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理学療法士・作業療法士によくあるMMTの誤解
理学療法士・作業療法士が筋力の評価を行う際に使用する徒手筋力検査法(Manual Muscle Testin)ですが,筋力テストとして大きな限界があり,臨床ではあまり用いられていない印象ではありますが,医師・理学療法士間の共通言語としてはMMT意外に筋力を表現する手段というのが存在しませんので,欠点の多い検査ではありますが正しく理解しておくことが重要です.
今回は理学療法士・作業療法士によくあるMMTの誤解について考えてみたいと思います.
MMTのGood(4)は筋力がMMTのPoor(2)の2倍
5 | Normal | 強い抵抗を加えても、運動域全体にわたって動かせる |
4 | Good | 抵抗を加えても、運動域全体にわたって動かせる |
3 | Fair | 抵抗を加えなければ重力に抗して、運動域全体にわたって動かせる |
2 | Poor | 重力を除去すれば、運動域全体にわたって動かせる |
1 | Trace | 筋の収縮がわずかに認められるだけで、関節運動は起こらない |
0 | Zero | 筋の収縮は認められない |
時折,誤った解釈をされている方がいらっしゃいます.
MMTで膝伸展筋力がPoor(2)の方がいらっしゃったとします.
4週間にわたり集中的に筋力トレーニングを行った結果,膝伸展筋力がGood(4)まで改善したとします.
2であった筋力が4になったので筋力が2倍になったと考えてしまいがちですが,これは全くの誤りですよね.
MMTの評価結果の数値表記ってあくまで段階をあらわしているにすぎません.
MMTの評価結果が元来,NormalとかGoodとか英語表記されるのってこういった誤りを防ぐためだったりするわけですが,最近は数値表記している理学療法士・作業療法士の方が多い印象ですので,誤解が生まれることもしばしばです.
MMTというのは順序尺度評価ですのでそもそも評価基準間の筋力の差が同等ではありません.
MMTのNormalとGoodの間の筋力ってものすごい幅がありますし,MMTのZeroからTraceの間の筋力ってすごく小さいですよね.
このようにそもそもMMTは順序尺度ですので単純に2倍になったなんて言うことは言えない訳ですね。
またもう1つ多いのが数名の膝伸展筋力(MMT)の結果を平均している例です.
もちろんこれも誤りです.
順序尺度ですからそもそも足し算することに意味がないわけです.
MMTで筋力を測定している
MMTが筋力を測定する検査だと思っている方も多いと思いますし,私も冒頭では筋力評価の1つとして記述をしております.
平たく言えば筋力の評価なわけですが,厳密には単関節での関節トルクを評価しているといった視点も重要です.
MMTにしてもハンドヘルドダイナモメーターで評価する等尺性筋力にしても,単関節運動時の関節トルクを筋力として表しているに過ぎないわけです.
学生や若い理学療法士・作業療法士が,MMTが4以上あるから筋力には問題ないですなんて発言をしていますが,MMTの結果と動作レベルに乖離があるのはこのためですね.
あくまで単関節の一定の角度での筋力を見ているに過ぎないわけです.
ただMMTというのは理解しやすい指標ではありますし,何より医師と理学療法士・作業療法士の間での共通言語にはなっておりますので,正しく理解しておくことは重要です.
ハンドヘルドメーターで筋力を測定して,Aさんの膝伸展筋力が●●Nm/kgでしたなんて言っても,おそらく医師には伝わらないと思います.
MMTの4+,4-って…
MMTの評点をする際によくあるのが「4+」とか「4-」といった表記です.
MMTでは4レベルなんだけど,5に近い4といった意味合いで4+と表現したり,4より少し弱いななんて時には4-と表記するわけです.
ただこれってだれが作ったのかもわからないルールですし,ほとんど意味がありません.
そもそもMMTの4と5というのはそれだけでも主観的な評価でありますので,ここに4-とか4+なんていった概念を入れ込んでしまうとますます評価の客観性が崩れてしまいます.
学校での腓腹筋のように筋群によっては2+や2-といった概念がありますが,これらはきちんと基準がありましたよね.
理学療法士・作業療法士によっては発揮された関節トルクが以前より向上したことを表したいがために,4+といった表現を用いる方もいらっしゃるようですが,そういった場合には4+と表記するよりも4(↑)などとして前回よりはトルクが増えていると表現した方が良いでしょう.
また別法もMMTの書籍に記載されている者はともかく,既に何を測定しているのわからないようなものもあります.
例えば股関節外転筋力の3~5というのは側臥位で測定を行いますが,側臥位姿勢が取れない場合に背臥位で抵抗を加えて,抗重力位で挙上できそうかどうかを検者が評価するといった方法があります.
これってあまりにも客観性に欠けており,既に何を測定しているのかもわからないわけです.
こういった場合には,MMT2以上(側臥位姿勢が取れないため背臥位での検査とした)といったように表記することがのぞましいでしょう.
今回は理学療法士・作業療法士によくあるMMTの誤解について考えてみました.
先日,MMTも第10版が出版され,コアテストとしてのプローンプランクテストが話題になりました.
プローンプランク姿勢で120秒保持で段階5,90秒未満で段階4,ポジションを取れるが保持できないと段階3といったテストです.
MMTも少しずつ変わってきておりますので,われわれ理学療法士・作業療法士も知識をアップデートする必要がありそうですね.
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