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理学療法士・作業療法士必見 COVID-19感染拡大下におけるリハビリテーションの必要性に関するシステマティックレビュー
全国各地で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大し,医療機関における院内感染が深刻となっております.
最近は理学療法士を媒介した感染拡大も報告され,われわれ理学療法士・作業療法士もリハビリテーションは不要・不急なのかといった疑問を投げつけられております.
そんな中でCOVID-19感染拡大下におけるリハビリテーションの必要性に関するシステマティックレビューが2020年4月22日に公開されました。
今回は新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大下におけるリハビリテーションの必要性を検討した定性的システマティックレビューをご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Eur J Phys Rehabil Med. 2020 Apr 22. doi: 10.23736/S1973-9087.20.06329-7. [Epub ahead of print]
Systematic rapid “living” review on rehabilitation needs due to covid-19: update to march 31st 2020.
Ceravolo MG1, De Sire A2,3, Andrenelli E1, Negrini F4, Negrini S5,6.
今回ご紹介する論文は2020年4月22日に公開されたばかりの最新論文です.
研究の背景
The outbreak of Covid-19 epidemics has challenged the provision of health care worldwide, highlighting the main flaws of some national health systems with respect to their capacity to cope with the needs of frail subjects. People experiencing disability due to Covid-19 express specific rehabilitation needs that deserve a systematic evidence-based approach.
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は世界中で広がり,医療の提供や虚弱者のニーズに対処する能力に関して,様々な国における医療システムの問題を浮き彫りにしております.
また新型コロナウイルス(COVID-19)感染者においても,体系的なエビデンスに基づいた特定のリハビリテーションニーズが明らかにされております.
研究の目的
To provide the rehabilitation community with updates on the latest scientific literature on rehabilitation needs due to Covid-19. The first rapid “living” review will present the results of a systematic search performed up to March 31st, 2020.
この論文では新型コロナウイルス(COVID-19)によるリハビリテーションの必要性に関する最新の科学的文献の最新情報をリハビリテーション関連職種に提供することとされております.
研究の方法
A systematic search on PubMed, Pedro and Google Scholar was performed using the search terms: “Covid-19”, “Coronavirus”, “severe acute respiratory syndrome coronavirus 2”, “rehabilitation”, “physical therapy modalities”, “exercise”, “occupational therapy”, and “late complications”. Papers published up to March 31st, 2020, in English, were included.
PubMed・Pedr・Google Scholarで検索語を用いてシステマティック検索を行っております.
「Covid-19」,「コロナウイルス」,「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス」,「リハビリテーション」,「理学療法モダリティ」,「運動」,「作業療法」,「合併症」といったキーワードで,2020年3月31日までに発表された論文(英語)を対象としております.
研究の結果
Out of the 2758 articles retrieved, 9 were included in the present review. Four of them are “calls for action”, 3 provide recommendations about rehabilitation interventions in the acute phase, 2 address the needs of people quarantined at home or with restricted mobility due to the lockdown, and 1 provides a Core Outcome Set to be used in clinical trials to test the efficacy of health strategies in managing Covid-19 patients.
検索された2758件の論文のうち,9件を今回のレビューの対象としております.
そのうち4本は「行動の呼びかけ」であり,3本は急性期におけるリハビリテーション介入に関する推奨事項,2本は自宅で隔離されている人やロックダウンにより移動が制限されている人のニーズを取り上げており,1本は新型コロナウイルス(COVID-19)患者の管理における健康戦略の有効性を検証するために臨床試験で使用するための「コアアウトカムセット」を提供している者でありました.
研究の結論
All selected papers were based on previous literature and not on the current Covid-19 pandemic. Main messages included: 1) early rehabilitation should be granted to inpatients with Covid-19; 2) people with restricted mobility due to quarantine or lockdown should receive exercise programs to reduce the risk of frailty, sarcopenia, cognitive decline and depression; 3) telerehabilitation may represent the first option for people at home. Further updates are warranted in order to characterize the emerging disability in Covid-19 survivors and the adverse effects on the health of chronically disabled people.
選ばれた論文はすべて過去の文献に基づいており,現在の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックによるものではありません.
主なメッセージは以下の通りです.
①新型コロナウイルス(COVID-19)の入院患者には早期のリハビリテーションを認めるべきである
②検疫やロックダウンにより移動が制限されている人は,フレイル,サルコペニア,認知機能低下,うつ病のリスクを軽減するために運動療法を受けるべきである
③新型コロナウイルス(COVID-19)感染後の生存者における新たな障害の特徴を明らかにし,慢性障害者の健康への悪影響を明らかにするためには今後さらなる調査が必要である.
この研究を受けて
この研究からわれわれ理学療法士・作業療法士が持つべき視点は,新型コロナウイルス(COVID-19)感染後においては急性期リハビリテーションは実施すべきであるといった点,行動制限に伴うフレイルやサルコペニア,認知機能低下,抑うつを予防するため,高齢者に対し中強度の運動を指導すべきである点,自宅での遠隔リハビリテーションが第一選択肢となるといった点です.
新型コロナウイルス(COVID-19)陽性患者に対する急性期リハビリテーションは現在の院内感染等をみると非常に判断に迷うところですが,少なくともPCR検査が陰性になってから介入を行うことは今後増えていくでしょう.
今回は新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大下におけるリハビリテーションの必要性を検討した定性的システマティックレビューをご紹介させていただきました.
こういった情報をいち早く発信していただけるのは非常にありがたいですね.
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