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グラスの形状を変えるとお酒を飲む速さが変わる?
理学療法士・作業療法士の皆様もお酒を飲む機会って多いと思います.
お酒ってここまででとどめておこうといった気持ちと裏腹にどんどん進んじゃいますよね.
今回はお酒の量を抑えたいといった理学療法士・作業療法士の方向けに,グラスの形状を変えるとお酒を飲む速さが変わり,お酒を飲む量を抑えられる可能性があるといった報告をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
PLoS One. 2012;7(8):e43007. doi: 10.1371/journal.pone.0043007. Epub 2012 Aug 17.
Glass shape influences consumption rate for alcoholic beverages.
Attwood AS1, Scott-Samuel NE, Stothart G, Munafò MR.
今回ご紹介する論文は2012年に掲載された少し古い論文です.
研究の背景
High levels of alcohol consumption and increases in heavy episodic drinking (binge drinking) are a growing public concern, due to their association with increased risk of personal and societal harm. Alcohol consumption has been shown to be sensitive to factors such as price and availability. The aim of this study was to explore the influence of glass shape on the rate of consumption of alcoholic and non-alcoholic beverages.
アルコールの大量消費と大量飲酒は,個人的・社会的な弊害リスクの増加と関連しており,飲酒に対する社会的な懸念が高まっております.
アルコール消費は,価格や入手可能性などの要因に敏感であることが示されております.
この研究では,グラスの形状がアルコール飲料とノンアルコール飲料の消費率に及ぼす影響を明らかにすることとしております.
研究の方法
This was an experimental design with beverage (lager, soft drink), glass (straight, curved) and quantity (6 fl oz, 12 fl oz) as between-subjects factors. Social male and female alcohol consumers (n = 159) attended two experimental sessions, and were randomised to drink either lager or a soft drink from either a curved or straight-sided glass, and complete a computerised task identifying perceived midpoint of the two glasses (order counterbalanced). Ethical approval was granted by the Faculty of Science Research Ethics Committee at the University of Bristol. The primary outcome measures were total drinking time of an alcoholic or non-alcoholic beverage, and perceptual judgement of the half-way point of a straight and curved glass.
この研究では飲料(ラガー・ソフトドリンク),グラス(ストレート・カーブ),(6 fl oz・12 fl oz)を被験者間要因として実験を行っております.
対象者はアルコールを消費する男性・女性159となっております.
対象者は2つの実験に参加し,ラガーまたはソフトドリンクのどちらかをカーブしたグラスまたはストレートサイドのグラスで飲むように無作為に割り付けられております.
倫理的な承認については,ブリストル大学の理学部の研究倫理委員会から承認を得ております.
メインアウトカムはアルコール飲料またはノンアルコール飲料の総飲酒時間と,ストレートと彎曲グラスにおける飲料の中間位置の知覚的判断(どのくらいの位置で飲料が半分無くなったと判断するか)としております.
研究の結果
Participants were 60% slower to consume an alcoholic beverage from a straight glass compared to a curved glass. This effect was only observed for a full glass and not a half-full glass, and was not observed for a non-alcoholic beverage. Participants also misjudged the half-way point of a curved glass to a greater degree than that of a straight glass, and there was a trend towards a positive association between the degree of error and total drinking time.
結果ですが彎曲したグラスに比較して,ストレートグラスからアルコール飲料を摂取するのが60%遅い結果でした.
この効果はフルグラスでのみ観察され,ハーフフルグラスでは観察されず,ノンアルコール飲料では観察されませんでした.
また中間位置の知覚的判断(どのくらいの位置で飲料が半分無くなったと判断するか)は彎曲したグラスにおいてストレートグラスよりも多く見積もる傾向にあり(多く飲料が残っていると誤認してしまう),知覚的判断と総飲酒時間の間に正の相関関係を認めました.
研究の結論
Glass shape appears to influence the rate of drinking of alcoholic beverages. This may represent a modifiable target for public health interventions.
今回の研究結果からグラスの形状がアルコール飲料の飲酒スピードに影響を与えることが示唆されます.
この結果は疾病リスクを減らすために,アルコール摂取量を制限する上で役に立つ結果だと思います.
今回はお酒の量を抑えたいといった理学療法士・作業療法士の方向けに,グラスの形状を変えるとお酒を飲む速さが変わり,お酒を飲む量を抑えられる可能性があるといった報告をご紹介させていただきました.
非常に面白い結果ですね.
やっぱり知覚って重要ですね.
過去にも白米をスプーンで食べるより箸で食べた方が,咀嚼回数や食事時間が延長し血糖応答やGIが低下血糖応答が低下するといった報告もあります.
理学療法や作業療法においてもこういった知覚バイアスを介入の中に取り入れてクライアントに提供できるとよいですね.
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