEBでの調査が望ましいと回答した.
今後も追加調査がなされそうです.
今回はこの新型コロナウイルス感染拡大に伴う理学療法臨床業務への調査報告結果についてご紹介させていただきました.
こういった調査は非常に意味がありますし、理学療法士会員にとっても有益なデータですので,今後も継続してこういった調査を行っていただき情報を開示していただきたいですね.
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